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「世界中の子どもたちが幸せでありますように」 童話と絵本を創作しています

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マガジン

  • 薔薇と雪原「掌の童話」

    Amazon Kindle版 薔薇と雪原「掌の童話」の作品中の散文「薔薇と雪原」がオリジナルです

  • お父さんとお母さん「掌の童話」

    Amazon Kindle版を書いたのはコロナパンデミックの前でした。今回noteに書いて、当時はまだ面会も自由にできていたんだなと、感慨深く思いました。高齢社会を意識していたのではなく、自分の経験をもとにしたものです

  • レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」

    絵本のオリジナルキャラクター、レモンマンをお話に登場させました。ちょうど学童の登下校道の見守り当番をしていた頃で、不審者情報があり、子どもたちに気を付けてほしいとの思いがありました

  • 世界中の子どもたちが幸せでありますように

    自作の童話です。せまい文壇の隅っこの児童文学のそのまた隅っこにあるような童話を書きました。地方の文学賞の童話部門大賞、佳作、入選作、児童文学同人誌掲載作です

  • 諸行無常

    日々のつぶやきの記録です

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れもんまんのぼうけん 子どもとおとうさんのための絵本

    • お父さんとお母さん「掌の童話」 3

      スロープのあるエントラを通って玄関から建物の中に入ると、明るいフローリングと漆喰を塗ったような壁がまだ新しく、清潔で安全な印象だった。 お父さんが受付であいさつすると、 「どうぞ横の廊下をお通りください」って、受付のお姉さんが教えてくれた。 受付の横の廊下を歩いて行くとガラス張りの扉があって、少し待っていると、中から白いポロシャツとピンクのジャージ姿のおばさんが扉を開けてくれた。 「柴田秋香様の次男さんですね? お兄様から伺っています。遠いところをよく来られましたね。お

      • お父さんとお母さん「掌の童話」 2

        「めぐみちゃん、起きなさい。着きましたよ」 お母さんの声で眠たい目をこすって、自動車の窓から外を見ると、私の知らない景色だった。 自動車から外に出ると、空気が冷たくて眠気が吹き飛んだ。 数台の車が止まっている広い駐車場の続きに白くて大きな建物があって、駐車場の入り口に、病院の名前と「介護保健施設 あおぞら苑」って書いてあるでっかい看板があった。 看板を見上げると、そのままじゃん!、って思ってしまうほど青く澄み切った空が広がっていた。 あおぞら苑は広い田圃の中にぽつん

        • お父さんとお母さん「掌の童話」 1

          このお話を書いたのは、コロナパンデミックの前で、面会が自由にできていた頃です。 私は春休みに、お父さんとお母さんの三人で老人保健施設というところに行ってきた。 前の日にお父さんから「明日ドライブだけど、遊びに行くんじゃたいからね」って、言われた。 当日は朝早く出発。 天気がよく、気持ちのいい日だった。 お父さんが自動車を運転して、お母さんが助手席。 私は後ろの席で、お父さんのスマホを借りて、音楽を聴きながら外の景色を眺めていた。 お母さんが、 「お母様はどうして

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        れもんまんのぼうけん 子どもとおとうさんのための絵本

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        • 薔薇と雪原「掌の童話」
          1本
        • お父さんとお母さん「掌の童話」
          3本
        • レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」
          4本
        • 世界中の子どもたちが幸せでありますように
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        • 諸行無常
          8本
        • 山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト
          4本

        記事

          レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 4

          歓声が聞こえる。 なんて曲か知らないけど、運動会でよく聞く音楽も聞こえる。 そっと目を開けて顔を上げてみた。 みんないる。 みんな体育着で笑顔がはじけてる。 観客もいっぱいだ。 運動場には白線に引いてあるし、万国旗がはためいている。 間違いなく、きょうの運動会だ。 ワープして戻って来たんだ。 あいつ、レモンマン、嘘みたいだけど本当だったんだ。 一瞬、 ―あ・や・し・い―、って思ったけど、僕も単純だ、 ―ヨッシャー!―、ってなって、思わず飛び上がろうとした

          レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 4

          レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 3

          「そうなんだよ。みんな驚く。今の速田君みたいな顔するよ」 「・・・・・・」 「でも心配はご無用。私はレモンマンというものです。正義のためにはたらいているのです」 絶望的だった。 僕は抵抗する気力もなく、うなだれてしまった。 ―まったく、なんて日だ!― 「速田君、君はしょげているんだよね?」 レモンマンってやつが、あらためて聞いてきた。 ―初めはしょげてただけだけど、今は絶望してるんだ― そう答えたかったけど、まだ声が出ない。 僕は力なく頷いた。 「私は、

          レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 3

          レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 2

          僕がきょうのリレーでバトンを受けたのは六組中、三番目。 先頭から三メートくらい。 絶好の位置だった。 途中の直線コースで一人追い抜いて、カーブも無事駆け抜けた。 ゴールの白いテープが見えたときには先頭のランナーが手の届きそうな位置にいた。 「追い抜ける! そう確信したときだよね、君の体が思いっ切り前になげだされたのは。地面の上をゴロゴロ転がって、正面のテントの手前で止まったのは。君の脳裏には、その瞬間の空の青さがいやに鮮やかに残っているだろう?」 ―こいつ、どこか

          レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 2

          レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 1

          その日僕は、しょげていた。 僕が徒競走で負けるなんてことは絶対にありえない。 四年生全体で、学校全体で一番足が速いんだ。 日本中の小学校と競争しても負けやしないって信じてた。 それでも負けたんだ。 これは陳腐な話なんだろうけれど、今日の運動会のことを考えながらだから足が重い。 トボトボ・・・・・・って、こんなんだろうなって思いながら一人で家に帰っていると、 「ねえ、ちょっと、速田君」 僕を呼ぶ声がした。 ―誰だ?― 僕の家は小高い丘の上の団地にある。 団

          レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 1

          諸行無常 楽観と悲観 悲観は気分 楽観は意志 悲観はおおらかに 楽観は賢明に リスクを取らないことがリスクの時代 次世代が存分に活躍ができる環境であってほしい

          諸行無常 楽観と悲観 悲観は気分 楽観は意志 悲観はおおらかに 楽観は賢明に リスクを取らないことがリスクの時代 次世代が存分に活躍ができる環境であってほしい

          山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 頼光と金太郎

          師と金太郎は見晴らしのよい峠に出た。 陽の光が眩かった。 師は道の先をじっと見つめていたが、遥かに武者行列を確かめるとゆっくりと歩いて行った。 しばらくの後、師と数名の歩兵を従えた騎馬武者が金太郎に近づいてきた。 連銭葦毛の騎馬に跨がった武者は、赤糸縅の鎧兜を着け、黒漆塗り金粉を散らした鞘の太刀を佩き、塗籠藤の弓を持ち、鏑矢を背負っていた。 「源頼光である」 金太郎は初めて威圧感というものを感じた。 「お前が金太郎か。腕自慢を見せよ」 金太郎は辺りを見回し、傍

          山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 頼光と金太郎

          山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 門出と母の祈り

          その年の初夏、師は母と金太郎に出立の話をし、母は静かに頷いた。 「畏まりました。ありがたき幸せでございます」 金太郎は胸躍らせて答えた。 旅立ちの朝、母は金太郎に深々と頭を下げて言った。 「早くお行きなさい。私といればお前も鬼になってしまう」 母の涙を初めて見た。 師と二人で家を出、振り返ったときには母の姿はなかった。 師は、人の心には仏と鬼が住んでおる、人は仏ともなり鬼ともなる、と呟いた。 金太郎を見送った後、母は錦の着物を身に着け、漆黒の髪を櫛梳き、忍ばせ

          山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 門出と母の祈り

          山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 出会い

          その情景に出くわしたのは頭から差していた木漏れ陽が遮られ、あたりが薄暗くなったときのことであった。 熊が子どもを襲っていると見えたのだが、実際は熊と子どもが互いに睨み合っていた。 その子どもの隈取り引き攣ったように大きく見開かれた両の眼は爛々と輝き、眼光は痛いほど尖かった。 顔も身体も肉が弾けんばかりで力に充ち満ちていた。 気力、胆力とも迸っていた。 肌は赤銅色だった。 次の瞬間、爆音が耳を劈き、鋭い閃光が視力を奪い取り、欅の幹が裂けメラメラと音を立てて燃え上がっ

          山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 出会い

          山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 旅の僧

          はじめに 山姥と怪童「掌の童話」より、ダイジェストをお送りします。 金太郎は足柄山で熊に跨り相撲の稽古をし、長じては坂田金時として源頼朝に仕え、大江山の酒呑童子を退治した伝説などで知られています。 坂田金時は岡山県北部の勝央町で没したとされ、毎年十月頃には金太郎に因んだ行事が催されています。 盛りは過ぎたとはいえ、まだ熟れたような暑さが続いていた。 蜩が一日の仕事のおわりを告げるように鳴き始めると酒田の村にほっとするような夕暮れが訪れた。 酒田の荘は南を相模湾、北西を足

          山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 旅の僧

          諸行無常 自分のことは 自分の心に折り合いをつけようとすると、自分以外の何ものかのせいにする 自分のことは自分でしましょう 最初に習ったことのような気がする 大人になるとできなくなるんですよね

          諸行無常 自分のことは 自分の心に折り合いをつけようとすると、自分以外の何ものかのせいにする 自分のことは自分でしましょう 最初に習ったことのような気がする 大人になるとできなくなるんですよね

          諸行無常 我が身のこととなってこそ 新聞を隅々まで読む年齢になった 部活の延長のようなテレビ番組や動画サイトをみるよりNEWS番組がおもしろい しかし、悲劇は我がこととしてやって来る NEWSとして現れるのではない

          諸行無常 我が身のこととなってこそ 新聞を隅々まで読む年齢になった 部活の延長のようなテレビ番組や動画サイトをみるよりNEWS番組がおもしろい しかし、悲劇は我がこととしてやって来る NEWSとして現れるのではない

          薔薇と雪原の足跡「掌の童話」

          のぞみさんは子どものころ、中国たいりくのとうほくぶの、とうじ まんしゅうとよばれていたところの 国境のちかくのまちに すんでおりました。 お父さまが たいりくの 鉄道のしごとに たずさわられていたからです。 お父さま、お母さまとのぞみさんの 家族三人で、たいりくにわたりました。 たいりくにわたってから、その土地の おばあさまに、おてつだいに きてもらうようになりました。 おばあさまは とてもやさしく しんせつなかたでした。 うす茶色のりくちがひろがっている そのまち

          薔薇と雪原の足跡「掌の童話」