「ビロードの耳あて イーディス・ウォートン奇譚集」列車の中での奇妙な出会い、そしてその結末。
列車のコンパートメント、というのは、こちらの想像力を刺激する場所である。
まず、列車そのものが、閉ざされた空間である。
走行中は、どこにも逃げ場がない。
コンパートメントは、その閉ざされた空間の中にある、さらに閉ざされた空間なのだから。
一人きりで、外の景色を眺めたりぼんやりしたり、または読書を楽しみたい、と考えている人間にとっては、最高の場所であろう。
そこへ、自分以外の乗客が入ってきたら?
相手も、自分と同じように静寂を愛し、マナーを守ってくれる人間であるならば、何も問題