「共感する建築」を創る:ヘザウィック・スタジオの創造力
六本木の東京シティビューにて、「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」が開催され、注目を集めています。この展示で目にする建築物は、他の建築家が創るものとは一線を画し、観る人々を魅了しています。建築家トーマス・へザウィックは、斬新なデザインを次々に生み出してきました。本記事では、へザウィックのインタビュー記事から、彼らのクリエイティビティに迫ります。
展示から垣間見る、建築家トーマス・へザウィックの哲学
2012年のロンドン五輪の聖火台は、参加国の数と同じ204個の花びらに灯った火が一つになるというものでした。た、2010年の上海万博では、ハリセンボンのような突起が建物を覆う英国館をデザイン、この突起には、25万個の野生植物の種子を盛り込んでいます。このアイデアは、王立植物園キューガーデンのミレニアムシードバンクに着想を得たもので、世界最大の植物保護事業を表現しています。へザウィックの哲学に触れ、彼らが「共感する建築」を創る理由とは何かを考えてみましょう。
これまでにない斬新な建築コンセプト
シンガポール南洋理科大学の新校舎とグーグルの新しい本社屋は、従来の建築の常識にとらわれない斬新なデザインで注目を集めています。
「長い廊下による教室分けはもう古い。もっと自然なコミュニケーションができる場を創りたい」という発想から、シンガポール南洋理科大学の新校舎は、丸い弁当箱を重ねたようなデザインになっています。廊下をなくし、人々の身体感覚や動きに則した建物を実現しました。
グーグルの新しい本社屋は、巨大なテントのようなデザインで、天井や壁ではなく、太陽光パネルが全体を包み込んでいます。従来の建築とは異なり、内部と外部の境界があいまいになっており、人々や光、空気が自由に行き来できます。グーグルのコンセプトに合わせて、地域コミュニティとの繋がりを深め、生産的かつ楽しい職場環境を提供することが目指されています。
これらの建築物は、今後の建築業界に多大な影響を与えることでしょう。新しい建築のデザインには、環境に配慮したエコな要素や、環境変化に応じて組織を柔軟に変えられる機能性が求められます。今後も、このような斬新な建築物が生まれることに期待が高まります。
異能集団が生み出す新しいデザインの可能性
ヘザウイック・スタジオの建築デザインには曲線が多用され、効率化を追求した直線主義の現代建築とは異なる人間主体のアプローチが感じられます。
建築家の藤本壮介さんは、ヘザウイック・スタジオの人たちは非常にポジティブで、これまでにないものを作り出すことに情熱を注いでいると言います。そして、プロジェクトの最初には、ありそうなアイデアを全て出し尽くし、それらを全て排除し、完全に新しいアイデアを考えるという面白い手法を使っています。
へザウィック・スタジオが取り組む、ありそうなアイデアを排除して全く新しいものを発想する手法は、とても厳しいものでもあります。そう簡単に新たなアイデアは出てこないでしょう。
そのような課題に対する解決策として、ヘザウイック・スタジオでは、異能集団を形成することで、新しいデザインの可能性を広げています。建築家、デザイナー、エンジニア、脳科学者、そしてアーティストまでが加わり、それぞれが自分の経験に基づき発想を膨らませることで、新しくて機能的にも問題のないデザインが必ず生まれると考えています。
化学反応によって導かれる革新的なアイデア
異能集団のメンバーとの会話は、化学反応のように相互作用し、新たなアイデアが生まれていきます。しかし、最初は霧の中にいるような感覚があり、会話を繰り返すことで霧が晴れていきます。それまで数週間、数ヶ月かかることもあります。それでも、何年もかかるプロジェクトで成功するためには、最初に基盤を固めることが重要です。
最初に、ありそうなものを全部あげてそれを排除する、この取り組みに私たちも挑戦できるようにしたいものです。