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朝、起きれない。朝が早いお坊さんはどう対処してる?【仏教で答える悩み相談29】

人の数だけ、悩みは尽きぬもの。皆さまから寄せられた悩みに、お坊さんや仏教関係者たちが答えます。 


今月のお悩み
Q 早起きが苦手です。特に寒い季節は、布団から出られず、何かと遅刻しがちです。お坊さんは早起きという印象がありますが、寒い日の早朝も、爽快に起きる秘訣はありますか?
(20代・男性)

A1 起こし合う仲間を見つけるのも手


  朝、布団から出られず遅刻してしまうこともあるとのこと、困りますね。学生の頃、私も朝が苦手でした。私の早起きは、築地本願寺に奉職してからです。当初は朝4時に起き、本堂の掃除、先輩お坊さまのお茶の用意などの下働きをしました。私の場合、同期の同僚がいたため、お互いに起こしあいました。
 
 しかしある日二人とも寝坊し、慌てて手分けして繕おうとしましたが、時すでに遅し。本堂への通用口の扉を開錠すると、扉の前には当時築地本願寺のトップ、ご輪番がお立ちでした。真っ青です。朝は苦手でしたが、失敗しつつも、必要に迫られると人間それなりにできるものです。私の場合は、よい同僚と助け合い、起こし合いました。その同僚とは40年経った今でも交流が続いています。寝坊したこともいい思い出です。

 携帯電話などで起こしあう友達を見つけられてはいかがでしょうか。ちなみに還暦を過ぎると朝5時前には自然に目が覚めます。
(編集委員・酒井淳昭)
 

A2 爽やかな一日を迎えるには


  寒い時に布団から出られない気持ち、よく分かります。そして、二度寝、三度寝してしまう現状です。爽快に起きる秘訣ではないですが、あるお方の歌でこういった歌があります。

 「朝夕のつらきつとめはみ仏の 人になれよの 恵みなりけり」

 明治時代の宮中にお勤めされた税所敦子さんの歌で、その生涯には様々あられるお方でありますが、ここでの詳述は控えさせていただきます。右記の歌については、自分自身の境遇において、どんなつらいことがあっても、それは自分の心がけの足りなさが原因であると思われた歌でありました。

 自分自身の境遇を嘆くのではなく、み仏さまのお慈悲の中に生かされている、そんなことを思わせていただく歌であります。「今日も新たな一日を迎えられた」という心持ちでいると、爽やかな一日を迎えられるかもしれませんね。
(築地本願寺職員・戸見嶋淳昭)

A3 早起き自体が大変な所業


 私も早起きが苦手です。でもそれは仕方がないことなのかもしれません。

 約1400年前に中国で活躍した善導大師という高僧は「煩悩深無底生死海無辺 度苦船未立 云何楽睡眠」とおっしゃっています。簡単に言うと「煩悩による苦しみの世界から抜け出ようとしないでなんでダラダラと寝てるの?」ということです。当時の人たちだって仏法を聞かずに惰眠を貪っていたわけです。

 いつの時代も「できれば早起きなんてしないで、ゆっくり寝たい」が人間の本性なのでしょう。もしかしたらその本性に逆らう方が不自然なのかも。早起きというのは、それだけ大変な所業なのです。

 そもそも寝坊しても遅刻しても死ぬわけではありませんし……というと身も蓋もないのですが、「早起きするぞ」と身構えるよりも「早起きできないのは人間だから仕方がない。早起きできたらラッキー」くらいの心持ちでいた方が私は意外とすんなり起きることができますね。
(編集委員・横内教順)
 

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※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。