2023年12月末。 実家に帰省した際に母から、父が仕事の関係で海外出張することを告げられた。 僕は率直に驚いた。 この歳で?と。 僕の父は、今年で62歳になる。 定年退職までは大体3年ほど。 バリバリ現役で仕事をするというよりは、退職まで穏やかに今の会社で働くのだろうと、心のどこかで思っていた。 気になったので、母に尋ねてみた。 「どこに?」 「メキシコだって」 「どのくらい?」 「2年」 62歳で、メキシコ。 しかも2年。 日本語はもちろんのこと英語
僕の母校の高校には「キャンパスツアー」なるものがある。 簡単に言うと、高校1年生の11月にクラスみんなで東京に出かけて、大学をいくつか回ってみようという企画だ。 僕の大学にもツアーの一環で訪れるので構内を案内してほしいと、高三の頃の担任から依頼があった。 いざ大量の高校生を目の当たりにすると、その若さに眩しさを覚えつつ、実感の伴わない時間経過の速度に酔いそうになった。 けれど彼ら彼女らから感じたのは、若さだけではなかった。 構内を案内している途中、数人の生徒が僕に尋ね
サークル終わりのファミレスで晩御飯を食べている時に聞いた、ある後輩の発言が僕の頭の中に引っ掛かっていた。 「中高一貫でそのまま大学に入るっていうレールが気づいたら目の前にあったので、一旦自分の人生がこれでいいのか振り返る時期があったんですよ」 その後輩曰く、今の学部学科とは全く違うことを勉強して、突拍子もない進路変更を企んだことがあるらしい。 なぜこの言葉が印象に残っていたのか。 それは、僕にも思い当たる節があったからだ。 僕が大学一年生の頃、世の中はコロナ禍真っ只
友人が映画を勧めてきた時の謳い文句はこうだった。 「映像がね、めっちゃ綺麗なの」 映画の感想として、映像の綺麗さについて触れられるのは初めてだった。 その友達はよく写真や映像を撮るので、映画を見ていても光の調節であったりとか、色味の統一感などに目を向けるのだそう。 自分が作っているからこそ、長時間の映像作品の中で、統一された見せ方を維持するすごさを考えるらしい。 僕は映画を見る時、あるいはお勧めする時、物語のストーリーや主人公の性格、人間関係について注目する。 小
先日、体調を崩した。 一歩も家から出る必要がなかったので検温はしなかったが、確実に発熱していたという感覚はあった。 怖かったので、「ここまで快調ならもう熱はないだろう」と思えるくらいの状態になるまでひたすら寝た。 結果、数値上での発熱は観測されなかった。 よって、僕は熱など出していない。 と強がってみたいところだが、情けないくらいダウンしていたのは紛れもない事実である。 僕は、昔から頻繁に体調を崩す。 健康上での身体のスペックが、なかなかに見劣りするのである。
本というのは、すごくめんどくさい。 まず読むのがめんどくさい。 映画やアニメのように「決められた時間」でかっちり終わってくれる訳もなく、音楽のようにBGMにして受動的に楽しむこともできない。 あと、リピートするのもめんどくさい。 気に入った音楽なら、1時間の間に何度も繰り返し再生できるし、サビだけ聴いたりとかも簡単にできる。 対する本は、あのフレーズは何ページの何行で、みたいにして遡った上で、前後の文脈を思い出す必要がある。 それと、共有するのがめんどくさい。 正直、こ
大学院入試に、合格した。 併願校もなく、就活という選択肢が頭の片隅にもなかった僕は、不合格だった場合お先真っ暗コースに突入する可能性があったので、発表された合格者番号に自分の受験番号があった時は心の底から安堵した。 僕の進学する先は、5年一貫性博士課程というコースになっている。 大学院というところは、前期課程(修士課程)と呼ばれる2年間と、後期課程(博士課程)と呼ばれる3年間で成り立っている。 2年で卒業すれば、最終的な学位は修士。 もう3年頑張って無事に卒業できれば
運転免許を取得してから、3回目の誕生日。 ついに初回免許更新のタイミングがやってきた。 なんとか無事故無違反でここまでやってこられたので、本免試験以来の調布試験場である。 免許の更新は昨日済ませてきた。 僕の誕生日は6月末であり、更新期間はその前後1ヶ月なので、実を言うとものすごくギリギリのタイミングだったのだ。 ただでさえギリギリのタイミングにもかかわらず、選んだ講習の時間帯はその日の1番最後、午後に行われる時間帯だ。 そんな怠惰な僕の様子に、神もお怒りだったのだろ
大阪での研究室インターンを終えて、東京に帰ってきた。 今は久々に会った友達とご飯を食べに行ったり、3ヶ月もシフトに入らないことをさらっと受け入れてくれたバイト先にお土産を置きにいったりと、東京でのウイニングランを少しばかり楽しんでいる。 とはいえ月末には院試が控えているし、卒業研究にも取り組まなければならないので、楽しんでいるところも早々にウイニングランは引き上げねばならないのだが。 大阪では、いろいろな経験をした。 まず、実験をした。 ただ実際に実験をしていたのは最
「あの世から帰ってきたよ」 3月某日、祖父からLINEが来た。 なんのことだかさっぱりわからなかった。 ぐるぐる頭を回してみても、熱海とあの世を打ち間違えたという奇怪な可能性しか浮かんでこない。 トーク画面をスクショして母に確認してみた。 「じいちゃん、なんかあったの?」 母はすぐ既読をつけた後、なかなか返事を寄越さなかった。 きっと、返答に困っているのだろう。 しばらくして返ってきた文面を見るに、どうやら血液の病気で一時は心臓が止まってしまったが、蘇生してなん
大阪に来てから、まともな事を書いていただろうか。 学科の同級生から思いがけず「note読んでるよ」と言ってもらってから、恥ずかしくなって見返してみた。 別に見られて困る事も書いていないし、困るくらい恥ずかしいことも書いていこうと少し前から決めているのでいいのだが、突然「見てますから」通告をされると妙に毛穴が引き締まる気がする。 どうやら意外と読んでくれている人が多いようで。 ここらで一度、格好が付きそうなことでも書いてみようと思う。 先日、現在滞在中の研究所の所長に挨
久しぶりに、滞在先の大阪から東京に帰った。 やはり住み慣れた街というのは居心地が良いもので、最寄駅から自宅までの帰り道を歩いているだけで、本当に帰ってきたのだという奇妙な新鮮さと、味わい深い懐かしさが込み上げてくる。 しかし言っておくがこの男、静岡の田舎の出身である。 決して、東京がホームタウンという訳ではない。 家に着き扉を開けると、しばらく空けていたが故のよそよそしさと、ほんの少しの懐かしさを含んだ空気が僕を出迎える。 カバンを置き一息つくと、あぁやっぱりこれが我
風呂に入りたい。 心の中でそんな熱い思いが煮えるように沸き立ってきた。 心配しないでほしいのだが、別に今僕が雨ざらしのまま野宿しているとか、人目のつかないどこかに監禁されていて、自由に風呂も入れないという訳ではない。 一応名誉のために補足しておくと、毎日シャワーは浴びている。 今は大阪に滞在中で、大学側が用意してくれている宿泊施設で生活しているのだが、先週の月曜日に部屋を移ることになった。 僕が元々割り当てられていた部屋はどういう訳か家族用の部屋で、浴室もそれはまぁ
電子書籍リーダーを買った。 大阪に来て1ヶ月ほどが経ち、そろそろ新しい本を買いたいと思っていた頃。 でも余計な荷物を増やして帰る頃には荷物がパンパンなんてことになったらめんどくさい。 スマホにKindleのアプリは入っているものの、LINEの通知が来たり、その他のアプリに気が散ってしまったりして、なかなか読書に集中できない。 あと画面が小さく長時間見続けるには明るすぎるので、目が疲れてしまう。 ならば。 思い切ってKindleの電子書籍リーダーを買うことにした。 少
研究室という空間はおそらく、中で何が行われているのかわからない部屋ランキング第1位だと思う。 ちなみに個人的第2位は視聴覚室である。 きっと何をしているのかわからない人が多いだろうし、誰にも見られる事なく淡々と作業をしているだけでは僕も寂しい。 と言うことで、僕が先週まで取り組んでいたことの一部を少し書いてみる。 研究室で行う作業は基本的には個人で黙々と手を動かすのみなので、1日を通して挨拶以外に一言も発さず帰ることもある。 じゃあ何をそんなに1人でやっているのかと
大阪に来て、3週間ほどが経つ。 僕のnoteを毎週読んでくれている人たちは、もうこの書き出しにも飽きていることだろう。 安心してほしい。 僕も飽きている。 ところで、僕の下宿先の話をしよう。 僕の下宿先はほとんど大学の近くにあって、どの辺にあるかというと、吹田市と茨木市の間くらいにある。 失礼。 大阪の地理に疎い方にはわからない表現だったかもしれない。 馴染みのない土地で浮き足立っている男の悪ふざけだと思って、目を瞑っていただきたい。 ざっくり言ってしまうと、大阪