ピッチング直後に肩で起こっていること
📖 文献情報 と 抄録和訳
投球が関節可動域、筋力、筋構造に及ぼす急性影響
Mirabito, Nicholas S., Matthew Topley, and Stephen J. Thomas. "Acute Effect of Pitching on Range of Motion, Strength, and Muscle Architecture." The American Journal of Sports Medicine 50.5 (2022): 1382-1388. https://doi.org/10.1177/03635465221083325
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 野球の投球後、可動域や筋力の臨床指標に急性適応が見られるが、これらの変化をもたらす生理学的メカニズムに関する研究は不十分である。棘下筋と小円筋の筋構造の適応が、これらの臨床的指標の変化をもたらす構造的な変化として機能する可能性がある。目的:野球の模擬試合後の野球投手における棘下筋と小円筋の筋力、筋構造の急性変化を縦断的に評価すること。さらに、筋構築と可動域および筋力の臨床的測定値の変化との関係を検討した。
[方法] 研究デザイン:対照的な実験室研究。方法10名の健康な大学野球部員投手(平均±SD、年齢20.1±1.10歳)を対象に、模擬野球試合での投球前、投球直後、その後5日間毎日検査した。可動域と筋力の評価には、それぞれデジタル傾斜計と携帯型ダイナモメータを使用した。超音波診断装置を用いて、安静時および最大収縮時の棘下筋と小円筋の羽状角(ペンネーション角)と筋厚を評価した。
[結果] 内旋可動域は投球直後に有意に減少し、投球4日後までベースラインに戻らなかった(P≦0.05)。外旋筋力も直ちに低下し,投球後3日目には元に戻った(P≦0.05).さらに,棘下筋の表在部と深在部の安静時ペネーション角は投球直後に増加し,表在部は4日目にベースラインに,深在部は5日目に戻った(P≤ .05).さらに、棘下筋のペネーション角の変化と小円筋の厚さは、投球後の内旋可動域の低下を予測した(R2 = 0.419; P≤ 0.05)。
[結論] 本研究では,投球後の内旋可動域および外旋筋力の低下が,棘下筋の筋構造に変化をもたらしていることを明らかにした.安静時の棘下筋のペネーション角の増大は、筋の張力の増加を示しており、これが臨床的な内旋可動域の減少の基礎的なメカニズムであることが分かった。このことは、内旋可動域と棘下筋の表層線維と深層線維のペンネーション角の逆相関によって示された。
[臨床意義] 臨床医は、肩の可動域と筋力の慢性的な低下を防ぐために、投球後の回復時間を考慮する必要がある。投球後の可動域減少の根本的なメカニズムを明らかにすることで、臨床医は野球の投手における回復戦略を最適化することができる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
そろそろ、高校野球が熱くなってくる季節。
近年、各試合の直後に投手(パートナーストレッチング)や野手(ストレッチング指導)に対するメディカルサポートが行われることが増えている。
だが、メディカルサポートの効果や内容の妥当性についての調査は、あまり知らない。
これは、なぜだろう?
おそらく、各チームにそれ以上の時間的、労力的負担をかけることが難しいことに起因するのではないだろうか。
その意味で、今回のようにラボで効果を検証することは、意義深いことだと思う。
今回の調査で明らかになったことは、肩内旋可動域(外旋筋の筋緊張増大による)減少、外旋筋力低下し、それは3-5日元には戻らないということ。
それに対して、メディカルサポートは何を提供できるだろう?
それを明らかにするためには、以下のような検証が必要だ。
・改善速度を早めるかの即時効果検証
・ストレッチング、マッサージ、アイシングなど介入方法による効果の違い
・長期的な肩内旋可動域制限に及ぼす効果、障害予防の効果
これらの検証は、今回の測定方法を用いることで測れるかもしれない。
選手や保護者、監督に対して、自信をもって1つの介入をしたいものだ❗️
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