「大きな愛と楽しく生きる術を知ったから、私は乗り越えられる~『西の魔女が死んだ』~」【YA㉗】
『西の魔女が死んだ』 梨木 香歩 著 (新潮社)
2008.05.15記録
2022.08,18加筆
※2008年に記録した時の記録に加え、新たに修正もかねて加筆したものを以下書いています。
読んだのはけっこう前だったので、意外と細かいことを忘れているものだな…と思い、再び読み直してみました。やはりいい本は何度読んでもいいです。
この本がついに映画になったんですね。
映画『西の魔女が死んだ』は6月21日に公開です。
(注:2008年当時の話です)
https://www.asmik-ace.co.jp/lineup/1291
映画公式サイト(現在はすでに無くなっています)を見て、ますますその暖かい世界に引き込まれました。
はあ~…ロケ地として選んだという清里の風景と、本を読んでいてもすう~っと頭の中に広がるおばあちゃん=西の魔女の家が具現化されとても素敵です。
この家、来年(2009年)お正月まで公開されるらしいです。近くなら絶対行くのに…。
周りと合わせることが苦手で中学校に入ったばかりでいじめにあい、不登校となったまい。
生まれつき持っている喘息もひどくなってしまいました。
学校は苦痛を与える場でしかない、と本人に言わしめる今の学校や子どもたちを取り巻く現状。
そして…ママからも直接ではないにしろ、「扱いにくい子」と呼ばれる自分が悲しくなり、思います。
「ママはもうわたしに誇りが持てなくなったのだ」と…。
それでも、学校に行くことと比べたら我慢できると思い込もうとするまい。
なんて悲しい…。
でもおばあちゃんから
「私はいつでもまいのような子が生まれてきてくれたことを感謝していましたから」
と、行き場を失いかけて落ち込んでいたまいを、おばあちゃんはやさしく受け入れてくれ包んでくれます。
最初の一言でふわっと心を解放してあげられる大きさ・あったかさをもっているおばあちゃん。さすが魔女です。
“魔女”とは、草木についての知識を代々伝え受け継いで、物事の先を見通せる力を持つ人のこと。
中学一年の夏の日に、離れて山里に暮らすイギリス人のおばあちゃんの家で当分暮らすことになったまいにとって、おばあちゃんの暮らしぶりはとても新鮮なものばかりでした。
そうして、もしかしたら自分にも流れているかもしれない“魔女の血”を確かなものにするため、魔女修行を始めることにしたのです。
それは早寝早起きして、三食きちんと食べて、よく運動し規則正しい丁寧な生活を送ること。
そして何事も自分で決めること。
精神の鍛錬をこれから始めるのです。
おばあちゃんの庭にたくさん育っているハーブを暮らしに使ったり、飼っているにわとりの卵を朝一番にとって来る、野いちごをつんで手作りのジャムをこしらえる…。
森のお気に入りの場所を見つけ、大きな空を眺める。自然の中に身を置く。
おばあちゃんに教えてもらいながら自然にならった健康な生活を送るうちに、まいは次第に心も強く成長していきます。
田舎の清々しい空気のもと心も清浄化されたようで、このままおばあちゃんとの生活もうまくいきそうだったのですが、あることをきっかけにおばあちゃんとの仲がしっくりいかなくなり、とうとう心に引っかかったものを残しつつおばあちゃんの家を離れることに…。
そしてまいが中学三年生になったある日、突然その知らせが届くのでした…。
最後はとても切ないけどあたたかい気持ちになります。
まいは、最後におばあちゃんとのある約束を確かに受け取るんです。
奇跡が起きるのです。
それがまた…とてもいいんですよね。
ネタバレになっちゃうといけないので、まだ原作を読んでいない方はぜひ、読んでみてください。
すでに読まれた方は、映画もすごく楽しみですよね。
映画の主題歌はあの手嶌葵さんが歌っていて、やはり上手いし澄んだ声が綺麗です。BGMも素敵。
おばあちゃんの暮らしぶり、読んでいてなんかマネしたくなるものもありました。
庭に一面に咲いているラベンダーの花の上に、洗ったシーツを広げて干します。そうすると、シーツにラベンダーの香りが移っているのです。寝る時のことを考えただけでうらやましい!
台所のドアを開けると、タイル張りの土間の狭いスペースがサンルームになっているし、裏庭にはたくさんのハーブが植えてあります。
でも、やはり自然を相手に長年暮らしてきたおばあちゃんだからこそ、薬草などの知識を熟知している魔女だからこそできるオーガニックな暮らしなんでしょうね。
あこがれるだけでは簡単にできるものではないけど…それでも、きっと映画を見たらやはりやってみたくなるんだろうなあ…。
その後公開された映画ももちろん観に行きました。
世界観がちゃんと描かれており満足しました。おばあちゃん役のサチ・パーカーさんは、アメリカのアカデミー賞女優、シャーリー・マクレーンさんの娘さんで、日本にも住んでいたことがあるとかで日本語が堪能です。
やさしくて強く大きな愛で包み込んでくれるおばあちゃんを素敵に演じてくださいました。
それまでも人気だったこの本、映画公開後もよく読まれるようになったようです。
でもまだ知らない子どもたちも多いと思います。ぜひ残りの夏休みに読んでみてはいかがでしょうか。
ちなみにですが、以前ご紹介した『リューンノールの庭』にも通じるお話だなとも思いました。
はじめましての方、よかったらこちらも読んでくださると嬉しいです。
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