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なんとなくで買ったホラー小説がすごかった。 "撮ってはいけない家/矢樹純"

なんということなんだ。
結局、極上の書物に出会うには、SNSを参考にするのではなくて、己の感覚にすがる方が良いということなのか。

装丁とタイトルに惹かれて、事前情報0で購入した新書、”撮ってはいけない家”。矢樹純さんという方の作品。恥ずかしながら初めて名前を聞いたのだけど、ミステリーで有名な賞を複数受賞されてる人だった。今度読もうと思う。
で、本作。

インスタでも書いたんだけど、ちょっと良すぎたのでnote書くことにした。本読んで、note書きてえ!となったこと、これが初めてなので、相当良かったと思ってくれ。できるだけネタバレなく話していきます。偉いだろ。

・あらすじ
「その旧家の男子は皆、十二歳で命を落とす――」映像制作会社でディレクターとして働く杉田佑季は、プロデューサーの小隈好生から、モキュメンタリーホラーのプロットを託される。「家にまつわる呪い」のロケのため山梨の旧家で撮影を進める中、同僚で怪談好きのAD・阿南は、今回のフィクションの企画と現実の出来事とのおかしな共通点に気付いていく。そして現場でも子どもの失踪事件が起こり……。日本推理作家協会賞短編部門受賞『夫の骨』著者の最新作!

上記、amazonの紹介にあるあらすじの通り、山梨の田舎の古い家を舞台として進んでいくお話。フェイクドキュメンタリーを撮影するためにその屋敷に向かう車中から始まるのだが、開始5ページでもう先行き怪しい、不穏な展開(作中ほぼ、頭の中の映像はモノクロになるくらい、かなり陰鬱な空気感)。
その後屋敷に到着、そこで前打ち合わせをする段階で、今回の映像企画の台本と、屋敷の中の気持ちの悪いリンクに気がついていく。この辺りからずっと、静かな怖さが続いていく。この後の展開は、実際に読んで欲しいので割愛するけど、ここからは自分が読んで感じたことを話す。

まず、この本、ホラーという大きな枠ではあるけど、そこから細分化させるのが難しいタイプだと思う。例えば怪異系なのか、モキュメンタリーのヒトコワ系なのか、土着信仰?あるいはグロ系なのか呪物系か。
はっきりいうと、今挙げた要素、全てこの作品には入っている。ついでにいうとミステリーというか謎解き要素であったり、明確な伏線回収もあるなどしている。
思うに、最近のホラーは、この要素が必須になってきているんじゃないかなと思う。最近の流行りがモキュメンタリーというところもあるかもしれないけど、僕が子供の頃のホラー・スプラッター映画みたいな、ただ描写がグロい、なんだかよくわからないけどおどろおどろしい、みたいな作品ってもう通用しなくなっていると思う。「ジャンプスケアありません」が宣伝文句になってたりする映画があることからも、間違いないと思う。
個人的に、この数年読んであんまりおもんなかったホラーは共通して、怪異に「納得できない」というのがあった。その怪異が起こることの必然性、説得力が欲しい、というか、面白い作品にはそれが必ずあるよな、と感じていた。当然そんな流れになってるのであれば、ミステリーとの相性はいいし、この作品のように静かに、じんわりと、でも強烈に怖い、キモいというのは、すごく今っぽいホラーだな、と思った。

去年話題になった背筋氏の”近畿地方のある場所について”の、「怪談の集積→そこからの共通点を探っていくホラー」にしても、明確に段階を踏んで、種明かしをしていく形は共通してると思う。

”撮ってはいけない家”はテラーとしての主人公・杉田、探偵役の阿南と、ここだけ切り取ればホームズ的王道ミステリのようにも思える。ホームズよりも何倍もキッショいけど。それもわかりやすさには寄与している気がする。

そして、ラスト。これ、本当すごい。最後の最後まで超ホラーやってる。個人的に、大オチとその直前の描写が一番キモいホラーって初めてかもしれない。それまでも相当キモ描写あったんだけど、それでも超えてきた。
とはいえ、これも、「ヒエッ!!」みたいな声をあげるようなコワさではなくて、「…え…?」みたいなコワさ。結構呆然とした。そこの伏線回収するのか〜!って感じで、ある意味の感動もあった。ちょっと気になってたところでもあったので。

昨日読み終わったあと、勢いでこれを書いてるので、正直まだ考察したいところも多いのだけど、鉄は熱いうちに打て、FANZAは定価で買え、の精神で勢いで書いた。拙くて申し訳ない。
なんとかこの本、売れて欲しい。基本的に、自分が好きになったホラー、だいたい売れると思ってる。”をんごく”、かなり売れてるでしょ、だから言ったろ?

というわけで、これもきっと人気出て、コミカライズされて、映画化されるんだから先に読んでおきな、多分文字で楽しむのが一番怖いと思う。
矢樹純さん、良い作品をありがとうございました。

それでは次回、「徹底考察:古田のスローイングvsスト2倍速チーター春麗の二盗対決」のコラムでお会いしましょう。

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