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学校に行かないという選択。「感じる数学と紅茶と、雨のキャンプ。③」

感じる数学

そのタイトルに惹かれ、ワークショップ参加を決めた子どもたち。
開始時間にやや遅れ気味だったが、なんとかワークショップの会場に辿り着いた。

係の方に案内していただき、会場となる部屋へと向かう。
既に講師の先生と他の参加者の方が席についていたが、まだ始まったばかりという雰囲気。最初の講座は、「振り子の実験」。

長男と二男は空いている席に隣り合わせに座ると、先生の話に耳を傾け始めた。その様子を見届け、数学ってなに?にはまったく興味のない末娘を連れて夫とルピシア本社の中を見学する。

実は、ちらりと覗いただけなので、詳しい講座の内容がわからない。
もし、講座の内容の記述を期待していた方がいらしたらスミマセン・・・。

子どもたちが、様々な講座やワークショップに参加する時、私は余程のことが無い限り、子どもたち本人が望まない限り、同席しない。

参加した方が、共有できることもあるのかもしれないけれど、すべてを共有することはできないし、その必要もないと思っている。子どもたちそれぞれの感じ方、受け取り方を極力邪魔したくない。

どうだった?と聞くこともあるけれど、基本的には、それも控えている。
アウトプットするには、時間が必要だと思うから。インプットしたものをアウトプットするには、自分の中で寝かせる時間が、大事な気がするから。

そんなことで、随分後になってから、「あの時の講座でやったことって、このことだと思うんだよね、」という話が出てくることがあるが、それでいいのではないかと思う。

実験のことだけが知りたいのであれば、調べれば沢山の情報がある。

何より今回のテーマは〈感じる数学〉

あれこれと問いただすのは、無粋な気がした。

兄たちの学びの間、末娘はどうしていたかというと、末娘は末娘で楽しみを見つけて90分を過ごす。美しい造りの建物を行ったり来たりし、座り心地のよい椅子に座って、窓から羊蹄山を眺める。

夫と建物やインテリアを見て、「どういう意図でデザインされたのだろう?」などと話をしていると、「良かったらどうぞ。」とスタッフの方が様子の良い紙コップに入った飲み物を手渡してくださった。社内に設えられた家具はすべて旭川家具なのだそう。何時間でも快適に座れそうな椅子の座り心地に感激した。

末娘は木のぬくもりの感じられる、天井が高く、広いスペースをとったトイレが気に入った様子で、「ここに住みたい!」と言い出した。確かに、快適な空間で、居心地が抜群に良い。それにしても、住みたくなるトイレって凄い。


「飲んでみる?」と夫が渡してくれた紙コップに顔を近づけると、ほんのりと果物の香りが漂う。夫がいただいたのは、白桃の烏龍茶。私はダージリンセカンドフラッシュ。末娘には、レモンルイボスティー。ルピシアは、紅茶の専門店。フレーバーティーを得意としているという印象がある。参加者の為に、20リットルタンクに準備された3種類の決して冷たすぎないアイスティーが、暑さに晒された身体に静かに染み入っていく感覚になる。20リットルタンクになみなみと入っている紅茶は贅沢だなぁと、何度もカウンターを眺める。

こちらの本社は、この3月に完成したとのこと。これまでは、渋谷区に本社を構えていたとのことなので、東京の真ん中から北海道への移転は、どんなストーリーがあるのだろうと興味が湧く。

テレビのインタビュー番組でルピシアの水口会長が、移転までの道のりについて語られていた。東京に居を構えている社員の方々が北海道に移住するのは簡単ではなかったケースもあったようだ。それでも、会長は北海道に本社移転を決断した。

最初に移転を考えたのは6、7年前。僕は碁をやるんだけど、『碁は絶対AIだと人間に勝てない』と言われていたのに、プロの棋士に簡単に勝ってしまった。人間の知識構造がAIにりょうがされると、じゃあ人間にしかできないことは何なんだろうと。

人間にしかできないこと、それは「四季を感じること」だと思った。都会にいると感じられないが、北海道は雪がとければ山菜、夏には海産物と次々に楽しみが生まれてくる。自然に身を置くともっとクリエイティブになれるんじゃないか、そう考えたんです。

最初は「こっち(ニセコ)の方がいいよ」って言ったら、かなりの人たちが来てくれるんじゃないかと思っていたんです。

なかなか仕事したいっていう人が集まらず、僕自身も真剣に考えました。本当に経理部がなきゃいけないんだろうかとか。その中で考えたのは、アイデアが出るところ。決断ができるところ。情報が集められるところ。あとは年に1度か2度、みんなが遊びに来られるところ。それが「本社」なのかなと。

地方の店舗を集積する拠点を各地方に置くことも検討している。これからは「北海道に来る人」だけじゃなくて、「東京に住んで仕事をする人」、あるいは「全然違った地方で仕事をする人」がどんどん出てくると思いますよ。
移転へ向けた判断の中では、そういう思いもありました。

だけど今はね、クリエイティブになれるかどうかってことよりもね、こっちに住んだほうが幸せよと。そういう感じで思ってますね。仕事に疲れてふと空を見上げて夕日を眺めると、思わず時間を忘れてしまうほど見入っていたこともありました。私にとってニセコに来てよかったなと思うことは、仕事終わりの夕日です。

NHKインタビューより

ルピシアの本社の建物の形は、ちょっと変わっている。
円形で、真ん中は空間となっている。わかりやすく表現すると、ドーナツ型。屋根はその中心に向かって傾斜を作っている形だ。雪の多い地域なので、雪下ろしの必要のないようにということらしい。


ルピシアHPより・完成イメージ

円形のオフィスは、コミュニケーションを丸くします。
北海道産の木材をふんだんに使った、円形の構造が特徴的な新社屋。どこまでも続くような奥行きと広がりを持つ円環状の形は、昔から上下の区別なく、自由な話し合いができるとされている“円卓”の発想を象徴しています。オフィス空間は、仕事場であると同時に、一日の長い時間を仲間と共に過ごす生活空間でもあります。そこで、自然の景観を損なわず、その上で内外の交流やコミュニティーにワンルームのような一体感をもたらす、フラットなデザインを採用しました。
自然の中は、人が最もクリエーションを発揮できる場所です。360度、自然と人を切れ目なくつなぎ、五感を豊かにする新社屋から、これからの未来の仕事場の形を模索していこうと考えています。

ルピシアHPより


❝未来❞のためのデザイン


7月に送られてきた冊子は、ルピシア本社の建築特集だった。青空の元、雪が残る羊蹄山をバックにした本社の写真と共にそう書かれていた。

数学の体験展示の中には、「バタフライ理論」のことも書かれていて、
数学は、数字のことだけではない、数学とは何なのか?と考えながら過ごした。紅茶専門店で数学のワークショップを行った理由はなんだったのだろう。

自分のしていることのすべてが、どんなに些細なことで、何処かで何かしらの影響を及ぼしている。私が、一人ひとりそれぞれの人が、未来のために出来るデザインがあるのだと思う。すべての事柄は、良し悪しを超えて影響し合っている。


ルピシアという企業の姿勢は、未来に向けて何をデザインするのだろう。

私は、未来に向けて、何をデザインしていくのだろう。

「すごく面白かった!90分、あっという間だったよ!」

ワークショップを終え、満面の笑みで部屋から飛び出してきた二男の笑顔も、未来に何かしらの影響を及ぼしているに違いない。

続く。



詳しい本社のデザインについては、こちらに書かれています。ニセコ本社の素敵な写真も多数掲載されていますので、よろしければご覧ください。

すっかり、ルピシアの回し者のようになっていますが、ただの紅茶好き・家具やインテリア好きなだけです。笑





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