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最後の晩餐 (1分小説)

ボクは、畑中さんに一枚のポストカードを見せた。

「ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』です。キリストが弟子たちと食卓を囲み、パンを食べ、ワインを飲んでいる」

畑中さんは老眼鏡を掛けた。

「この食事は、暗喩として、キリストの肉体と血液を表しているんだよな。人間が生きていくためには犠牲が必要だと」

「ええ。自分を裏切り、はりつけにする人を許す、という意味のある絵です」

きっとこの時、キリストには、ユダが自分を裏切ることが分かっていたのだと思う。

「畑中さん、ボク…」

彼がボクの言葉を制した。

「すべて了解している。私は一人。キミには守るべき家族がいる」

近くから声がした。

「時間だ」

畑中さんに、手錠と腰縄が掛けられる。

「ワインとパンではなく、抹茶と桜餅だったけどな。ありがとう、おいしかったよ」





画像引用/ パブリックドメイン




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