学校に行かないという選択。 「千鳥石 火山灰ガラスクラブ。その1。」
「ちょっと昔、100ねん年くらい前のこと。札幌は澄川に住むある相撲とりが火山灰をガラスの原料にして商売にしたとさ。シコな名は千鳥石。できたガラスはビールの瓶。でも、どうして澄川にガラスの原料があったの?? それは、はるか昔の4万年前、まだマンモスが歩いていた頃の巨大火山噴火にさかのぼる。。。
果たして2022年の澄川でガラスを作ることはできるのか? 千鳥石火山灰ガラスクラブ」
先日、うっかり年齢詐称し、母の名前で申し込みをしてしまった小学生から高校生までのワークショップ。無事に正式な?対象年齢である長男が参加させていただくことが出来た。
全3回のワークショップで、前の土曜日が最終回だった。
美術家の方の企画で、アートスタジオや、市や地域の主催であり、陶芸家の方やガラス作家の方、地質学や歴史に詳しい地域新聞を作っている方も、ワークショップに参加協力してくださっていた。
一日目。
この日の会場は、今は雪で覆われている「紅櫻公園」という日本庭園である。
公園内には十割蕎麦のお店もあるのだ。なんて魅力的。さらに、「ジン蒸留所」もあり、北海道初のクラフトジンの蒸溜所で北海道らしいボタニカルを使用したオリジナルジン『9148』を販売している。
長男を送り届けて、一旦帰宅する予定が、長男が、「自分のカメラが不調だから、写真撮って欲しい。お母さんも話聴いていけばいいんじゃない?コーヒーも飲めるみたいだよ。」と言う。相変わらず、偉そうである。まるで主催者側のようなこの態度。
しかし、この日の会場は、室内に広がるアウトドアスペースで、挽きたての珈琲が味わえる『紅櫻珈琲』。
インドアのアウトドアスペースにて、キャンプの雰囲気と挽きたて淹れたてのコーヒーを味わいながら、レクチャーを聴ける・・・・長男の誘いを断る理由はない。
やや冷え込んでいたので、ストーブの傍のキャンプ椅子に腰掛け、挽きたての豆で淹れてもらったコーヒーを片手に参加することになった。
前半は、地質学に詳しい方が、札幌の歴史、ガラス作りの歴史について話をしてくださった。札幌は、〈サッポロビール〉発祥の地だ。札幌市内を流れる川を利用し、ビール工場のビールを輸送した話や、夏の輸送時にビールの発酵が進まないよう、函館の五稜郭の堀で氷が作られたこと。コストを下げるために国内でビール瓶を作ろうと、ガラス瓶作りに火山灰が使われたことなど、ビールを知っていても知らないこと、ガラスを生活の中で使っていても知らないことが沢山あるのだ。
参加してくださったガラス作家の上杉高雅さんが、「ガラスは自由です。アートとは、美しいだけでなく、その中ちょっと人が嫌うような物も入っている。その嫌うものが、人を傷つけるようなものであってはならないけれど、その線引を教えるのが、大人の役割だと思う。」とおっしゃっていたことがとても印象的だった。
その後、「ガラスで作ってみたいもの」というテーマで、絵を描いた。それは、誰かに見せることが目的ではなく、自由に、というもの。
長男は、鼻歌を歌いながら、紙いっぱいにガラスで作ってみたいものを描いていた。トランペットや、ガラスのプール、ギターにアオダイショウ(蛇)、折り畳み式BBQコンロ、お城などなど・・・
ガラスのお城、外から透けて敵から守りにくそうだね・・・。
「ガラスはどんな形でも作れる素材。薄くして電子機器の絶縁に使ったり、グラスファイバーのように繊維にすることもできる」
また、「実はガラスのコップというのは立っている液体なんです」という物理学に触れるお話を伺った。
ガラスは常に変化していくもの。
私にとっては、とても衝撃的だった。自分の概念や思い込みの多さを実感した。
そして、〈ガラスのコップが液体だとしたら、私たちは、液体に液体を入れて飲んでいるってことだよね?!不思議!!!!!〉と、ひとり興奮してしまった。
レクチャーが終わった後は、皆で、公園内の火山灰地層が露出している場所へと火山灰の採取に出掛ける。崖の上に登り、シャベルなどで採取していく。長男は、素早く崖に登り、大量に火山灰を採取して降りてきた。
山猿のように雪の山を駆け下りてくるので、周囲の大人がヒヤヒヤしている声も聞こえるが、アーティストの方々はそんなことでは、驚かない。「忍者みたいだねぇ~!」と喜んでくれる。私にとっても、長男にとっても、「既成の在り方に捕らわれない」アーティストの方々の距離感はとても居心地が良く感じられる。
採取が終わると、地質学についてレクチャーしてくださった方の実験の時間。火山噴火の原理である発泡現象を「メントスとコーラ」で説明してくれた。
火山が噴火するメカニズムを火山帯の多い日本に住んでいるにも関わらず、知らなかった。
まだまだ、知らないことだらけだ。
そしてそれが、面白くて仕方ない。
子どもたちが学校に行かないという選択をしていることで、私も、共に学びなおすことができる。
翌日は、二日目。
火山灰をふるいにかけたり、火山灰を加熱してガラスにする窯作りをする。
「お母さん、明日も一緒にくるよね?」
そう尋ねる長男に、二つ返事で答える自分がいた。
続く。
ガラス作家・上杉高雅さんの工房。氷柱を使ったグラスなど、素敵な作品がたくさんです!