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山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 出会い

その情景に出くわしたのは頭から差していた木漏れ陽が遮られ、あたりが薄暗くなったときのことであった。

熊が子どもを襲っていると見えたのだが、実際は熊と子どもが互いに睨み合っていた。

その子どもの隈取り引き攣ったように大きく見開かれた両の眼は爛々と輝き、眼光は痛いほど尖かった。

顔も身体も肉が弾けんばかりで力に充ち満ちていた。

気力、胆力とも迸っていた。

肌は赤銅色だった。

次の瞬間、爆音が耳を劈き、鋭い閃光が視力を奪い取り、欅の幹が裂けメラメラと音を立てて燃え上がった。

落雷であったが一瞬のことだったので地から火柱が立ち昇ったのではないかと錯覚した。

相対していた熊は急に背を向け遁走した。

落雷に驚いたのではない。

鬼の形相の赤銅色の子どもが出す妖気に耐えられなくなったからだ。

間もなく激しい夕立になった。

すぐに雨は上がり木の焦げた匂いが鼻を突いた。

子どもはやり場のない力で倒木を持ち上げ谷に投げ捨てた。

それはドウドウと音を立てて灌木を薙ぎ倒しながら転げ落ちた。

一部始終を凝視していた旅の僧は、
・・・・・・求めていたものに相違ない・・・・・・と、その子どもの後を追った。

<続く>


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