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モバイルヘルス+医療者主導介入の効果


📖 文献情報 と 抄録和訳

慢性疾患における健康関連の成果を改善するためのモバイルヘルスと医療従事者主導の介入の併用の効果:系統的レビューとメタ分析

📕Kanai M, Miki T, Sakoda T, Hagiwara Y. The Effect of Combining mHealth and Health Professional–Led Intervention for Improving Health-Related Outcomes in Chronic Diseases: Systematic Review and Meta-Analysis. Interact J Med Res 2025;14:e55835. https://doi.org/10.2196/55835
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 糖尿病や心血管疾患などの慢性疾患は、世界的な健康問題であり、世界中で数百万人の患者に影響を与えています。従来の医療では、慢性疾患の管理が不十分であることがよくあります。そのため、モバイルヘルス(mHealth)技術などの革新的なソリューションの模索が進められています。モバイルおよびワイヤレス技術を活用するmHealthは、継続的でアクセスしやすく、個別化されたケアを提供することで、医療提供のあり方を変える可能性を秘めています。しかし、特に専門家による従来の医療介入と統合した場合のmHealthの有効性については、包括的な調査が必要である。mHealthと専門家主導の介入の複合的な影響を理解することは、患者の治療結果と服薬アドヒアランスを改善するmHealthの潜在能力を最大限に引き出すために不可欠である。目的:本研究は、慢性疾患の健康関連の治療結果を改善するためのmHealthと医療専門家主導の介入を組み合わせた場合の有効性を調査することを目的としている

[方法] この系統的レビューとメタ分析では、ランダム化比較試験に焦点を当てた。2023年7月17日までのWeb of Science、CENTRAL、MEDLINE、CINAHLを検索した。この研究では、18歳以上の患者で、少なくとも1つの慢性疾患を患っている患者を対象とした。介入は、mHealthと医療専門家の利用の組み合わせであった。比較対象群は、一般的なケアとフォローアップを受ける参加者、または医療従事者の関与なしに mHealth デバイスを使用する参加者で構成された。このレビューで測定された結果には、ヘモグロビン A1c(HbA1c)、生活の質(QoL)、身体活動が含まれた。

✅ モバイルヘルスと医療従事者主導の介入の定義と具体例
この研究における「モバイルヘルスと医療従事者主導の介入」の定義と具体例は以下の通り:
<定義>
1. モバイルヘルス(mHealth)
・モバイル端末(スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイスなど)やワイヤレス技術を活用して健康目標を支援する介入。
・専用アプリを使用した健康管理、データ収集やモニタリング、リマインダー機能、行動変更支援など。
2. 医療従事者主導の介入
・医療従事者(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、栄養士など)が積極的に関与して行う健康支援。
・対面での指導、電話やテキストメッセージでの支援、データレビュー、患者のモニタリング結果に基づくフィードバックなど。
<具体例>
1. 糖尿病管理

- スマートフォンアプリを通じて血糖値データを収集。アプリはリマインダー機能を備え、患者に自己管理のタスク(薬の服用や食事の記録など)を促す。看護師や医師がこれらのデータをレビューし、フィードバックを提供。
2. 心疾患リハビリテーション
・ウェアラブルデバイスで心拍数や身体活動量を記録。医師がデータを確認し、患者に電話やテキストメッセージで個別のアドバイスを送る。
3. 生活習慣改善プログラム
・健康アプリが患者に食事や運動の目標を提示。栄養士や理学療法士が週ごとに進捗を評価し、オンラインセッションを通じて行動指導を行う。

[結果] この研究には 26 の研究論文が含まれ、7360 人が対象となった。HbA1c、QoL、身体活動についてメタ分析が実施された。
■ モバイルヘルス+医療者主導の介入効果①:HbA1c

・短期間での改善は有意であった(標準化平均差[SMD] -0.43;95% CI -0.64~-0.21;I2=69%)
・中期的な改善は有意ではなかった(SMD -0.49;95% CI -0.49~-0.09;I2=21%)
・長期的には改善は有意なものではなかった(SMD –0.23; 95% CI –0.49 to 0.03; I2=88%)

■ モバイルヘルス+医療者主導の介入効果②:QoL

・短期間は有意であった(SMD –0.23; 95% CI –0.42 to –0.05; I2=62%)
・中期間には有意ではなかった(SMD –0.16; 95% CI –0.24 to –0.07; I2=0%)
・長期的には有意ではなかった(SMD –0.12;95% CI –0.41~0.16;I2=71%)

■ モバイルヘルス+医療者主導の介入効果③:身体活動量

・[客観的] 短期な結果には改善がみられなかった(SMD 0.11;95% CI –0.05 to 0.27;I2=0%)
・[客観的] 中期的および長期的な客観的結果:研究が不十分であったため実施できなかった。
・[主観的] 短期的な結果に有意な改善がみられたが(SMD 0.31;95% CI 0.12-0.50;I2=0%)
・[主観的] 中期的および長期的な主観的結果には、有意な改善は認められなかった。

[結論] 本研究では、HbA1c、QoL、および短期的な身体活動について、専門家の介入と組み合わせたmHealthの短期的および中期的な利益が確認され、効果的な慢性疾患管理が裏付けられた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

筆者は、Fitbitという活動量をモニタリングする機器を装着している。
この機械によって、その日の身体活動量や歩数を携帯電話やPCでも確認できるようになった。
それは、なにか介入してくる、というよりはただ『モニタリング』してくれる機器だ。

ところが、このモニタリング & フィードバックだけでも、あなどれない。
モニタリング & フィードバックがあることで、意識が運動や健康状態に向きやすくなるのだ。
(あっ、そういえば今、歩数を測っているんだった)
(ほう、今日は一万歩いきましたか [アラート機能で])
(おっ、今心拍数が上がっていますね)

そして、注意が向くということは、実行可能性が高まるということに近しい。
多くの行動にならない行動計画は、気がつかないことによって埋もれていくのだと思う。

そして、今回の抄読研究においては、モニタリング & フィードバックしてくれるモバイルヘルスに、医療者主導の介入が加わった介入効果を明らかにしてくれた。
その結果、mHealth介入の重要なアウトカムであるHbA1c、QoL、身体活動量に対して、短期的には有効であることが明らかにされた。
目的を意識せずとも何らかの利得は得られるだろう。
だが、明確な目的を持ち、さらに医療者が介在することでより確実な効果を期待できそうだ。

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