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山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト

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Amazon Kindle版 山姥と怪童「掌の童話」のダイジェストです
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山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 頼光と金太郎

山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 頼光と金太郎

師と金太郎は見晴らしのよい峠に出た。

陽の光が眩かった。

師は道の先をじっと見つめていたが、遥かに武者行列を確かめるとゆっくりと歩いて行った。

しばらくの後、師と数名の歩兵を従えた騎馬武者が金太郎に近づいてきた。

連銭葦毛の騎馬に跨がった武者は、赤糸縅の鎧兜を着け、黒漆塗り金粉を散らした鞘の太刀を佩き、塗籠藤の弓を持ち、鏑矢を背負っていた。

「源頼光である」

金太郎は初めて威圧感という

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山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 門出と母の祈り

山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 門出と母の祈り

その年の初夏、師は母と金太郎に出立の話をし、母は静かに頷いた。

「畏まりました。ありがたき幸せでございます」

金太郎は胸躍らせて答えた。

旅立ちの朝、母は金太郎に深々と頭を下げて言った。

「早くお行きなさい。私といればお前も鬼になってしまう」

母の涙を初めて見た。

師と二人で家を出、振り返ったときには母の姿はなかった。

師は、人の心には仏と鬼が住んでおる、人は仏ともなり鬼ともなる、と

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山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 出会い

山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 出会い

その情景に出くわしたのは頭から差していた木漏れ陽が遮られ、あたりが薄暗くなったときのことであった。

熊が子どもを襲っていると見えたのだが、実際は熊と子どもが互いに睨み合っていた。

その子どもの隈取り引き攣ったように大きく見開かれた両の眼は爛々と輝き、眼光は痛いほど尖かった。

顔も身体も肉が弾けんばかりで力に充ち満ちていた。

気力、胆力とも迸っていた。

肌は赤銅色だった。

次の瞬間、爆音

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山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 旅の僧

山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 旅の僧

はじめに
山姥と怪童「掌の童話」より、ダイジェストをお送りします。
金太郎は足柄山で熊に跨り相撲の稽古をし、長じては坂田金時として源頼朝に仕え、大江山の酒呑童子を退治した伝説などで知られています。
坂田金時は岡山県北部の勝央町で没したとされ、毎年十月頃には金太郎に因んだ行事が催されています。

盛りは過ぎたとはいえ、まだ熟れたような暑さが続いていた。

蜩が一日の仕事のおわりを告げるように鳴き始め

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