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短編小説から見る社会

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菅原ゼミで読んだ短編小説の書評を順次掲載していきます。書評は全てゼミ生が書いています。授業期間中の毎週末ごろ更新です。  ※ネタバレありですので気になる方はお気をつけください。
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2020年11月の記事一覧

多和田葉子「光とゼラチンのライプチッヒ」書評

多和田葉子「光とゼラチンのライプチッヒ」書評

本日2回目の更新です。根本龍一さんによる書評です。

多和田葉子「光とゼラチンのライプチッヒ」(日本文藝家協会編『現代小説クロニクル1990-1994』講談社文芸文庫、2015年)

評者:根本龍一

 フィクションを書くということは、一つの世界を表現することであるが、同時にそれ以外の物語の展開の可能性を破壊するということでもあるのはもはや周知の事実である。 

 言葉には意味があるが、物語に教訓

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絲山秋子「神と増田喜十郎」書評

絲山秋子「神と増田喜十郎」書評

本日も2本の書評を掲載します。最初の評者は森本和圭子さんです。

絲山秋子「神と増田喜十郎」(池内紀ほか編『日本文学100年の名作第10巻 バタフライ和文タイプ事務所』、新潮文庫、2015年) 

評者:森本和圭子

 この物語はタイトルの通り、「神」と「増田喜十郎」が登場する。
 増田喜十郎は70歳を超え"経験を積んだ"女装が趣味のおじいさんである。女装が趣味であるからと言って、同性愛者ではな

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山野浩一「メシメリ街道」書評(2)

山野浩一「メシメリ街道」書評(2)

「メシメリ街道」の書評の2本目です。評者は船越虎さんです。

山野浩一「メシメリ街道」(『日本SF短篇50 II:1973-1982』ハヤカワ文庫、2013年)

評者:船越虎

 異世界を冒険するという妄想をしたり、異世界に迷い込んでしまう夢を見たことは誰しも一度はあるのではないだろうか。気づかずに迷い込んだ異世界は果てしなく広く、現実世界の常識は通用しない。初めは異常だと感じた異世界もいつしか

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山野浩一「メシメリ街道」書評(1)

山野浩一「メシメリ街道」書評(1)

本日は山野浩一「メシメリ街道」に関する書評を2本お届けします。最初は鶴田聖之さんです。

山野浩一「メシメリ街道」(『日本SF短篇50 II:1973-1982』ハヤカワ文庫、2013年)

評者:鶴田聖之

 なぜ自分は生きているのか。思春期や青年期のアイデンティティが不安定な時、このような思考に陥ってしまうことがある。もちろん若者だけに留まらず、鬱になったり、その他の精神疾患から似たような感情

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シオドア・スタージョン「孤独の円盤」書評

シオドア・スタージョン「孤独の円盤」書評

 本日2本目の更新です。成山美優さんに、シオドア・スタージョンの短編小説のレビューをしていただきます。

 シオドア・スタージョン(小笠原豊樹訳)「孤独の円盤」(シオドア・スタージョン『一角獣・多角獣』早川書房、2005)

評者:成山美優

 孤独は時に心地よく、時にとても怖いものであると思う。友人や恋人、家族など、誰かと感情を共有することで、人は孤独とうまく向き合っているのかもしれない。

 

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ジーン・ウルフ「デス博士の島その他の物語」書評

ジーン・ウルフ「デス博士の島その他の物語」書評

 今週は2本の書評を公開します。まずは池田萌乃さん。ジーン・ウルフの名作短編「デス博士の島その他の物語」を紹介してくださいます!

 ジーン・ウルフ(伊藤典夫訳)「デス博士の島その他の物語」(ジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語』国書刊行会、2006年)

評者:池田萌乃

 きみは本が好きだろうか? 私は好きだ。言葉が持つパワーの凄さを知ることができるし、新たな世界を知ることもできるからだ。

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安岡章太郎「夕陽の河岸」書評

安岡章太郎「夕陽の河岸」書評

菅原ゼミで読んだ短編小説の書評をこれから連載していきます。トップバッターは篠岡綾菜さんです!

安岡章太郎「夕陽の河岸」(日本文藝家協会編『現代小説クロニクル1990-1994』講談社文芸文庫、2015年)

評者:篠岡綾菜

 孤独とはたった一人で生きていくことだけを指すのだろうか。孤独死という言葉があるように看取って貰える間柄の人がいないことだけを孤独というのだろうか。周りに家族がいて、友達が

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