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認知症予防のための複合的介入プログラムの効果

📖 文献情報 と 抄録和訳

認知症予防のための1年半の複合的介入試験:J-MINT PRIME 丹波

📕Oki, Yutaro, et al. "An 18‐month multimodal intervention trial for preventing dementia: J‐MINT PRIME Tamba." Alzheimer's & Dementia (2024). https://doi.org/10.1002/alz.14170
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[背景・目的] 日本では認知症患者が増加しており、認知症を予防するためのエビデンスの確立が必要である。

[方法] 本研究は、糖尿病および/または高血圧を有する65~85歳の認知機能が正常な地域在住高齢者を対象としたランダム化比較試験である。参加者は1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入群では、週1回90分の集団ベースの運動、認知トレーニング、栄養カウンセリング、血管リスク管理を18ヵ月間行った。

主要エンドポイントは、ベースラインから18ヵ月後までの7つの神経心理学的検査のzスコアを平均して算出した認知複合スコアの変化であった。

[結果] 203人の参加者を無作為に2群に割り付け、178人(87.7%)が18ヵ月の追跡を完了した。

・Global composite score (全体認知機能のスコア):介入群(赤線)と対照群(青線)を比較したもので、介入群は18ヶ月の時点で対照群よりも有意にスコアが向上している(p = 0.009)。全体的に、時間が経つにつれて両群とも認知機能は向上しているが、特に介入群での効果が顕著である。
・Memory (記憶力):記憶力のスコア変化を示しており、介入群は12ヶ月以降で明確な改善が見られ、18ヶ月時点で対照群との差が有意である(p = 0.041)。これは、特に認知機能訓練や身体運動が記憶力向上に寄与した可能性がある。
・Attention (注意力):注意力の変化を示したグラフでは、介入群と対照群の間に大きな差は見られず、統計的に有意な差はない(p = 0.281)。これは、他の認知機能に比べ、介入の影響が限定的であることを示している。
・Executive function / Processing speed (実行機能/処理速度):実行機能および処理速度のスコア変化では、介入群が対照群に比べて有意に高いスコアを示している(p = 0.030)。この結果は、日常の意思決定や情報処理能力の改善に関連している可能性がある。

[考察] 認知症リスクのある高齢者に対する18ヵ月間の多面的介入は、認知機能を改善する可能性がある。本試験は臨床試験登録システム(UMIN000041938)に登録された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

昨今、認知症予防に対する知識は積み上がってきている。
何が認知症予防の障壁・リスクとなるか、あるいは効果的な因子となりうるか。
まだ少ないのは、それら積み上げられた知識を実際に活用した『介入研究』である。

今回の抄読研究は、複合的な介入プログラムを構築し、実際に18ヶ月間の介入を行い、その効果を検証した。
その結果として、認知機能、記憶力、実行機能/処理速度に改善を認めた。
知識を活かして、現実を改善するための実行につなげていく。
その模範となる1研究であった。

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