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空を飛ぶ土竜
2022年1月18日 18:08
迂闊にも自分の老いに気づかず、他人に指摘されて初めてそうなんだと思ったのは、53歳の誕生日だった。もはや誕生日が来たということに特別な感慨があるわけでもなかったのだが、自分が顧問をしているテニス部の女子部員たちがお昼休みにお祝いをしてくれた。昼休みが終わる1分前。授業をする教室に着くと、黒板いっぱいにチョークで大きなHAPPY BIRTHDAYの装飾。待ちかまえていた部員に囲まれ、クラッカ
2022年1月16日 22:02
前話の続きのような話です。荒れる成人式・・そんな時代があったと、平和な成人式の報道を観て思い出してみたりしたことを前話に書いたのであるが、 ただ、本当に平和な時代になったのかと言えば、そうでもない。確かに、生徒たちに尾崎豊の話をすると「もう時代が違う」と言われたりもする。ひょっとすると、ジェームスディーンの理由なき反抗を観せても「もう時代が違う」と言われるのかもしれない。ただ、若者のエネ
2022年1月13日 22:48
高校に入学した当初、毎日が驚きの連続だった。入学式の翌日、上級生と新入生が顔を合わせる式があって、オジサンみたいな生徒会長が出て来てエラク大人っぽい挨拶をしたかと思ったら、後方でいきなりドンという太鼓の音とともに大きな声が発せられ、応援団が校歌を始め、続いて講堂が割れんばかりに全校生徒の声が轟いた。会長の挨拶といい校歌の声といい、入学早々に中学生と高校生の違いを見せつけられた体で、何か異次元の空
2022年1月11日 23:16
今年も成人の日がやって来て、それにあわせて卒業生の来校が増えた。成人式自体は市町村で行われるから、小中学校が集まりの母集団になるが、ついでに高校にも顔を出しておこうということで、2年ぶりに顔を見せる教え子も多い。今年も二人の女生徒が晴着を着てやって来てくれた。コロナで成人式も微妙な情勢だが、高校を卒業して2年、生徒同士も、我々も顔を合わせるにはちょうどいい頃合いになる。18歳成人ということ
2022年1月10日 14:06
昨日はさいと焼きが行われた。いわゆるどんど焼きのことだが、僕の住む地域ではこう呼ばれている。正式には左義長と呼ばれる行事。まず、近くの道祖神に供えられている石を中心に据える。この石は古老によると、火の神らしく、終わるとまた道祖神に戻される。次に、切り出してきた竹に四方から引っ張って支えられるように縄をかけ、石の上にまっすぐに立てる。周りを、刈り落としてあった木々で覆い、全体を縄で結わ
2022年1月8日 18:03
夏が好きな人と冬が好きな人がいるとすれば、僕は後者であった。今と違ってクーラーなどなかったから、夏は、僕にとって汗が体にまとわりつき、幾ら頑張って眠ろうとしても眠れない熱帯夜の、どうしようもなさの記憶でしかない。6月頃になると、これから続く暑い日々を思いやって憂欝になり、いざ夏になれば「暑い、暑い」と一日に何百回も言って、カミさんに顰蹙を買っていた。しかしそれにひきかえ、冬は子供のころか
2022年1月6日 17:52
異文化理解と言えば大げさだ、異文化は身近にもたくさんある。例えば結婚。愛する人と結ばれて、幸せな日々と思いきや、それぞれの背負ってきた文化はすぐさま対立となって現われる。昔の人はよく言ったもので、結婚とはまさしく「異文化の衝突」である。結婚自体が交通事故みたいなものだからそこに摩擦や衝突が起こらぬはずはないわけで、四半世紀を結婚前までに過ごし、その日々に培われたそれぞれの「文化」が、結婚という
2022年1月4日 23:01
いつだったか2年生のクラスの担任をしていた時、修学旅行で四国へ行ったのだが、出掛ける2週間程前に何人かの女生徒が「ブラウス(学校指定)をもう一枚欲しい」と言って来た。「あるもんでいいだろう。わざわざ買わなくたって」と返事をすると「2枚しかないから足りない」と言う。着ているのを含めて3枚しかないと言うのである。「それだけあれば充分じゃないか。身軽な方がいい。たった5日間だから一着は着て行っ