五重塔はなんのためにあるの?【多田修の落語寺・鷺取り】
ある男が、鷺を捕まえて金儲けしようと考えました。明け方、まだ眠っている鷺を次々に捕まえて、逃げないように自分の体にくくりつけます。すると、眠っていた鷺がいっせいに目を覚まし、飛び上がりました。男も一緒に空を飛ばされているので、思わぬ展開にあわてています。
すると、目の前にお寺の五重塔があります。男は塔のてっぺんにしがみつきます。鷺は飛び去っていき、塔に残ったのは1人だけ。今度は、どうやって下に降りたらいいかわかりません。
町では、塔の上に男がいると話題になり、野次馬がやって来ます。そこへ寺の僧侶が4人、大きな布団を持って、ここに飛び降りるよう伝えます。男は布団目がけて飛び降ります。その結果は?
五重塔などの塔が建っているお寺があります。お寺の塔は何のためにあるのでしょうか?
一言で言えば、お釈迦さまのお墓です。およそ2500年前、お釈迦さまが亡くなると荼毘(火葬)に付され、仏舎利(お釈迦さまの遺骨)を納める塔が造られました。その後、仏教が広まると仏舎利は各地に分配され、それを収める塔が建てられました。お寺の塔には仏舎利が収められていますから、お墓のようなものです。もっとも、1人の遺骨ではすべての塔に足りないので、代わりに宝石を収めている場合があります。
落語の中では野次馬が多い中、僧侶は人助けしようとしていました。思いがけないことが起こったとき、その人の普段の心がけが現れるものです。
多田修(ただ・おさむ)
1972年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、龍谷大学大学院博士課程仏教学専攻単位取得。現在、浄土真宗本願寺派真光寺住職、東京仏教学院講師。大学時代に落語研究会に所属。
※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。