写真に関する著作権について整理してみる
どうも、プロレスとか役者さんポートレートを撮っているたかはしです。
趣味の範囲で撮影を楽しんでいた期間3年と少し経って、趣味と言いつつも「個人の楽しみ」の範疇から少々漏れるような撮影を手掛けることも出てきました。
また、Twitter上で「他者の写真を盗用して投稿・商品作成」などの明らかな著作権侵害についても、自分のも周りの方のも事例を見てきました。
そこで、過去に勉強してきたことの振り返りも兼ねて、写真周りの著作権に関して整理をしていきたいと思います。
※本稿で筆者の体験に基づく事例を紹介していますが、相手の方を晒し上げることや被害者アピールをする目的は一切なく、穏便に和解したケースであることをお知り置きください。
①著作権-文化の発展のための法律-
著作権(ちょさくけん、英語: copyright、コピーライト)は、作品を創作した者が有する権利である。また、作品がどう使われるか決めることができる権利である[1]。
-フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 著作権 より引用(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9)
著作権というのは、端的には「作品がどう使われるか決めることができる権利」であると表記されています。
正式には「著作権法」という知的財産法の一種の法律によって定義されています。また国際的には「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」という条約に日本を含む世界各国が加盟し、創作物に関しての権利保障を行っています。
日本における著作権法では、その目的を以下のように定義しています。
(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
-『e-GOV法令検索』 著作権法 より引用(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048)
解釈すれば、「著作者の権利を保護し、創作活動を活性化させることで、文化の発展させるための法律」と読めます。
②著作権の発生要件-作られた時点で守られる-
著作権法で著作者の権利が保護されるのは、「著作物とその著作者」に対してです。「著作物」は、著作権法第2条第1項にて以下の定義がなされています。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
-『e-GOV法令検索』 著作権法 より引用(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048)
この「思想又は感情を創作的に表現したもの」に当てはまらない例として、「歴史的事実やデータ」「題名やごく短い文章」「アイデア」などが挙げられます。
すなわち、ほとんどの例においては「写真は撮影者本人に著作権がある」となります。
また著作権の発生については、著作権法第17条第2項で以下のように定義されています。
2 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
-『e-GOV法令検索』 著作権法 より引用(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048)
つまり、申請や手続きを踏まずに権利を有することができ、仮にSNSなどで世に発信せずとも、データであれフィルムであれ、著作物は作られた時点で著作権によって保護されるという事になります。
③著作権の大きな2つの権利-人格権と財産権-
著作権には大きく2つの権利があります。
・著作者人格権
著作者本人が得る人格的な利益を保護する権利です。
・公表権
公表されていない著作物を、いつどのように公表するのか決められる。また公表しないことを決められる。
・氏名表示権
著作物に著作者名を表示するか否か、するとした時の表示名を決められる。
・同一性保持権
著作物の内容、タイトルを意に反して勝手に改変させないようにできる。
この権利の特徴は、契約などを結んだとしても譲渡されることはないということです。契約書上で「氏名の表示はしない」などの文言がない限り、著作者は著作者人格権に基づいて訂正を求めることができます。
・著作財産権
著作者が得る財産的利益に関しての権利です。多く権利が存在するので、写真に関連する権利をいくつかピックアップします。
・複製権
著作物を印刷、複写、録画などの方法によって再製できる。
・展示権
まだ発行されていない写真の著作物を公に展示できる。
・譲渡権
著作物の原作品または複製物を譲渡できる。
ここで言う譲渡とは、金銭的な授受を伴う・伴わないは関係なく、他人に譲ることを言います。そのため、著作物に値段を付けて販売することが可能、ということです。
この著作財産権は、著作者人格権と異なり権利の譲渡が可能です。そのため、契約時に譲渡する権利の範囲、譲渡に際しての金額について明確にしている必要があります。
④トラブルの例
1.写真の盗用と販売
Twitter上で、「私の写真がブロマイドとしてメルカリに販売されていた」というツイートがありました。
著作者はプロレスの写真を撮影されている方で、一般の方ながらに高いクオリティを誇っています。
その方の元に、「他人が写真を販売している」と連絡が入り、見てみると自身の著作物であることが確認でき、クレジット表記なしの盗用であると判明しました。
ここでの問題点を、専門家ではないですが整理すると、
①著作者人格権のうち、公表権と氏名表示権を侵害している
②著作財産権のうち、権利譲渡無しに複製権と譲渡権を他人が行使している
③被写体であるプロレスラー並びに所属団体が得るべき金銭を不正に受け取っている
であると言えます。
メルカリの規約上、著作権に抵触する物品の販売は禁じられているため、通報によって対処したようです。
2.写真の利用用途
これは私が経験した事例ですが、当人同士で落としどころを付けている解決済み案件です。
ポートレート撮影を行った後、モデルさんにレタッチ済写真を提供しています。その場では「SNSでの利用可」とだけ口頭で説明し、利用範囲について明確にはしていませんでした(趣味の範囲のため)。
この写真のうち、「写真撮影の練習で」という事で他の方に撮って頂いた写真が何枚かあり、同じフォルダの中で混ざって「どの写真を誰が撮ったか」分からなくなってしまいました。その「誰が撮ったか明確でない」写真が、役者さんのプロフィール写真として出演舞台のチラシに無断で使用されていました。
色々自分で整理した問題点は、
①仮に自分が撮影者の写真の場合、複製権を譲渡していないため、利用の差し止めや(場合によっては)利用料の請求ができる。
②仮に自分が撮影者でない写真の場合、何も言う権利はない。
と「誰が撮ったのか」がグレーであることが事を難解にさせました。
その写真を見た時に上記のことを考え、事を荒立てないよう指摘しませんでした。しかし、別件でこの役者さんとお仕事の話が上がり、「以後SNS以外で使用の際は連絡を一本欲しい」と言及し、和解にしました。
私にも利用用途の説明などで非があり、今後の対応改善をする切っ掛けにしました。
⑤トラブルを防ぐために
・著作者の視点
前提ですが、悪意を持って著作権を侵害しにくる人を未然に防ぐ手立てはありません。SNSなら非公開アカウントにするしかありません。
それ以外の方のうち、著作権に明るくない方は多くいます。すべての行為に対して、「○○法第△条から~」のように指摘したり、事前に契約を締結することは現実的ではないです。
まずは著作者自身が著作権法について学ぶこと、そして場面ごとにどのような対処が相応しいのか考えることが重要かと思います。
もしくは割り切って「○○へ利用する場合は△△円お支払いください」と言い切ってしまうことも手かもしれません。
・閲覧者、利用者の視点
普段コンテンツについて深く考えることが少ない方が多いかと思います。
しかしSNS全盛の時代において、著作権が絡むコンテンツに触れない日など無いと断言できるでしょう。
そんな時代におけるキーワードは
「自分が作ってないなら、使い方に気を付けろ」
かなと思います。
どこかで拾った画像を使って投稿する、グッズ化して楽しむなど、著作権的にグレーな行為をどこかしらで行っていても不自然ではないでしょう。
著作権法に違反するか否かは、親告罪である都合上「著作者の匙加減」で決まってしまうものです。
穏便に済む場合なら良いですが、相手や状況によっては損害賠償請求や刑事告訴に発展する恐れもあります。
何がセーフで何がアウトなのか、仮にセーフだとしても控えたほうがいい行いなのか、相手に一報入れたほうがいいのか、など憂慮するに越したことはないでしょう。
おわりに
自分語りを唐突にさせてもらうと、大学時代に「技術者倫理」などの講義で聞いたり、情報技術者試験で勉強したりした著作権の内容を、趣味の写真で使うとは思ってもいませんでした。。。
頭の片隅にでも入っていると知識ってのは役立つものと改めて思います。
本稿では法律に基づいて厳しい対応が可能なように書きましたが、実際には双方の関係性だったり態度だったりを見て穏便に済ますケースも少なくないでしょう。
私自身もそのように対処していましたが、ちょっとトラブルが増えてきていて考えるところが出てきています。事前に利用料設定しちゃおうかなと。
一番は、多くの方がコンテンツの創作だったり閲覧だったりを楽しめる環境があることです。皆様が平和な創作ライフの日々を送れることを祈って締めたいと思います。