1章①:本当は恐ろしい星の王子さま
~続き~
ネタバレあります。
星の王子さまの、物語全体のあらすじは、めんどうくさいので省きます。この記事を読んで下さるのは、王子さまに関心がある方ばかりだと思うので、概ねご存知かと。黒い寓意があるって立場で考察しようとしているのに、表向きの綺麗なストーリーを紹介する気にはなれないし。
↑上の1章冒頭の挿絵は、いきなりコレに似ている↓。
金色も同じ。モジャモジャの横にもあります↓。
このロゴマークは、ギリシャ神話に出てくる医神アスクレピオスの杖だとかで、医療・医術の象徴として世界的に広く用いられているらしいんだけど(救急車とか)…そんな表向きのうそぶき、誰が信じるか!広めたのも自分たちのくせに。不気味なもんは不気味だ!こういうのは直感でいい。
冒頭の挿絵、大蛇ボアにぐるぐる巻きにされている生き物は、池澤夏樹の訳では動物、河野万里子の訳では猛獣、星の王子さまというタイトルの生みの親、内藤濯の訳では『けもの』になってます(1953年~)。そして英語訳では『beast』に。獣ですね。ろくーーーー6●●。…って、あい○んかっ笑!!
6才の主人公ぼくが言うには、このすばらしい絵(a magnificent picture)が載っていたのは、『ほんとうの物語(True Stories)』という原生林のことを書いた本とのこと(※すばらしい:内藤・池澤訳)。
そして、この挿絵↑
主人公のぼくは、この帽子のような絵をおとなたちに見せて、
『if my drawing scared them=この絵が恐いかどうか』を訊きます。
おとなたちの答えは『なぜ帽子が恐いの?』
大人が子どもの頃のように想像力豊かかどうか、子どもの心を失っていないか、大事なことが今も見えているか、などの心理テストでもあるんですかね(表向きは)。たしかによく見れば、絵に目のようなものが描かれているし、こどもの情操教育のためにも、帽子、とにべもなく答えるような大人にはなりたくない、子どもの目線になって話せる余裕のある大人になりたい…などにつながる感想を、私も以前は持っていたと思う。『肝心なことは目に見えない』という、キャッチフレーズめいたセリフも相まって、そりゃあ、ねえ?無意識に見える大人ぶりたい方向に誘導されますよ。
でも本書を再読した、今の私はこう言いたい。いや、帽子でしょ笑。これ、21章の挿絵で、ヒトラー似の猟師がかぶってる帽子にも似てるじゃん!仮に献辞が本当に3段構えで、あの批判防止の意味もあるとしたら、帽子の挿絵も2重底になっていて、猟師の帽子のメタファーの意味合いがあってもおかしくない、と今の私は訝しんでいます。
※『本当は恐ろしい星の王子さま』というベタな見出しを付けていますが、これは1章前半で主人公ぼく自身が言っている、
・『ほんとうの物語(True Stories)』←蛇グルグルがすばらしいんだとさ
・『if my drawing scared them=この絵が恐いかどうか』
を合体させた意味合いも含ませています。
そりゃあ6才の男の子が、『ほんとうの物語』と言うのなら、大抵の人は良い意味合いに取るでしょうし、『この絵が恐い?』と訊ねられても、純粋な(はずの)子どもの言うことだから、それが世にも恐ろしいものだなんて発想、普通は持たない。でも、この男の子、大人の作者が代弁させているだけですから、本当は(笑)。そこは主人公や王子さまに感情移入し過ぎないで、俯瞰の視点で読んでも良いと思う。そうすれば、表のストーリーとは別の、裏の寓意(アレゴリー)が行間に見えてくることってあると思う。名作と呼ばれる作品では特に。
冒頭の蛇ぐるぐる6巻きも、帽子に見えるボアも、本当は恐ろしいものだ、それこそが『ほんとうの物語=星の王子さま』だ、と暗に匂わせている可能性…私はあると思います。本当のことを直視するのは怖いものです。『大切なことは目に見えない』と、あたかも良心的な真実を教えているかのように見せかけて、実は逆に悪意を仄めかせているのが、本書の裏の寓意だと、私は考えています。
~続く~