シェア
sound chronicle
2023年9月4日 01:51
……
2022年11月1日 09:57
第二章この秋、私は丹後を訪れた。1988年、一日自然に耳を澄ます「日向ぼっこの空間」の後、鈴木昭男さんが住み続けた場所だ。丹後半島の日本海側北部、福田川が流れる町並みへ、15時間以上、バスに揺られて辿り着いた。網野駅に、鈴木さんと奥さんの宮北裕美さんが出迎えて下さった。「日向ぼっこの空間」は「秋分の日に、一日、自然に耳を澄ます」ため、一年半をかけて標準時子午線が通る地点で、現場の赤土から「
2022年10月31日 23:24
第一章初めて鈴木昭男さんとお会いしたのは「日向ぼっこの空間」のレコードを手に入れた時だった。それにサインをいただく前に、優しい声での会話が始まった。その瞬間から、目に満ちている暖かさと人柄に魅了されていった。その後、鈴木さんにメールをしても、ずっと返信がなかった。『地球の歩き方』の編集者である75歳の大家さんに読んでもらった時「押し付けがましいのでは」と言われてしまった。新しく習得した言葉
2022年9月1日 13:15
「楽と言ふは、好み愛する事なり。これを求むること、止む時なし」1317-1331年、吉田兼好、徒然草 第二百四十二段より。埼玉県の越谷市にある音楽カフェブロッサムは、「楽」を掲げ「音楽」と「楽しむ」をテーマとしている。「ブロッサム」という店名は、人が年齢に関わらず、幸運、夢に向かって努力を積み重ねれば、“将来実になるのを期待させる花になる”ということを祈って命名されたという。その清々しい春、
2022年7月21日 17:34
天井を仰いだら、コンサートポスターに覆われていた。「全て同じ人、穐吉敏子ですよ」と盛岡の開運橋にあるカフェ・ジョニー店主、照井さんが言った。92歳の伝説的なジャズピアニスト、穐吉敏子より認められた「世界一クレイジーなファン」のお店を訪れた。1974年から穐吉さんの音楽を真剣に聴いてきた照井さんは、「穐吉敏子JAZZミュージアムを設立する」という夢を、まもなく叶える。穐吉さんを知っている人に
2022年6月29日 09:39
「飛ぶ鳥を見るのが好きで、音楽的なフレーズの発想が湧いてくる。鳥がそこにいて、そして滑空してゆく」暖かい初冬の日曜日の朝、山梨にあるテリーさんのアパートへ向かっていた。それは現実なのに、非現実的だった。2時間早く駅に着いて、私が車で来なかったことを知って、テリーさんは親切に駅まで私を迎えに来てくれるとおっしゃっていた。ちょうど朝11時45分、彼は弟子である宮本沙羅と駅にやって来た。その日、テ
2022年5月20日 21:51
山梨県の石和温泉駅から歩いて56分の所、「サウンドライフ・ハーモニー」という小さなコーヒーショップとオーディオ工房がある。はじめてお店が目に止まったのはジャズ喫茶「海」に置かれていた。音楽之友社から出版された『いい音 いい場所 いいお店』という雑誌だった。それ以来、ずっと私の頭に刻まれていた。その日、ピンクスーツケースを持っていた親友とともにサウンドライフ・ハーモニーへ冒険に出かけた。日本ではヒッ
2022年4月24日 17:56
近所:朝霞は女で商売するところで、音楽で商売なんて生意気だ。マスター:潰せるなら潰してみろ!昭和27年に開店したジャズ喫茶「海」のマスターは近所の人に嫌がられた。「埼玉の上海」と呼ばれた朝霞にあるお店は、二代目61歳の小宮さんが運営している。先代マスターの父は海軍出身だったので、ジャズ喫茶に「海」という名前を付けた。はじめて「海」を訪れた時は、2019年の11月だった。当時、史上最大の
2022年4月18日 00:21
今まで巡ってきた中で最もファンキーなジャズ喫茶「映画館」。1978年にオープン、文京区白山という閑静な住宅街、映画とジャズに魅了されたマスターの吉田さんとその奥さんが経営している。時間と順序に縛られない自由な発想で知られる映画監督、フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』やアラン・レネ監督の『ヒロシマモナムール』などフランス映画のポスターが壁に貼ってある。ジャズの音楽が止まると、店内は突