ECの成長とともに歩んできたKOMEHYOとソウルドアウト。オンラインとオフラインの枠を超えた価値提供を目指す。
「日本最大級のリユースデパート」を運営する株式会社コメ兵。インターネットが普及し出した2000年頃からECに参入し、2010年頃に今のECサイトの前身ができたタイミングで、ソウルドアウトとともにデジタルマーケティングの施策に取り組んできました。
編集長のみやたけ(@udon_miyatake)が営業担当の山﨑、広告運用担当の高野とともにお話を伺ってきました!
創業1947年、中古品の買取事業を展開するKOMEHYO
KOMEHYOの顧客体験(CX)の質を高める。オンラインとオフラインを融合させるOMOを推進
─── はじめに、KOMEHYOさんについて教えてください。
諏訪:KOMEHYOは創業1947年で76年目を迎えるリユースショップです。主に、高単価のジュエリーや時計、バッグなど、ブランド品のファッションアイテムを中心に買取と販売を行なっています。
鑑定士による中古品の「買取」と、店舗とオンラインストアでの「販売」に加え、商品価値を高めるための「メンテナンス」や「リメイク」にも注力しています。
─── 諏訪さんの職務内容について教えてください。
諏訪:デジタルマーケティングを中心に担当しています。もともとダイレクトマーケティングを中心に行なってきましたが、OMO(*「Online Merges with Offline」の略、オンラインとオフラインを融合して考えるマーケティング手法)の観点での業務にも取り組んでいます。
直近では、銀座店の移転リニューアルも控えており、KOMEHYOの店舗のあり方を改めて見直しています。お客さまに「KOMEHYOの顧客体験(CX)」を楽しんでもらうためにはどうすればいいのか。オンライン・オフライン問わず、考えています。
─── オンラインとオフラインの垣根を越えて、マーケティング施策に広く取り組まれているんですね。「KOMEHYOの顧客体験」を向上させるため、具体的にどのようなことを行なっているのか教えてください。
諏訪:お客さまがKOMEHYOと繋がる価値を感じられるような取り組みをしています。
例えば、お客さまがKOMEHYOとオンライン上で繋がる価値を提供するために運用している例の一つがLINE公式アカウントです。
KOMEHYOのECサイトでは、新入荷の商品が毎晩9時に更新されます。お客さまの行動を分析したところ、ロイヤルカスタマーほど新着商品を楽しみにされていて、更新時間の10分前、15分前にサイトに来訪し、新入荷情報を待っているということがわかってきたんです。
そこで、LINEの友だち登録の際に、好きなブランドやカテゴリを選んでもらう仕組みをつくりました。対象商品が出品されると、LINEですぐに通知が届くようにしたんです。実はこれはソウルドアウトさんからご提案いただき、取り入れた仕組みです。
─── お客さまの行動データを分析してできた仕組みなんですね。
諏訪:はい、オンラインで取得した行動データを、店舗での接客に活用するという取り組みも進めています。
例えば、お客さまがオンラインで来店予約をする際、必要な情報に加え、オンラインストアでの行動データからわかる情報をもとに、どのようなニーズをもっているのかを店舗スタッフが予測できるようになっています。
事前に準備ができるので、スタッフはお客さまそれぞれに合った提案ができますし、お客さまは、「自分のことをわかってくれている」と感じてくださるかもしれません。お客様が店舗スタッフから受け取るサービスや提案の中に、KOMEHYOの顧客体験の価値があるんです。
─── 最終的には、店舗スタッフとお客さまが繋がっていくイメージですね。
諏訪:そうです。店舗スタッフは、来店されるお客さまからご指名いただくことがよくあります。私も入社当初に店舗で商品の査定や買取を担当していたとき、「諏訪さんにお願いしたい」「諏訪さんが出勤のときに行く」などとおっしゃってくださる方がいました。
店舗スタッフとお客さまが繋がることは、顧客体験の向上に繋がると考えています。集約した行動データを活かして、どういった価値をお届けできるのか今後も模索していきます。
デジタルマーケティングの最先端を行くKOMEHYO
ECへの参入は2000年代から。現在はCookieレス対策に注力
───業界の中でもかなり早い段階からデジタル施策に注力してきている印象があります。
諏訪:ECへの参入は2000年頃だったと思います。当時は、ジュエリー、時計、バッグと、商材ごとに部署が分かれていて、それぞれが独自のECサイトを管理していました。
2010年頃になって機能別組織への移行が計画される中、それらを一つに集約したECサイトを立ち上げました。それと同時に、各部署のECサイト担当者をまとめてデジタル専門の組織をつくり、デジタル施策に注力し始めたという経緯です。ソウルドアウトさんと出会って、広告の出稿を開始したのもこの時期でした。
─── ECサイトの立ち上げからご一緒させていただき、10年以上も経つんですね。2018年には、Google Partnersが主催するPremier Partner Awards 2018において、Search Innovation Award(検索広告部門)を受賞しました。
─── ソウルドアウトとは「販売」と「買取」のプロモーション施策に取り組んでいるんですよね。ECサイトの「販売」プロモーションでは、直近どのようなことに注力していますか?
諏訪:Cookie規制に対する取り組みを強化しています。昨年末から広告費を大幅に増額し、検証を重ねている段階です。
山﨑:これまでは、Google ショッピング広告やCriteoの配信をメインで行なってきました。しかし3rd party Cookieの規制が厳しくなり、ターゲティング精度が落ちてしまう、リターゲティングができなくなる、といった問題がでてくることが予想されています。ですので、それ以外の広告配信方法で新たな獲得の柱となるものを探している最中です。
高野:実際、Apple社のITPの影響もあって、Criteoの実績は昨年対比でGoogle Analytics上のROASが半減近くまで落ち込みました。ほかの媒体でも、効果の悪化がみられています。
─── 具体的にはどのような施策を行なっているのでしょうか?
山﨑:Yahoo!のディスプレイ広告では、「自社広告クリッカーターゲティング」というターゲティング方法で配信を始めました。Yahoo!広告をクリックしたユーザーをターゲティングするもので、Cookieではなく広告識別子を情報取得元とするもので、リターゲティングを補完できると期待しています。
高野:リターゲティングの配信とはターゲティングできる階層が違うこともあり、導入後すぐには成果を出せずにいましたが、なんとか改善して効率のよい運用ができるようになりました。
山﨑:また、データを活用した配信方法も検証しています。例えば、「データマーケティングソリューション(DMS)」という、ヤフーさんがもつサービスにおける膨大な行動データに基づいて提供されるソリューションや、今後は、KOMEHYOさんがもつデータと連携した「カスタマーマッチ」のターゲティングも試してみたいと考えています。諏訪さんと相談して進めているところです。
─── Cookie規制の対策に注力しているんですね。ほかに広告運用で工夫していることを教えてください!
高野:配信媒体の最新の機械学習がきちんと働くように運用することです。最近では特にGoogleのアップデートが多く、社内外で共有される最新情報を常にチェックしておくように心がけています。
中でも、ここ半年ほどで最も成果があがっているのがGoogleの一般ワードの検索広告です。もともと検索広告では、効率のよい配信をしたいと考え、指名キーワードを部分一致で拡張させる配信のみを実施していました。そんな中でGoogle広告のアップデートを受け、一般キーワードも部分一致で追加したところ、フレーズ一致や完全一致で配信するよりも成果が高く、現在では安定して広告経由の売上拡大に貢献できています。
広告領域を超えて課題解決に取り組む
─── ほかにはどのような取り組みをされていますか?
山﨑:KOMEHYOさんの素晴らしいところはやはり、店舗スタッフさんの接客だと思っています。同じような体験をオンラインでもできないか、というご相談をいただき、KOMEHYOさんの顧客体験の価値を示せる動画をつくりたいと考えました。
KOMEHYOさんの世界観を大切にしながら、オンラインとオフラインを融合させるというコンセプトをもとに、店舗とお客さまがオンラインで繋がるイメージを映像化しています。
─── 実際のお悩みを聞き、そこから動画制作に繋がったんですね。毎週の打ち合わせでは、どのような話をしていますか?
山﨑:最近では、売上との相関をみながら「買取」プロモーションの広告はやる意味はあるのだろうか、といったことを諏訪さん含めKOMEHYOさんの担当の方たちと考え直しています。
SEOの打ち合わせの際、「KOMEHYO」などの指名キーワードと地域やブランドをかけ合わせたキーワードのページはほとんどが上位に表示されている一方、一般キーワードではまだ上位に表示されていないことに気が付いたんです。
これまで広告では、指名キーワードを死守する方針で配信していました。しかし、現状の課題は「新規顧客の来店数増加」であると改めて伺い、広告は一部の指名キーワードを除いてすべて一般キーワードでの配信を行ない、SEOでアプローチしきれていないユーザーにも広告を配信できる構成に変更しました。SEOと広告のどちらも私たちソウルドアウト経由でご支援させていただいているので実現できた施策です。
現状の課題やご意向をしっかりとお伺いした上で施策の提案をするように心がけています。また、関連する良い情報があれば積極的に共有するようにしていますね。
─── 高野さんが広告運用で大切にしていることはありますか?
高野:ついつい目の前の数字にとらわれてしまいがちなのですが、一般の生活者の目線を忘れないように心がけています。自宅にポスティングされているチラシから、競合他社のプロモーションの様子や訴求内容、トレンドなど、気づいたことを共有し、広告運用に活かすこともあります。
─── デジタル広告という枠を超えて、両社で協力して課題解決に取り組んでいるんですね。
諏訪:売上は毎年伸びていますし、ECサイトへの流入も増加しています。もちろん、広告にかける予算にも相関していますが。
今後はECサイトをさらに強くしていきたいと思っているので、広告にも力を入れていく予定です。これまでKOMEHYOはいろいろなECモールへの出店を行なってきました。しかし、お客様に様々な体験を届けたいと思っていても、ECモールでは制限もあって難しく。ECモールの大切さも理解しているのですが、お客さまにはKOMEHYOのECサイトに来てもらい、顧客体験の価値を感じていただきたいです。
ソウルドアウトとともに成長してきたKOMEHYOのEC
─── これまでソウルドアウトとは10年以上取り組みを続けてきました。ソウルドアウトに対する印象を教えてください!
諏訪:どこまでも本当に寄り添ってくれるパートナーだと思っています。結果が出ていることももちろんですが、それよりももっと広い意味で寄り添ってくれていると感じていますね。
─── ありがとうございます。何か印象に残っているエピソードはありますか?
諏訪:かなり前ですが、ソウルドアウトさんの東京本社を訪問したことがありました。私たちKOMEHYOの担当者は、朝早い時間から夜の10時過ぎまで一つの会議室にずっと缶詰。その部屋に、Web関連の企業が出入りを繰り返して、一つ終わると「はい、次どうぞ」という感じで、提案や報告をいただきました(笑)。
山﨑:おもしろいですね。初めて聞きました(笑)。
諏訪:2010年頃のECサイトは、ソウルドアウトさん経由で整えていったといっても過言ではありません。サイト内のSEO対策やレコメンド機能など、あらゆる企業を紹介していただきました。Web関連以外でも、流通系など、KOMEHYOの事業に関わる様々な企業を繋いでくれました。そこから協業が生まれ、事業を拡大でき、今のKOMEHYOがあります。
─── 「広い意味での寄り添い」というのは、Webだけではなく事業成長にも貢献してきたということですね。では、現在の担当二人に対する印象を教えてください!
諏訪:山﨑さんは、実家がジュエリーのお店をやっているとお伺いして、かなり親近感を抱いています。メールや電話への返事はとても早いですし、丁寧に答えてくださいますね。正直でまっすぐな方だと思っています。
高野さんは、本当に的確でロジカルな人。社内に高野さんのようなタイプの方がいないので、とても新鮮です。ここまでしっかりとした説明をしてくれる広告運用者に初めて出会いましたし、安心してお任せできています。
山﨑・高野:ありがとうございます!
KOMEHYOとソウルドアウトで描く未来
オンライン・オフラインを融合させたOMOに取り組む
─── 最後に、今後ソウルドアウトとともに取り組んでいきたいことを教えてください。
諏訪:私のミッションは「OMO」の領域です。ソウルドアウトさんとは、オンライン・オフライン問わず、広く一緒に取り組んでいきたいと思っています。
また直近、社内では事業ドメインを見直す動きもあります。会社として目指すべきはどこなのか、何なのかといったことがとても大事な時代になってきているとも感じています。私たちの想いをソウルドアウトさんとも共有して、一緒に未来をつくっていきたいです!
─── ありがとうございます。ソウルドアウトの二人はいかがでしょうか?
山﨑:私たちソウルドアウトは、4月から博報堂DYグループの一員となりました。そのアセットも活かして、マスとデジタルを連動させた施策にも挑戦し、OMOを推進していきたいです。
また、KOMEHYOさんでは、CDP(顧客データ基盤)を構築し、非常に膨大なデータを蓄積されています。その活用を考え、企業の成長に貢献していきたいです。
高野:ジャンルを超えたデータの掛け合わせをして、化学反応というか、おもしろい施策に取り組んでいきたいです。すごくわくわくしますね。これからもよろしくお願いします!
編集後記
インタビューの少し前、たまたま「セブンルール」というテレビ番組で、コメ兵さんの鑑定士の方が取り上げられているのを拝見していました。デジタルに力を入れている中で、根底には「顧客体験の質の向上」があるということを、インタビューを通じて強く感じました。
*KOMEHYOさんのTwitter(@komehyo_online)はこちら!
【インタビュー・執筆:みやたけ(@udon_miyatake)】
*お客さまとの対談コンテンツは、下記のマガジンにまとめています!