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変形性関節症者の各症状に対する運動の効果


📖 文献情報 と 抄録和訳

変形性関節症の症状に対する運動の効果と関連因子の定量的分析:薬力学モデルに基づくメタアナリシス

📕Han, Shun, et al. "Quantitative analysis of effectiveness and associated factors of exercise on symptoms in osteoarthritis: a pharmacodynamic model-based meta-analysis." British Journal of Sports Medicine 58.24 (2024): 1539-1550. https://doi.org/10.1136/bjsports-2023-107625
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✅ 前提知識:WOMAC Scoreとは?
WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)スコアは、主に膝や股関節の変形性関節症(OA)の評価に広く使用される自己記入式の質問票。このスコアは、患者の痛み、こわばり、身体機能を評価する3つの主要な部分から構成されている。
<WOMAC-total score>
・WOMAC total scoreは、3つのサブスケール(pain、stiffness、function)の合計。
・通常、各項目は0-4点で採点され、高いスコアほど症状が重いことを示します。
<WOMAC-pain>
・5項目で構成されている
・歩行時、階段の使用時、就寝時、座位または臥位時、立位時の痛みを評価
・スコアの範囲は0-20点
<WOMAC-stiffness>
・2項目で構成
・朝起きた直後と日中のこわばりを評価
・スコアの範囲は0-8点
<WOMAC-function>
・17項目で構成
・日常生活動作(階段の使用、座位からの立ち上がり、歩行、買い物など)の困難さを評価
・スコアの範囲は0-68点

🌍 参考サイト >>> site.

[背景・目的] この研究は、変形性関節症(osteoarthritis, OA)の症状に対する運動のピーク効果の時間と程度、および各種運動様式の効果を評価し、運動の効果に著しく影響する因子を特定することを目的としている。

[方法] 研究デザイン 薬力学モデルに基づくメタアナリシス(MBMA)。データソース Embase、PubMed、Cochrane Library、Web of Science、Scopusを創刊から2013年11月20日まで検索し、変形性関節症に対する運動の効果を検証したランダム化比較試験(RCT)を調査した。適格基準 膝、股関節、または手関節の変形性関節症患者を対象に、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)のサブスケールまたはVisual Analogue Scale(VAS)の疼痛スコアをアウトカム指標として用いた運動介入のRCTが対象となった。WOMAC total score、pain、stiffness、function、VAS-painの最小臨床的意義のある差(MCID)は、それぞれ9.0、1.6、0.8、5.4、0.9であった。

[結果] 症状のある、またはX線写真で確認された膝、股関節、手の変形性関節症患者12,735人を対象とした186件の研究が対象となった。運動療法の有効性は、運動介入開始後1.6~7.2週でピークに達した。運動療法は対照群よりも効果的であったが、すべての結果において運動療法と対照群の効果の差はMCIDと照らし合わせるとわずかな差にとどまった(WOMAC total score、pain、stiffness、fuction、VAS-painでそれぞれ7.5、1.7、1.0、5.4、1.2)。

■ 各指標における改善率 (%)
・WOMAC total score: 27%(運動群)、10%(対照群)
・WOMAC-pain: 29%(運動群)、10%(対照群)
・WOMAC-stiffness: 25%(運動群)、5%(対照群)
・WOMAC-function: 25%(運動群)、9%(対照群)
・VAS Score (pain): 34%(運動群)、17%(対照群)

12ヶ月間の治療期間中、局所的運動(筋肉強化と特定の関節の可動域改善)が最も高い効果を示し(12週間でWOMACの痛みがベースラインと比較して42.5%減少)、次いで全身運動と局所的運動の順となった。筋力強化運動と柔軟性トレーニングに局所的な水中運動(温水での筋力強化など)を加えると、WOMAC total、pain、stiffness、functionの改善がそれぞれ7.9、0.5、0.7、8.2大きくなった。MBMAモデルでは、すべての尺度においてベースラインの症状スコアがより深刻な参加者の治療反応がより良好であること、WOMAC totalおよびpainではより若い参加者の反応が良好であること、そしてWOMAC機能では肥満の参加者の反応が良好であることが明らかになった。
サブグループ分析では、女性、より若い年齢、膝OA、またはWOMAC疼痛尺度におけるより深刻なベースライン症状といった特定の特性を持つ参加者が、運動療法により大きな利益を得ることが明らかになった。

[結論] 運動は8週間以内に最大の効果を発揮し、局所的な運動が最も効果的である。特に局所的な水性運動が含まれる場合。女性、若年、肥満、膝OA、またはより重度のベースライン症状を持つ患者は、運動治療からより大きな恩恵を受けると思われる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

理学療法において、難しいことの1つに「治療効果の予測、予後予測」がある。
未来を予測しきることは、まあ難しいことだろう。そこは、むしろ限界を認識していた方がいい。
だが、ぼんやりとストライクゾーンを想定する程度には、未来を思い描く必要がある。
そうでなければ、目標時期を想定できない、治療で着手すべきかどうかすら、選べない。
よくなると思うから着手するのであって、よくならなそうであれば、代替方法を探すか、別場所に介入するであろう。
だが、そのぼんやりとした予測をすることが、いかに難しいか。
理詰めで考えても、よく分からない。
むしろそこは無数の先人たちが示してきた、「人間全般としての傾向や特徴」を『知っているか、いないか』が重要になる領域だと思う。

今回の抄読研究は、変形性関節症者において、症状別に運動の効果を経時的に明らかにしてくれた。
その結果、運動は8週間以内に最大の効果を発揮し、運動の種類としては局所的な運動が最も効果的であることが明らかとなった。
この結果から、「まず、8週間は一生懸命やってみましょう。その期間で得られる効果がプラトーに達することが多いです。」という大まかな見方ができる。
そこからは、個別のミクロな予測因子での差し引きで、オーダーメイドな予後予測をしてゆけば良い。
あらゆることがそうであるように、マクロな予測→ミクロな予測へ、そのマクロな予測を可能にしてくれるメタ解析であった。

Prediction is very difficult、
especially if it‘s about the future
予測することは難しい ー 特に未来は

Niels Bohr

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