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この“ヤバい日本”で、私たちはどう生きたらいい?【仏教で答える悩み相談34】

人の数だけ、悩みは尽きぬもの。皆さまから寄せられた悩みに、お坊さんや仏教関係者たちが答えます。
 
今月のお悩み
Q 最近「日本がヤバい」というニュースばかりで、自分が大人になった頃の日本の未来が不安です。希望のない時代にどうやって生きていけばよいか教えてください。
(10代・男性)

A1 
そもそも希望などない


  確かに「日本がヤバい」ですね。日本に限らず世界中でも戦争や貧困など悲しいニュースばかりです。「世界がヤバい」。

 さて、仏教では煩悩を抱えた私たちが生きる世界を「火宅(火のついた家)」「堪忍土(耐え忍ぶ場)」と説き、そもそも希望に溢れた光の世界とは考えません。仏さまのさとりの世界が「極楽浄土」とお経に説かれているということは、私たちがいるのは反対に「不安と苦しみの世界」なのです。

 だからこそ阿弥陀仏は「あなたを救う」とおっしゃるのです。
 
 ですから質問者さまが無理に希望を持つ必要はありませんし、日本に期待せずとも大丈夫です。どうせ私の思い通りにはならないのですから。「なんて後ろ向きな考え方だ」と叱られるかもしれませんが、こうした姿勢の方が何気ない人の優しさや日々の小さな喜びを噛み締められるものですよ。
(本願寺派布教使・横内教順) 

A2
判断するのは自分

 希望のある未来とはどのような未来でしょうか。快適な生活が続くことでしょうか。今日より良い明日が来ることでしょうか。

 この世のことは、何事も変化していきます。この変化には、良い変化も悪い変化もありますが、私たちは自分の都合で、良い・悪いを区別します。人の体の変化について、子どもなら成長といって喜んだものを、大人になったら老化といって嫌うように。

 希望についても、自分が良いと感じる未来なら希望があるといい、自分が悪いと感じる未来なら希望がないという、そういうものではないでしょうか。つまり、区別しているのは私です。ならば、自分次第で希望がある未来に変えていける余地があるのでは。屁理屈だと思うかもしれませんが、案外、幸せとはそういうものかもしれないですよ。
(築地本願寺職員・相馬顕子)

A3
エールを送ります


 「失われた30年」なんて言われますからねえ。小さい頃からそんな風に聞き続けてきたのですから、希望のない時代と感じてしまうのは無理もありません。なんか、ごめんなさい。

 現実として日本に限らず、長期縮小社会に向かっています。これは、これまで概ね右肩上がりであった(と思っていた)人類が、初めて経験する事態なのだそうです。やばいっすよね。しかし、だからこそ、全く新しい領域や、まだ誰も試したことのない分野が開かれていくことでしょう。前向きな展望ですし、そこに最も近いのがあなたの世代なのだと思います。

 「失われた」とは経済を中心にした視点に過ぎません。あなたが不安に思っていた時代は、学び、得たものが多かった時代でもあったと証明してほしいです。
(常教寺住職・藤本真教)
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※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。