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デジタル化したって写真は高い

そんなことを言うと、フイルムカメラ一本で勝負しているカメラマンから鼻で笑われてしまいそうだが、とはいえ高いものは高い。

今日も領収書とクレジットカードの控えを手に、恍惚としたため息をつきながらカメラ店を後にした。高い買い物をしたが、引き換えに理想的な形で手に取った写真は宝物である。


写真をプリントする際 色味の出力になかなか納得がいかず、1枚の写真をプリントアウトするまでにかかる総費用は3,000円前後。10枚も出力すれば結果的にまぁまぁな金額になる。

それでもファインダーを覗いている間の私の気持ちと最後まで心中したくて、自分が納得いくまで刷り直す。最善を尽くしたつもりで現像したのに白飛びや黒つぶれが発生し、微調整チャリーン。色を確定して大判サイズで出力すると今度はノイズが目立って再調整チャリーン。

かかるのはお金だけではない。撮影している間、私のとなりのベビーカーで退屈そうにする娘。さらにカメラ店で仕上がったプリントを見て再プリントかけるかどうか迷っている私を見上げて退屈そうにする娘。カメラマンの周りには同族の友人しかいなくなるゆえんはこういったところにあると思う。


好きで選んだベストショットのはずなのに、繰り返し見ていくうちに「大した写真じゃないのでは」という葛藤も生まれる。あの感じをなんと言おう、好きなアーティストの楽曲を飽きるほど聞いたあとの感じに似ているかもしれない。


すっかり顔なじみのカメラ店の店員は、毎度毎度「分かる分かる」という感じで私の会計を見ている。カメラ機材といいプリント代といい、写真のことになると財布の紐は基本的にゆるい。レジで会計したあとに「額、新しいのが入荷したんですけど見ていかれませんか」と勧めてくる店員。「フォトコンに出すつもりなんです」と笑うと、「なるほど、それではクリスタル加工(+400円オプション)とかどうでしょう?」とカタログを勧めてくる。

結局、ひとつ返事でクリスタル加工を加える私。チャリーン。いいだろう、わが子のように大切な作品だからこそ、精一杯のおしゃれをさせて送り出したい。


2億円くらいあったら気が済むまでプリントするだろうか。……いや、無くてもプリントできるように、腕を磨いていきたい。

正解のない世界だからこそ、答えは私が持っている。

2020/10/06 こさい たろ


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