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漠然とした興味は何から手をつけたらいいか分からない

「なんとなくアートに興味がある!」でこれまで何冊か本を読んできた。

『企業戦略とアート』『アートコレクター入門』『教養としてのアート投資としてのアート』『なぜ人はアートを楽しむように進化したのか』

今こうやって読んできた本を振り返ってみれば、アートを取り巻く状況やアートを分析したものしか読んでこなかった。具体的な作品やアーティストが分からないまま周辺情報を手に入れてきたと言える。

『アートコレクター入門』を読んだのは3ヵ月以上前。そこで紹介されていた『美術手帖』を図書館で発見して読んでいる。

具体的には、以下の4号だ。

この号は「ケアの思想とアート」がテーマになっている。最近、戸谷洋志『生きることは頼ること 「自己責任」から「弱い責任」へ』を読んだ。

ここでは、近代的な「自分の意思と責任を持って行動する」という価値観がいかに危ういかを指摘し、「責任」という言葉が社会に都合のいいように個人に押しつけるものとして使われているかが説明されている。そうではなく、誰かに責任のバトンを渡したり、誰かを頼ったりすることのできる社会を作ることを提言している。

そうした仕組みを説明するためにケアの倫理が登場する。この本で扱われているエヴァ・フェダー・キテイやキャロル・ギリガンといった人物がこの号でも触れられている。


目[mé]というアーティスト集団に焦点を当てた号。

『なぜ人はアートを楽しむように進化したのか』の表紙にもよくわからないおじさんが出ていて気になっていた。この本では一切触れられていない。
(余談。最近になって、本の表紙にはアート作品が使われることも知った。)

そして、たまたま出版区で本書について触れられて、目[mé]というアーティスト集団について知った。ちなみに、『なぜ人はアートを~』の表紙は、代々木公園から撮った「まさゆめ」という作品。

そして、たまたま美術手帖でも偶然に目[mé]の特集号を発見して読んでいる。

この号で語られている目[mé]について私が分かったのは2つ。「クリエイティビティの分配」と「scaper(スケーパー)」。

「クリエイティビティの分配」は分業制度のようなもの。アーティスト業界は一人一人が個人事業主で、0から100までを全てでやらなければならないことが一般的。しかし、そうではなく、個々人が得意な部分を担当することにしている。

目[mé]では主要な3人が、アーティスト、ディレクター、インストーラーと役割分担して動いている。インストーラーとは、作品を展示空間内でどう見せるかを行う役割。しかし、目[mé]では、展示前の設計図がない作品をどうやって自分の中で形に落とし込むのか、という意味で使われているようだ。

「scaper」は景観を表す「scape」に人を表す「-er」をつけた造語。作品だけでなく、そこにある物や人までが作品の一部に思わせるような作品。

たとえば、作品を見ている人もいれば、作品を見る人を見る、というも作品ある。

他にも、「非常にはっきりとわからない」という同じ空間を2つ作り出し、間違い探しをさせるような作品や、「憶測の成立」というコインランドリーの洗濯機の中の奥には別の空間が存在するなど、子ども心をくすぐった楽しい作品も紹介されている。本号を読んで、一度は展示に足を運びたいと思った。


この号は「世界のアーティスト2024」なので、今注目勢いのあるアーティストが紹介されていると思って読んだ。キーワードとしてはザックリと以下のようなことが挙げられる。

黒人、奴隷制度、ベトナム、テクノロジー、東アフリカ、先住民、タイ、社会階級、消費文化、中東、南アフリカ、音、空間、権力、美術の歴史

社会に訴えかけるコンセプチュアルアートのテーマとしてこの辺りがあることを知った。


先住民に焦点の当てた号。日本のアイヌと琉球民族のことも書かれている。正直、沖縄に住む人たちが別人と扱われていたことは知らなかった。

この号は文化人類学的な観点から、何か得られるものがあればと思って読んだ。

と、こうやって書いてみて、ザックリと特集になっていることは、漠然とした興味の理由を言語化して自分の意図に沿った読み方ができているのは分かった。

だけれども、特集以外のページは自分の中でとっかかりがなく、読んでいて内容が入ってこなかった。

たまたま自分の興味のある分野とアートをひもづけて読めたけれども、これがなく、漠然と「◯◯を学びたい!」だと学ぶのがキツいな、と。

まあ、当たり前のことかもしれないけれども、漠然とした興味は学ぶ上での持続力は生まない。瞬間的に手をつけられるかもしれないけれど、「分からないことが分からない」状態ですぐ手詰まりになるような気がする。

今回のように自分の関心のあるテーマと自分が学びたいテーマを結びつけてくれるような機会も珍しい。

何か新しいことを学ぶ上でも、自分と世の中のタイミングが重要なのかもしれない。

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