漫画みたいな毎日。「明日が、必着日なんですが。」
長男が、〈動物園の一日飼育員体験募集〉のお知らせを見つけたのは、12月1日のことだった。
お知らせが記載されたチラシには、他にも、二男も参加できそうな科学館のワークショップなどもあり、インターネットでの申込みを済ませた。調べたところ、動物園の一日飼育員体験は、インターネットからの申込みではなく、〈封書で10日必着。〉とのこと。
HPから申込み用紙をダウンロードし、印刷してみると、「参加したい本人の意気込みを自分で記入してくださいね!」と書いてあった。
「自分は、どうして、この一日飼育員体験に参加したいかっていうのを、自分の言葉で書いて送るんだって。10日までに動物園に着かないと駄目だから、旅行に行く前に出したら安心かもね。冷蔵庫に貼っておくよ!」
と長男に伝えると、
「あぁ、わかった。」
と、素っ気ない返事が返ってきた。
そして、一昨日。
3泊4日山の中の保養施設での強化合宿を終え帰宅。山となった洗濯物を片付け終え、倒れ込むように子どもたちと就寝。
朝、起きて片付けの続きをしていて、冷蔵庫に目をやる。
・・・なんか、忘れてる気がする。
・・・なんだっけ?
しばらく、ぼんやりした頭で考える。
動物園!!!!
私は、慌てて書類を確認する。
今日は、9日。
10日に動物園に着く様にするには、遅くとも今日の朝イチの郵便回収に間に合うように投函しなくてはならない。
しかし、我が家の一番近くのポストは1日1回のみの回収で、朝の9時だけだ。
時計に目をやる。
8時半。
しかも、書類は私が記入した必要事項だけが埋まっており、長男が書く欄は真っ白である。これから投函するのでは、間に合わないのではないか、と長男に伝えた。
すると、「あ、今、書く。」と、マイペースに書き始めた。慌てる様子は皆無だ。
長男は、〈なんとかなるだろう〉と思っているのだろう。
彼は、滅多に慌てない。
お弁当を置き忘れていっても、バスに乗り遅れても、お金を落としても、トランペットのレッスンにトランペットを持って行くのを忘れても、彼は慌てない。
いままで、起きた数々の出来事を思い出してみても、最終的には、なんとかなり、周りの方々に助けてもらいながらも、自分で、なんとかしてきたのだ。
「あのさ、もう郵便回収に間に合わないと思うんだけど、どうする?」
「明日、動物園に着いてないと駄目なんだっけ?」
「うん、そうみたい。」
「じゃ、動物園に届ければいいんだな。」
・・・私の頭の中の図式が、一気に出来上がった。
母が動物園に応募用紙を届ける。→長男も行く。→弟妹たちも一緒に行く。→朝から弁当もって、動物園に皆で行く。
・・・ということですね?
「動物園、久々だなぁ♪」と嬉しそうな長男。
確信犯か?!
と、いうことで、
応募書類の必着日である、今日。
動物園、なう。
〆切とはなんぞや。
二男や末娘も楽しそうだから、
ま、いいか。
なんにしても、大抵の物事は、なんとかなるし、なんとかすることができるのだ。
長男を見ていると、そう思えてくるから不思議である。
こうして、母は、知らないうちに、強化されていく。