電話の向こうの、たったひとり
息子が冬休み中、いじめのことについてずっと考えていた。
公園でいじめっ子に出くわすのが怖くて外にまったく出なくなった息子。
学校に電話してみたけれど、休み期間中は「またお掛け直しください」と
留守番電話にも繋がらず対応してもらえない。
いろいろ考えあぐねた深夜。
ネットで調べた『24時間いじめ相談ダイヤル』に電話してみることにした。
電話したけれど1回目は話中で繋がらず、2回目で繋がった。
電話口に出たのは気だるそうな年配の女性。
これまでの経緯と、私が不安であることを伝えると
「あ〜、それはですね〜…う〜んと…」カチャカチャ
「まずは〜、学校と話して〜…」カチャカチャ
「そうですね〜…(ため息)、う〜んと…」カチャカチャ
電話口のそばでカチャカチャ音がする。
まるで、コーヒーかお茶でも淹れているような音。
一応私の「声」は聞いてくれているけれど、
「心」を聞いてくれていない感じが
ありありと伝わってくる。
いつもの私ならイラッとするところだが、そんな元気はない。
いいんだ、電話したという事実が大事なんだから。
元々アドバイスなんて期待していない。
でも、もし私が本当の本当に切羽詰まっていたとしたら。
最後の最後にようやく求めた助けだったとしたら。
たぶん最悪の事態になっていただろうと思う。
相談員の方にとっては「たくさんくる相談のひとつ」であって、
「よくある話」なんだと思う。
でも相談する側としてはその相談員がたった一人の「最後の命綱」かもしれない。
私はおそらくもう二度と電話しない。