心もとろかす甘い秋
ウサギは秋風に髪をなびかせながら、古い街並みをじっと見つめていた。「朝食を抜いてきたの。さあ、思いっきり食べるわよ!」彼女はカメの手をぎゅっと握り、「時の鐘」を背にして、楽しげに駆け出していった。
時の流れを感じさせる店が並ぶ中、「芋けんぴ」の甘い香りがふわりと漂い、ウサギは思わず足を止めた。「秋といえば、やっぱりお芋よね」ウサギは食べ歩き用の包みを手に取って、お芋をひとつ口に運んだ。
サクサクとした食感と濃厚な甘さが口いっぱいに広がり、ウサギは思わず目を細めた。
「この絶妙な甘さ…たまらないわ」ふわりと微笑むと、次のお芋へと手を伸ばした。
「見て、ミッフィーのパン屋さんがあるわ!」ウサギは芋けんぴをかじりながら歩いていた足をぴたりと止めると、大きなミッフィーに目を輝かせ、思わず駆け寄っていった。
「どれも可愛くて、目移りしちゃうわ」ウサギは迷いに迷った末、パンを三つトレイにそっとのせた。「お口だけじゃなくて、心の中まで甘くなりそう…」夢見心地で微笑む彼女の頬は、ほんのりと紅く染まっていた。
「いやぁ、たくさん食べたわね」ウサギはお腹をさすりながら店を出ると、ふと立ちのぼるおまんじゅうの目を留めた。
「いも恋? なんて素敵な名前なの!」彼女の目がまた輝きを帯びた。
「お芋もあんこも、ほっとするような優しい甘さだったね。もう、さすがにお腹いっぱいだよ」カメが満足げに言うと、ウサギも小さくうなずいた。「そうね、もうこれ以上は無理…かな。あ、でも、待って…」
ウサギはまた何かを見つけて、突然駆け出した。カメが息を切らして追いつくと、彼女は目を輝かせながら、にっこりと微笑んだ。
「ねえ、縁結び芋ソフトクリームだって。二人でひとつを、両側から食べてみない?」ウサギは期待を込めた瞳で、少し恥ずかしそうにカメを見つめた。
カメはそっと一歩、後ずさりした。
「ねえ、逃げないでよ」ウサギは大事そうにソフトクリームを抱えながら、そっとカメの袖を掴んだ。その顔には、まるで世界で一番幸せな人のような、満ち足りた笑みが浮かんでいた。
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