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福祉業界に理系的な思考を

僕は工業系の学校を卒業した後、製造業で技術職に就きました。理系の人ってイメージが強いかもしれないけど、実は福祉業界で7年以上働いてます。

はじめは「ここは理系と全然違うから、考え方を変えないといけない」と思って、周りの先輩方の考え方を習っていたけど、業界内でもリケジョで素敵な先輩に出会うことが意外とあって、そのうちに「実はここも結構、理系的思考が求められるんじゃないかな」と感じるようになっていたのです。

それがここに来て確信に至りました。当事者支援の基本、相談援助では相手の心や状況を汲み取るために、理系的思考が欠かせないと気付いたのです。

相談援助って、当事者が直面する様々な問題に対してアドバイスや指導をするサポートのことです。心の健康や生活の問題、福祉サービスや制度の利用など、いろんな面でサポートするのが相談援助です。

それには、社会学や心理学、医学などのいろんな知識が必要で、それらを組み合わせて当事者の問題に向き合うには、高度な理解力も必要になります。

それはどうしてか?
当事者が抱える問題はほとんどが複雑で不確実で曖昧なんです。まさに、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったVUCA(ブーカ)ってやつですよ。

相談援助では、支援者は当事者の問題に寄り添って、一緒に解決策を見つける手助けをするわけです。でもこれにはVUCAな話を整理する力と、当事者のVUCAな気持ちを考える力と、理解しやすく伝える力が必要なんです。

VUCAな問題に向き合うと脳がすごく疲れるのは誰でも一緒だけど、福祉の支援者はそれに耐えないと務まりません。脳が不確実性に耐えられないと、支援者個人の経験と感覚に偏った独善的な支援に陥ってしまうのです。

支援が独善的になると、当事者の個性を大切にすることがおろそかになり、「自分の状況を理解してくれた」という当事者の安心も難しくなります。だから、相談援助には、相手を理解するエンパシーが重要になるんです。

シンパシーとエンパシーの違いを簡単に言うと、こんな感じです。

  • シンパシーは「同情」で、感覚的な「わかる〜♪」

  • エンパシーは「共感」で、思考的な「(言ってることは)分かる」

例えば、罪を犯した人を支援する時、行為自体へのシンパシーが無くても、当事者の話を丁寧に聞けばエンパシーで理解することは可能です。それだけ他者理解にはエンパシーが有効で、それには理系的な思考が求められます。

そもそも心理学って英語でPhycology(サイコロジー)だし、心理的はPsychological (サイコロジカル)ですね。サイコは心で、ロジカルは論理的。そりゃ心理学も精神保健も医学のように”理”系な考え方が当然必要だ、とやっとわかりました。

日本初のユング派分析家で、心理療法を広めた河合隼雄先生も、数学教師から臨床心理学者になるまでに、理系的な思考が役立ったかもしれませんね。

他者理解にはエンパシーが必要で、エンパシーには理系的な思考が必要。

福祉業界に理系な考え方がもっと増えるといいな。

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