有酸素運動は骨格筋量を増やす?, 減らす?
📖 文献情報 と 抄録和訳
有酸素運動は女性および男性成人の骨格筋量を増加させるか?
[背景・目的] ウォーキングのような有酸素運動が、骨格筋量(skeletal muscle mass, SMM)の維持や増加に寄与するかどうかは不明である。目的本研究の目的は、過体重および肥満の成人男性(n = 105)と成人女性(n = 133)において、有酸素運動が全身および局所(上半身と下半身のSMM)に及ぼす影響を明らかにすることである。
[方法] 4件のランダム化比較試験のデータの後方視的分析。参加者は、所定の試験を完了した者(対照、n = 63; 介入、n = 175)で、磁気共鳴画像法(MRI)により介入前後の脂肪組織およびSMMを完全に測定した者。大栄養素摂取量は、参加者のサブサンプルについて評価された。監視下の運動は、トレッドミル上を12~24週間、V̇O 2peakの50~75%の強度で歩行することにより実施された。
[結果] MRIで測定されたすべての脂肪組織デポットが減少し、有酸素運動により心肺フィットネスが対照群と比較して増加した(P < 0.001)。ベースラインのSMMとは無関係に、有酸素運動はコントロールと比較して全身のSMM(-0.310±0.150kg、P=0.039)および上半身のSMM(-0.273±0.121kg、P=0.025)のわずかな減少(推定平均差±標準誤差)と関連していた。下肢SMMの変化については群間差は観察されなかった(P > 0.10)。
体重の相対的変化と全身SMM(R2 = 0.37、P < 0.001)、上半身SMM(R2 = 0.21、P < 0.001)および下腿SMM(R2 = 0.09、P = 0.701)の変化との間には負の相関が観察された。SMM対脂肪組織比は有酸素運動に反応して増加し、体重減少と正の相関を示した(P < 0.001)。SMMの変化は食事からの蛋白質摂取とは関連していなかった(P > 0.10)。
[結論] 要約すると、体重減少の有無にかかわらず、過体重および肥満の成人において、コンセンサス勧告に沿った中強度の歩行運動は、SMMを維持するが増加させない。SMMの維持は、有酸素運動プログラムの対象となる筋肉に限定される(例えばウォーキングだと上半身の骨格筋量は減少する)。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
僕には、筋力トレーニングを一生懸命やっている友人がいる。
彼は、ベンチプレスが100kgを超えるという、なかなかの超人だ。
そんな彼に久しぶりに会った時に、少し太ったことに僕は気がついた。
お互いに、言葉に気を遣うような間柄ではないので、
というコミュニケーションを交わした。
勉強になったと同時に、「本当にそうなのか?」「どのくらいそうなのか?」というアンテナが僕の中にできた。
そして、最近のMedicine and Science in Sports and Exercise誌を読んでいた時に、この論文に出会った。
今回の論文は4つのRCTを統合した後方視的研究である。
系統的にレビューはしていないようだが、メタ解析に近い結果。
そんな本研究の結論として、ウォーキングのような下肢を用いた有酸素運動は「上半身の骨格筋量を減らす」「下肢の骨格筋量を維持する」という。
彼のいっていたことは、本当だったのだ。
上半身の骨格筋量。ベンチプレスの記録を維持したいのであれば、確かにウォーキングはやめておいた方がいいのかもしれない。
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