優雅な夏休みのための、読書リスト①
私には、そのときの季節にあわせて読む本を選ぶ、ということが、よくあります。
これはけっこう、楽しいものです。
たとえば春になると、P・G・ウッドハウスの「春どきのフレッド伯父さん」を読みたくなってくるし、梅雨時には、ある六月の一日を描いたヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」が気になってきます。
そして秋には、アニタ・ブルックナーの「秋のホテル」なんて小説があったなあ、と、思い出します。
それから、ここ何年かクリスマスには、アガサクリスティーの「ベツレヘムの星」、そして、ディケンズの「クリスマス・キャロル」を読むのが恒例行事になっています。
もちろん、季節に関係なく読みたいと思ったときに読めばいいのだけれど、私の場合、読む本を選ぶ際、そのときの季節や天候状況などに気分を左右されることが多いのです。
これから、長い夏がはじまります。
さあ、何を読もうかな・・・と思って未読・再読作品も含めてあれこれリストアップしていたらとまらなくなってきたので、自分の備忘録も兼ねて、ここに記しておくことにします。
私の、夏の読書リストの選択基準は、以下のようなものです。
①夏、もしくは夏休みの話であること。
②夏の話でなくても、なんとなく明るい気分になれるもの。
③バカンス気分にひたれるもの。
④冒険もの。
⑤ホラーや怪談もの(ただし、あまり暗い気分にならないようなもの、という条件つき)。
思いついた順に、書いていきます。
まず、ゲーテの「イタリア紀行」。
ドイツを出てから、イタリアに到着するまで、そして到着後、彼の地を巡る、ゲーテの記録。
ゲーテが旅をする様子は、イタリアという国に引き寄せられているようでもあり、魂の羅針盤によって、明るいほうへ、明るいほうへと導かれているようでもあります。
夏のはじまりに読むのに、最適の本。
「ゆびぬきの夏」は、二十世紀初頭のアメリカが舞台。
少女ガーネットの、楽しい日々。
未読ですが、なかなかおもしろそうです。
「あしながおじさん」も、リストにくわえておきましょう。
夏に関係あるのは、ジュディが夏休みに農場を訪れる箇所くらいだけれど、でも、何もむずかしいことなど考えずに、ただ単純に、孤児院出身の少女のシンデレラストーリーを楽しもう、と決めて読めばいいのです。
ジュディが大学へ入ってからは、もう、ひどい不幸が彼女を襲ったりはしないということはわかっているし、ラストも知っているわけですから、安心して読めます。
こんなことってあるかい、と言いたくなるくらい、おめでたい八ぺーエンドになだれ込んでいく過程を、楽しもうと思います。
それから、スティーブンソンの、「宝島」、ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」「月世界旅行」「地底旅行」などを、子供の頃に戻ったつもりになって、読むのもいいでしょう。
岩波少年文庫から出ている素晴らしいホラー短編集のシリーズ、四冊。
「最初の舞踏会」、「八月の暑さのなかで」「南から来た男」「小さな手」。
大人が読んでも、じゅうぶん楽しめます。(当然)
レオノーラ・キャリントンの「最初の舞踏会」が収録されているのは、驚き。これを読んで小学生がどんな感想を抱くのか、ちょっと聞いてみたいです。
ルーマー・ゴッデンの、「すももの夏」。
夏休み、諸事情によって、パリの小さなホテルに取り残され、ひと夏を過ごさなくてはならなくなったイギリス人の四人の子供たち。
児童書のコーナーに置かれていることが多いようですが、これは、大人も(大人が?)読むべきだと思います。
三島由紀夫「夏子の冒険」。
小沼丹「光る丘」。長い長い、夏休みの物語。
のんびりゆっくり、だらだらと、ドライブする学生たち。
木皿泉のテレビドラマ、「すいか」のシナリオ。
夏に、これを読まないなんて、考えられません。
小説ではなく、漫画もあげてみましょう。
すべて、大島弓子の漫画です。
夏に読み返すならば、「七月七日に」、「ほうせんか・ぱん」。
それから、夏の話というわけではないのだけれど、それでも、「最高の夏休み漫画」と言っていい、「毎日が夏休み」。
「ジィジィ」も、忘れてはいけません。
ジェス・ウォルターの、「美しき廃墟」
未読。なんとなく、夏向きのような気がして。今年の夏の課題図書です。
プルーストの「花咲く乙女たちのかげに」。
避暑地バルベックで過ごす「私」の夏。
P・G・ウッドハウス「ブランディングズ城の夏の稲妻」。
このウッドハウスの小説も、「あしながおじさん」と同じく、不幸な事件は何も起こりません。
最後まで、お気楽極楽気分でいられます。
これくらいかな・・・と思っていたら、まだ、素敵なのがありました。
フランソワ・オゾンの映画のノベライズ、「スイミング・プール」。
暑い日の、午後に読むのがいいでしょう。
夏はまだはじまったばかり。
また、リストにくわえるべき本が見つかったら、書きくわえていきます。