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なにものでもない話
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#雑記

031 だからきっと、私はもう還れないのだった

031 だからきっと、私はもう還れないのだった

 街灯ひとつないような田舎で東京のラブソングを聞いて、意味なんて一つも分からないまま大人になった。街が光る分、星は手を抜いているらしい。三百六十度の夜空は幅六メートルになって、北斗七星を探す癖はとっくの昔に喪失した。雨で湿った土の匂いが、びしょ濡れのコンクリートの匂いに変わった。好きだったわけじゃなかったから、別に良いけど。
 何もないと笑って話したけど、何もないところが好きだった。死ねばいつか自

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013 感情の形を味を知りたいよ

013 感情の形を味を知りたいよ

感情をいちいち切り取って分解して言語化して噛み砕いて飲み込んで消化していたようなあの頃は、喜びは二倍に、苦しみは三倍に感じられて、確かに苦しかったが言葉だけは多彩だったような気がする。今となっては傷つくことも少なくなったけれど、嬉しいことも浅くなって、更にはそれをよくよく考えもしないから、数日経てば記憶にも残らない。どんな感情だったのか、どんな言葉で表せられるのか、欠片しか思い出せなくて同じような

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012 当たり前の顔をしてそばに居ないでね、それって絶対特別なんだから

012 当たり前の顔をしてそばに居ないでね、それって絶対特別なんだから

(年末の話を今更上げました。)

年末なので大掃除を始めた。きっとマメな人は毎日きちんと掃除をしているから、大掃除で苦労することはないのだろうな。ズボラにクイックワイパーを週に一回かけるだけじゃあ、いざよく見るとあちこちの汚れが気になって仕方がなくなる。目が悪いせいにするけれど、遠目では分からないのだから生活に困らない気もするが、いやいや、気持ちよさの問題だな。マメに掃除をする気力が欲しい。

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007 自己肯定感って難しい

007 自己肯定感って難しい

自己肯定感って難しい。初めはてっきり自分の悪いところも好きになろう!と言っているのだと思っていた。認めるということは良いものとするという意味なのだろうと。私はおっちょこちょいだけれどそこが可愛いわ、と嫌いな部分も愛してやることだと思った。そもそも愛するとはどういうことなのかも分からないままだが、とにかくそういうことだと思った。
だから認めてやった。自分は弱い。弱いのだと分かった。気づくことができた

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