よい子が消えた公園
「よい子のみなさん、もう家に変える時間ですよ」
17時のチャイム放送。
遊んでいた小学生が一斉に公園から駆け出して行く。
その撤退の早さと律義さに美しさを覚える。
いつもとは離れたところの場所。気分転換にやってきた。
「うちも帰ろっか」とベンチを立つと、四歳息子が「ジャングルジムがやりたい」と駄々をこねた。ここだけの遊具。ずっと空くのを待っていたらしい。「じゃあ少しだけ」と言って私だけ外周散歩に出た。
静かな住宅街。人の姿は見えない。子供の声が消えると寂しさを感じる。
ふと日が翳ったように感じた。空の向こうに雷雲が見える。私は公園の反対側から中に戻った。
光景に唖然。
誰一人いない。
妻と子までいなくなっていた。
――神隠し。
緊張の文字がよぎる。
がすぐ、
「パパ―!」
公園の外から声。
一瞬では目視できなかったが、畑の向こう、葱坊主の奥に妻と息子の顔が揺れていた。
[今日の十七音]
チャイム後の公園がらん葱坊主
(ちゃいむごのこうえんがらんねぎぼうず)
【季語(春): 葱坊主】