受動的抵抗度。投球者の肩内旋/外旋について
📖 文献情報 と 抄録和訳
投球肩の受動的柔軟性:外旋および内旋のトルク角解析
📕Wight, Jeff T., et al. "Pitching shoulder passive flexibility: torque-angle analysis for external rotation and internal rotation." Sports Biomechanics (2022): 1-13. https://doi.org/10.1080/14763141.2019.1705885
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✅ 前提知識:関節可動域に対する抵抗度(stiffness)のイメージ
[背景・目的] 本研究では、投球肩の外旋(external rotation, ER)および内旋(internal rotation, IR)受動柔軟性を分析するためのカスタムデバイスを開発した。抵抗開始角(resistance onset angle, ROA=肩が抵抗を示し始める角度)、回旋スティフネス、可動域(range of motion, ROM)終了時のトルクという3つの新規指標を分析した。目的は、投球肩と非投球肩の間に有意な差があるかどうかを調べるために、両側性の分析を行うことであった。
[方法] 参加者は、上位レベルの投手30名(1部リーグ13名、マイナーリーグ17名)である。試験中、投手は治療台に仰臥位で横たわり、肩は90°外転、肘は90°屈曲した状態で腕を回転輪に固定された。
[結果] 従属t検定により、3つの変数すべてにおいて有意(p<0.01)かつ比較的極端な両側性の差異が認められた。投球肩は、ER-ROAの増加(9°)、IR-ROAの減少(5.3°)、ERスティフネスの増加(17%)、IRスティフネスの増加(34%)、ERトルクの増加(21%)、IRトルクの増加(30%)であった。トルク-角度変数が最終ROMの良い予測因子であるかどうかを決定するために、二次相関分析が完了した。スティフネス相関はER(r = 0.35, p = 0.048)とIR(r = 0.42, p = 0.017)では弱かったが、ROA相関はER(r = 0.85, p < 0.001) とIR(r = 0.86, p < 0.001)で強力であった。
[結論] 臨床医やスポーツパフォーマンスのコーチは、受動トルク角分析を使って投球肩の柔軟性を徹底的に評価できることを認識しておく必要がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
学校の授業、臨床実習、ずっと思っていたことがある。
『エンドフィール』という概念の曖昧さだ。
どういうことか。
バイザー(先生):「エンドフィールがこんな感じでしょ、こんな感じが“筋性の制限”なんだ」
僕:「なるほど、こんな感じですね」
こんな感じとは、何だろう?
そして、その先生のアセスメントは、真にそうなのだろうか。
そういう疑念をエンドフィール界隈の知識体系に感じてきた。
だから、そのエンドフィールとROM制限因子との関連性をクリアにする情報には、とても敏感に反応してきたと思う。
今回の論文は、その非常に重要な一歩を踏み出していると思われた。
この研究の中で重要な点は、「抵抗度」を客観的な指標として、算出可能な数値として明らかにしている点だ。
先程の会話における「こんな感じ」を「30度で2Nm増大する抵抗度」とか表現できるわけだ。
そうすると、次に何が知りたくなるか。
関節可動域制限となりうる各組織が有する抵抗度特性だ。
・骨性の制限は抵抗度〇〇で非常に硬い。
・腱は抵抗度〇〇で結構硬い。
・筋実質は抵抗度〇〇で柔らかい。
・防御性の筋収縮は抵抗度の傾斜が直線的にならない。
以上は全部適当だが、しっかりと研究によって明らかにされたなら、臨床における思考プロセスに革命が起きる可能性がある。
そうすれば、まず個人として妥当な関節可動域制限のアセスメントが可能になる。
さらに、圧倒的に教えやすくなる。
これまで感覚的に教えていたエンドフィール概念を、もう少し鋭敏にはっきりしたものとして共有することが可能になる。
重要なリサーチクエッションに出会ってしまった。
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