マガジンのカバー画像

小説あれこれ

35
運営しているクリエイター

#幻想小説

ピエール・ド・マンディアルグ『黒い美術館』

ピエール・ド・マンディアルグ『黒い美術館』

ようこそ黒い美術館へ。血とエロスに溢れたマンディアルグの美の世界を体験してもらうべく、本館の誇るキュレーター、生田耕作が自信を持って選び抜いた5篇を味わっていただきます。

自傷する18歳の女性の白い肌、白い陶器の浴槽と鮮血の赤の対比が印象的な「サビーヌ」、満潮の高まりと主人公が16歳の従妹の口内へ“至福をぶちまける”瞬間が同期する「満潮」、珍しくファルス調の「ビアズレーの墓」もそれぞれ読み応えが

もっとみる
澁澤龍彦『ねむり姫』

澁澤龍彦『ねむり姫』

「珠」と「水」が織りなす6つの怪異譚。

石、鉱物、結晶、卵…かつての澁澤龍彦は硬質なオブジェや観念をコレクションして、エッセイの形式で綴っていました。その〈結晶志向〉の到達点が1974年に刊行された『胡桃の中の世界』。澁澤本人も『私にとっては幸福の星のもとに生まれたと言ってもよいような著書であろう』と述べている著作です。そして、これを境に澁澤は作風を変化させていったのです。

これまでひたすらに

もっとみる
大濱普美子『猫の木のある庭』

大濱普美子『猫の木のある庭』

文学賞にはそれほど関心があるわけではなくて、好きな作家が受賞したと聞けば、ああ良かったな、と思う程度なのですが、新人、ベテラン問わず虚構性を追求した作品に与えられることの多い泉鏡花文学賞は数少ない例外です。

大濱普美子、という名前はこの文庫が出るまで知らなかったのですが、「泉鏡花文学賞受賞作家の第一短編集」であり、さらに解説が「金井美恵子」であるという2点を頼りに手に取りました。結果はもっと彼女

もっとみる