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栃木のお寺が大切にする、親鸞聖人のご旧跡【第13回】室の八嶋(栃木県栃木市)

京都の西本願寺で勤められた「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」を記念して、宗祖・親鸞聖人(1173―1263)が関東の地に残された由緒を伝える「ご旧跡」を、令和の時代に昭和の香りを残すおじさん僧侶2人が巡ってみました。今回は室の八嶋(栃木県栃木市)です。「~2人の僧侶が、ぶらぶら歩いて、ゆるゆる楽しむ~ご旧跡 歩いて記た」より。

 ご旧跡紹介

 親鸞聖人の曾孫にあたる、本願寺第3代覚如上人が著した絵巻物『親鸞伝絵』の絵の部分を4幅の掛け軸にした『親鸞聖人御絵伝』の第3幅。親鸞聖人が越後に流罪になったところから、話は一気に関東に移る。

 1214(建保2)年、親鸞聖人はお同行を連れ、筑波山の向こう、常陸国に入った様子が描かれているが、その前に、水面の様子が描かれている地を通っている。これを筑波山の麓の霞ヶ浦とみるか、あるいは古来より和歌に詠み込まれる下野国の景勝地・室の八嶋とみるか、など諸説あるという。

 現在、境内地が室の八嶋として紹介されている大神神社一帯は、古くは湿地帯となっており、水蒸気が立ち上る様子がかまど(室の八嶋)の煙のように見えることから、平安時代以来、東国の歌枕として有名だった。

 大神神社のすぐ近く、安養寺(宇都宮市)飛び地境内となっている場所には親鸞聖人御誕生800年を記念して建てられた聖人像があり、その台座には聖人がこの地に草庵を結び、人々に教えを説くために100日間逗留されたことを伝える「花見岡安養寺縁起」が記されている。

 
現地ルポ

 大神神社は下野国府から北に4㎞弱。思川という川を挟んで国分寺・国分尼寺からも5㎞弱。少し遠いと思われるかも知れませんが、国府周辺と言っていいでしょう。少なくとも親鸞聖人ご在世の当時は人がある程度いたのではないかと考えられます。

 現在、大神神社の境内には室の八嶋とされる池があり、堀状の池に8つの島が浮かび、朱塗りの橋などがかけられ、各地の神社が祀られています。歌に詠まれた平安時代に室の八嶋として知られていたのは大神神社を中心とする、一帯の湿地であったと考えられています。しかし現在残る池をきっかけとして、親鸞聖人ご在世当時の景観が想像できるのではないでしょうか。

旅ある記

星 今回は親鸞聖人が越後国から常陸国に行く途中に逗留したといわれる景勝地・室の八嶋に来てみました。
藤 栃木県小山市出身の妻が紹介してくれたんですけど、特に栃木のお寺さんの間ではすごく大切にされているご旧跡なんですよね。いやあ、来られて良かった。
星 「歌枕」というのは和歌によく詠み込まれる名所のことだそうですが、大江匡房、藤原定家、源実朝などの歌が有名だそうですね。
藤 じゃあ星さん、「室の八嶋」を詠み込んで、ちょっと和歌を作ってみてよ。
星 和歌なんて詠んだことないですよ! でもせっかくですから。コホン。
「君が行く 室の八嶋を 照らすよう千億の星に 頼んでおいた」。
藤 それ、3月までやってた朝ドラに出てきた歌をもじっただけでしょ!
星 え、「本歌取り」っていうんじゃないんですか?
藤 歌人にお叱りを受けるんじゃない?
(藤本真教・星顕雄)

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※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。