怒りを鎮める〜手帳の佇まい(15)
先日、会社の仲間と
アンガーマネジメントの話をした。
彼は相手の言動に少しでも違和感、
理不尽や不条理があると許せず、
条件反射で、言葉という怒りの弾丸を
発射してしまうのだ。
言葉という「竹刀」で叩き、
畳み掛け、やり込めてしまうという。
しかもその時間が長い。
彼は、自覚しているのだ。
自分が癇癪持ちであることを。
例えば、上司であれば、
指示した通りに部下が動いてくれないと
「俺を軽んじている、なめてるな」
と怒り心頭に発する。完全な思い癖。
アンガーマネジメントでは
「かっときたら6秒待つ」など
様々な方法があると言われている。
心を「無」にして、わだかまり無く、
虚心坦懐、豪放磊落でいたいもの。
そのほうがラクなはずだ。
怒りの感情は、対人関係を亀裂させ、
周囲の心の環境を汚染するだけでなく、
自分の血流を悪化させ血圧を上昇させる。
何ひとつ良いことはない。
僕も随分とこのテーマでは葛藤し、
自分なりに研究してきた。
僕の対処方法はいくつかあるが
ここ数年で最も効果があるのは
「相手のその言動は、故意ではない」
と思い定めること。
要は、僕を怒らせるために
戦いを挑むべく、わざわざ彼、彼女が
仕掛けてきたものではないなら、
心穏やかに諌め、あるいは放念し、
接していこうと。
彼、彼女なりの事情や考え方があるはず。
よしんば、怒らせるための仕業でも
その挑戦に乗らないのが兵法、
大人の所作、立ち居振る舞いというもの。
大切なのは「故意でない」以外の、
他の解釈を加えないこと。
足せば、濁る。
ところで、そんな着火しそうな怒りを
まるっと包み込んでくれる手帳がある。
その手帳との出会いは
二十数年前、銀座の伊東屋さん。
今の本店が改装する以前は、
階段しかなく、それがまた良かった。
「今日はどんな文具との出会いが
待っているか」と、ワクワクしながら
一段ごと、急ぎ足で上っていったもの。
そんな先で穏やかな佇まいで
待っていてくれたのが
このfILOFAXのSTRATFORD(ストラッドフォード)。
この手帳に心奪われたのは
見開きページが180度開くこと。
力を入れずにパタンと、気持ち良い。
抱く言葉は「オープンハート」だ。
当時のシステム手帳は、頑丈でタフな分、
その構造上、ボディが硬く、
180度開いた状態の固定は難しかった。
しかもこのストラッドフォードは、
柔らかいのである。それでいて丈夫、
25ミリ径で大量のリフィルが収納可能、
クラシカルな上品さもある。
穏やかな風貌、
包容力と頼り甲斐がある。
しかも品が良い。
二十数年前、自分にないものを
持っているストラッドフォードに
惹かれたのだ。
歳を重ねたところで、
人はそう簡単には変われない。
でも、この手帳に触れるたび、
心を鎮められる自分がいる。
今ではこの手帳は
なかなか手に入らないかも。
そういう意味でも、大切な逸品。
勿論、怒りの感情をどんどん書き込み、
言語化することで、
その実態を明らかにする場としても
手帳は活躍してくれる。
そして、またも手帳に救われる。