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運動による高血圧改善。頭部振動が間質液流動を促進


📖 文献情報 と 抄録和訳

頭部上下振動による間質流体せん断応力は高血圧ラットおよびヒトの血圧を低下させる

📕Murase, Shuhei, et al. "Interstitial-fluid shear stresses induced by vertically oscillating head motion lower blood pressure in hypertensive rats and humans." Nature Biomedical Engineering (2023): 1-24. https://doi.org/10.1038/s41551-023-01061-x
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🔑 Key points
🔹適度な運動が高血圧の改善をもたらすメカニズムを、ラットを用いた実験とヒト成人を対象とした臨床試験により発見したと、国立障害者リハビリテーションセンターや東京大学などの研究グループが発表した。
🔹軽いジョギング程度の運動をすると、足の着地時に適度な物理的衝撃が頭部の脳に伝わり、脳内の組織液(間質液)が動く。これにより、脳内の血圧調節中枢の細胞に力学的な刺激が加わり、血圧を上げるタンパク質(アンジオテンシン受容体)の発現量が低下し、血圧低下が生じるという。
🔹さらに、この頭部への物理的衝撃を高血圧患者(ヒト)に適用すると、高血圧が改善することを、世界ではじめて明らかにした。
🔹「ウォーキングや軽いジョギングなど、頭部に適度な衝撃が加わる運動が、健康維持・増進効果で重要である可能性が示されました」と、研究者は述べている。

🌍 参考サイト >>> site.

■ 軽運動が高血圧を改善する仕組み
・ラットで高血圧改善効果が示されている中速度(分速 20 メートル)走行では、前肢の着地時に頭部に約 1 G の衝撃(加速度)が生じる。
・この頭部への衝撃を再現するラットの受動的頭部上下動 は、脳内の間質液を流動させ、血圧調節中枢が存在する脳領域のアストロサイトにおけるアンジオ テンシン受容体の発現を抑制し、高血圧を改善した。
・ヒトにおける適度な運動である軽いジョギン グでも、足が着地する際に頭部に約 1 G の衝撃が生じるが、頭部への 1 G の衝撃をヒトで再現する座面上下動椅子は高血圧を改善した。

■ 運動時の頭部への衝撃を再現する座面上下動椅子
・ヒトの軽いジョギングでも足の着地時に頭部に生じる衝撃(加速度)は 1 G であり、これを再現するために、座面が上下動する椅子を作製した。

■ 座面上下動椅子搭乗による高血圧改善・交感神経活性抑制効果
・高血圧者を対象に、座面上下動椅子搭乗(左)の効果検証を目的とした臨床試験を実施した。
・1 日30 分、1 週間に 3 日、計 1 ヶ月間(4.5 週間)の座面上下動椅子搭乗は、高血圧改善(右上)・交感 神経活性抑制(右下)効果を有することがわかった。
・血圧変動 LF(low frequency = 低周波数)パワ ーは交感神経活動度の指標で、心拍間隔変動 LF/HF(high frequency = 高周波数)パワー比は交感神 経と副交感神経の活動度のバランスの指標であり、これらの低下はいずれも交感神経活性の低下を 示唆する。
・右のグラフ中、線分の色は、各被験者に対応する(例えば、各グラフの青い線分は同一 被験者からのデータを示す)。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

人間は機械かもしれない
緒方洪庵

小さな歯車の1つ1つの動きが大きな機械を動かすように、
確かなミクロな仕組みがあって、
目に見えるマクロな結果が創出されている。
その1つの例として、『骨合成の仕組み』がある。
骨合成は、骨の内部の細胞外液流の変化に基づいて促される。
つまり、荷重によって骨内部の液体がポンプ用に流動し、骨合成が促される。

✅ 図. 骨への力学的負荷により生ずる骨細胞に対する液体剪断応力(FSS fluid shear stress)骨に対する力学的負荷は,主に骨細胞により骨細管内(もしくは骨小孔) の細胞外液流の変化に基づく fluidshear stress; FSSとして感知される.(📕井上, 2016 >>> site.)

このようなミクロな仕組みが分かることで、
「部分荷重練習は静的に荷重をかけ続けるよりも、リズミカルに断続的に荷重が加わった方が骨合成促進には効果的かもしれない」
というような感じで、臨床応用がより現象的、(暗記的ではなく)理解的になる。

今回の抄読研究は、運動が高血圧を改善するミクロな仕組みの一端を明らかにしてくれた。
この仕組みによれば、「全身振動装置(WBV, whole-body vibration)でも血圧改善が得られるかも」「電車やバス、車に揺られることもその効果を引き出すかも」など、たくさんの仮説が立つ。
やはり、基礎的な、ミクロな仕組みを現象的に知ることは、有用だ。

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