草 (1分小説)
中2の娘が口を効かなくなって、8ヶ月。
髪を茶色に染め、セーラー服の丈を短くし、チャラ男と原チャリに乗るようになった。
反対すれば、よけいに燃え上がるだけ。
シングルマザーの私は、黙って動向を見守ることにした。
毎日、娘の好きな具材で弁当を作り、家事をし、仕事に出掛ける。
深夜には、空になった弁当箱が、台所の流し台に置かれてある。
登校はしているようだ。いつか、必ず分かり合える日が来る。
そんなある日。
「草を使って」
8ヶ月ぶりに、娘から奇妙な文面のLINEが送られてきた。
草って、クスリでもやっているのか。いや、いくら何でも母親には勧めてこないだろう。
追及すれば、ますます亀裂が入るだけ。
冷静を装い、文字を打つ。
「LINE久しぶり 草」
生まれて初めて、文末に草を使ってみた。
返事はない。草って、もしかしてアルファベットの方か。
「www」
めげずに2通目を送る。
無言が続く。
「(笑)」
3通目にも返事がない。
眠れないまま早朝を迎えた。
台所へ行くと、流し台には、空になった弁当箱とレジ袋が置かれていた。
レジ袋の中から、大量の草が出てきた。
「ご飯まで、おかずしみしみ」
娘からLINEが入った。