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静的ストレッチングは、直後の運動に悪影響を与えるか?

📖 文献情報 と 抄録和訳

ストレッチによる筋力欠損の再検討:急性期の効果に関するマルチレベルメタ解析によるシステマティックレビュー:伸張誘発性筋力欠損の再検討

📕Warneke, Konstantin, and Lars Hubertus Lohmann. "Revisiting the stretch-induced force deficit: A systematic review with multilevel meta-analysis of acute effects: Revisiting the stretch-induced force deficit." Journal of Sport and Health Science (2024). https://doi.org/10.1016/j.jshs.2024.05.002
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[背景・目的] 競技パフォーマンス前の静的ストレッチの回避を推奨する場合、著者や実践者は一般的に利用可能なシステマティックレビューを参照する。しかし、以前のレビューにおける効果量(ES)は、対照条件および/または前後試験デザインを欠く研究から抽出されたものが大部分であった。また、現在利用可能なレビューでは、複数の研究結果を考慮せずに計算が行われており、ES:-0.03~0.10と、一般的には些細なものに分類されるであろう。

[方法] 2013年以降、新しいメタ解析ソフトウェアや対照研究論文が登場したため、我々は利用可能な文献を再検討し、最新のエビデンスを提供するために、対照前-後試験のロバスト分散推定を用いたマルチレベルメタ解析を実施した。さらに、以前の研究では、筋電図活動の低下は、疲労を伴うトレーニングルーチンに起因するものであり、その後のパフォーマンス低下の原因であると説明されていた。本研究の第2部では、静的ストレッチングが他の運動ルーチンと比較して高いパフォーマンス低下を引き起こすかどうかを検討するために、全身疲労を誘発するのに十分なストレッチングと代替介入を比較した。

[結果] 2012人の参加者から得られた400以上のESを含む83の研究から、我々の結果は、受動的コントロールと比較した場合、静的ストレッチが誘発する最大筋力低下に関する有意で小さなES(ES = -0.21、p = 0.003)を示し、1回のストレッチの持続時間が60秒以上の場合、高い大きさのES(ES = -0.84、p = 0.004)を示した。能動的コントロールと比較した場合、最大筋力低下はES:-0.17~-0.28、p<0.001~0.040の間で、ほとんど異質性はないか小さい。しかし、ストレッチングは、(受動的対照および能動的対照の両方と比較した場合)一般的に運動能力にマイナスの影響を与えなかった;実際、成人では、その後のジャンプのパフォーマンスにプラスの効果(ES = 0.15、p = 0.006)が認められた。

[結論] 単独筋の筋力テスト(例えば、レッグエクステンションやカーフレイズ)に関しては、我々の結果はこれまでの知見を裏付けるものであった。とはいえ、運動能力については、まったく(あるいはプラスの)効果が認められなかったことから、今回の結果は、例えばジャンプやスプリントの前のウォームアップルーティンからスタティックストレッチを除外するようにというこれまでの推奨を支持するものではない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

この『善くて義しい者』たちを見るがいい!
かれらがいちばん憎む者はだれか?
価値を録したかれらの石の板を砕く者、破壊者、犯罪者だ、
ーしかし、かかる者こそ創造者なのだ
(中略)
かれらは新たしい価値を新しい石の板に記す者である

【ニーチェ】ツァラトゥストラはこういった

一度、石板の上に『これが正しい』と書かれたことは、容易には変わりにくい。
例えば、『静的ストレッチングはその直後の運動パフォーマンスに悪影響を与えるため、ウォーミングアップには適さない』という文章が、少し前に刻み込まれた。
この考え方は、スポーツ現場に広く浸透したように思われ、ほとんど静的ストレッチングというものはクールダウンのみに押しやられつつあるのではないだろうか。

だけれども、稲が日々身長を伸ばすように、世界は止まってはないのだ。
静的ストレッチングに関する1つ1つの実験的研究の数も増え、そして解析方法も進歩した。
その中で、改めて『静的ストレッチングは, 直後の運動に悪影響を与えるか?』の是非を問おうではないか、と今回の抄読研究。
その結果として、確かに単独筋の最大筋力には悪影響を与えうる、だが、運動パフォーマンスにはむしろ、プラスであるとの結論に至った。

科学とは、自分達で出した1つの結論を、さらに乗り越えていく過程である。
永遠の脱皮、とも言えるかもしれない。
その過程は、例えば出産がそうであるように、苦痛を伴う場合もあるだろう。
だが、まあそれが生きるということの一側面なのだろうし、その意味で僕個人としては生きたいと、強く願っている。

生はわたしに、みずからつぎのような秘密を語ってくれた
「ごらんなさい」、生は言った
つねに自分で自分を克服しなければならないもの、わたしはそれなのだ
なるほど、あなたがたはそうしたものを、生産への意志、あるいは目的への衝動、より高いもの、より遠いもの、より複雑なものへの衝動などと呼んでいる
しかしそうしたものはみなひとつのことであり、ひとつの秘密であるにすぎない

【ニーチェ】ツァラトゥストラはこういった

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