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掲示板の中の届かない愛の詩集 / Missed Connection / 人麻呂も人の子
たまたま街や駅で見かけた人に少しの恋心を抱く、
なーんてことは、古今東西問わず起こりうること。
そんな恋心を頂いてみても、結局声をかけることも出来ず、ラブストーリーはいつもでたってもはじまらなくて、せっかくの出会いを活かしきれなかった自分のシャイさを嘆く。
今日はそんな気持ちがいっぱい詰まった、一風変わった詩集を紹介しよう。
クレイグス・リストはサンフランシスコ発祥のアメリカで最も有名な掲示板サイト(クラシファイド・サービス)の一つだ。
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個人間の売買、不動産情報、求人情報、ペット情報、その他スレッド別にコミュニティが形成されていたり、一方で怪しげな広告も溢れてたりもする。(アクセスされる方は個人責任で!)
左上Community内にmissed connectionがある。
例えば、不要な家具や小物、車、楽器を売りたい時にはクレイグス・リストに投稿しておくと、買い手が見つかるので、我が家でもたまーに利用する。
コミュニティというカテゴリーでは、人々が意見やメッセージを書き込んだりして出会いや情報交換の場所としても機能していて、さらにその中にmissed connectionという少し変わったトピックがある。
ここでは、まさに
一方的に恋心を抱いてしまったけど、シャイすぎて話しかけれなかった人たちがその一方的な思いを書くという、ちょっとオモシロいスレッドである。(ただしその多くはだたのイカガワシイ個人広告なので閲覧注意)
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寿司屋で見かけた子連れの女性への届かないメッセージが記されている。
ガソリンスタンドで見かけたアナタへ、名前や連絡先もきけなかったアノヒトへの気持ちナドナド、こうした気持ちをまれに詩で表現し、ここに書き込むツワモノがいる。
そうしたmissed connection内の
「届かないだろう愛のポエム」をまとめた本が
『I Hope You Find Me』(願わくば、あなたに見つけて欲しい)。
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ペラペラとページをめくって感じるのは、人という動物の面白さ、
届かないとわかりつつも、こうして文字をおこしてしまう我々の業(Noteの書き手もまた同じ)と情感の妙だ。
またその一方的な思いや妄想はバカバカしくも愛らしい。
その「届かないだろう愛のポエム」を紹介しておこう。
まずは初歩編
「ガソリンスタンドの男」
あなたはとても優しそうで
そして顔はいい感じ
私はわかるわ
私達きっといい友達になれるって。
もちろんわかるわ
あなたはとってもクールだってこと
ちょうど私みたいに
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ちょっと、なんじゃこりゃ? と突っ込みたくなる 中級編
「日曜日 パトカーの後部座席で」
俺はとっ捕まっていた
君の車の後部座席で
日曜日の午後
君はとても優しく
そして俺のイカレタ話も
聞いてくれた
俺は好きさ
お仕置きされるのが
*原文では性別はわからないので、とりあえず男性から女性(男性)への愛と解釈して翻訳
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そして、一方的すぎてもはやよくわからない上級編はこちら
「君は犬みたい」
君は僕の犬みたいだった
僕が子供の時に飼っていた犬。
僕が3つの時に彼女は死んだけど
君は彼女だって、僕は思う、
今は人のカタチをしてるけど
君はエックフォード通りとノーマン通りにいた
たぶん29歳くらい
黒いバンダナを巻いていた
君は君のようだった
走って戻ってくる時の君に
お腹が空いた時の君に…
*原文では性別はわからないので、とりあえず男性から女性への愛と解釈して翻訳しました。
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飼っていた愛犬へのノスタルジーを感じるのはいいけれど、
犬に似てるということでポエムを書かれた人はどう思うのでしょうか 笑
この本に掲載された詩のほとんどが、ちょっと鼻で笑いたくなるような馬鹿げた、取るに足らないものだけれども、一瞬の恋心だって、まぁ言ってみればそのような馬鹿げたものであるかもしれず。
日本の古代の第一級歌人である柿本人麻呂にしてもこんな歌を詠んでいる。
たまさかに 我が見し人を いかならむ よしをもちてか また一目見む
超訳
たまたま僕が見たあの子 どうやったらきっかけつくって また一目みれるかしらん💛