佐藤

在り来たりでくだらなく愛しくて寂しい私の物語たちへ

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  • おそらく恋みたいな話

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  • 5年ほど鬱々と生きていた話

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あの人、きっと、可哀想な人だった、今の人みたいに余裕もなくて、今の人みたいに優しくもなくて、それでもタバコの匂いが染みついた指先は甘やかだった、そこにだけ愛があって、そこにしか愛がなくて、やっぱり、ひどく、可哀想な人だった

    • そんな話ではじまる、あの夏の日の記憶だ

      あの夏が飽和する。/カンザキイオリ

      • 冷めていくのを感じていた 目を見ないで返事をしてスマホばかり触っていた 何してるの?に別に?と返す君の声はあの頃とは別人みたいで 覚めていくのを感じていた

        • 032 彩度の高い夏が嫌いだ

          六月某日。夜はまだティシャツ一枚じゃ肌寒くて、寒い寒いと燥ぐ隣でパーカーくらい着てくればよかったねと腕をさすった。一歩先、振り返って「温めましょうか?」と腕を広げて見せる君に、「公道ですので遠慮します」と返しながら追い抜く。「フラれた〜」と結局後ろから抱き締められて、歩き辛いと文句を言いながらふたりで笑った。買ったばかりのアイスがビニール袋越しに素肌に触れて、冷たいはずなのに丁度よく感じた。暖かかった。貴方がいれば暑いほどだった。 七月某日。あまりの暑さにもう部屋から出たく

        • あの人、きっと、可哀想な人だった、今の人みたいに余裕もなくて、今の人みたいに優しくもなくて、それでもタバコの匂いが染みついた指先は甘やかだった、そこにだけ愛があって、そこにしか愛がなくて、やっぱり、ひどく、可哀想な人だった

        • そんな話ではじまる、あの夏の日の記憶だ

        • 冷めていくのを感じていた 目を見ないで返事をしてスマホばかり触っていた 何してるの?に別に?と返す君の声はあの頃とは別人みたいで 覚めていくのを感じていた

        • 032 彩度の高い夏が嫌いだ

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        • 7本

        記事

          寂しがり屋の君が、何でもないよと笑った

          その優しさが君を傷付けていませんように

          寂しがり屋の君が、何でもないよと笑った

          031 だからきっと、私はもう還れないのだった

           街灯ひとつないような田舎で東京のラブソングを聞いて、意味なんて一つも分からないまま大人になった。街が光る分、星は手を抜いているらしい。三百六十度の夜空は幅六メートルになって、北斗七星を探す癖はとっくの昔に喪失した。雨で湿った土の匂いが、びしょ濡れのコンクリートの匂いに変わった。好きだったわけじゃなかったから、別に良いけど。  何もないと笑って話したけど、何もないところが好きだった。死ねばいつか自然に還るのが当然のような顔をしているところが好きだった。でも、あの人を選んだ。あ

          031 だからきっと、私はもう還れないのだった

          030 ああ、また君のことを書いてる

          ああ、また君のことを書いてる。 届かない方がいいような手紙を電子の海に流しては、誰かのハートを貰ったりして、世の中には似たような人が沢山いるんだね。静かにほったらかして別れの言葉ひとつ吐かずに、憎しみの言葉ひとつかけれずに、去っていくような酷い人。 この世が心正しい人ばかりになってくれれば、誰も傷つかないだろうか。いっそ私が一番醜く思えて生きるのが苦しくなるのだろうか。肺が汚れていくにつれて人としても汚れていく気がしていた。辞めたところで染みついた煙は一生残るような気がし

          030 ああ、また君のことを書いてる

          029 ああ、そうだ、早く宝くじで一億当たりますように

          卵子凍結しました、なんてお金持ちだけの話なんじゃない?今でも。少しずつ色々な整備が整って、不妊治療も保険適用になった部分が増えたね。それでも結局すべてにお金はかかるわけで、お金が空から降ってきてくれればいいのに〜ってそんなことみんな考えてるか。 別に結婚や出産だけがすべてじゃないけどさ、なんとなくタイムリミットみたいなものが迫ってきていつか崖から落ちてしまいそうな気持ちになる。ここから落ちたら社会的に死ぬのかな?これでも少し緩和されたんだろうけど、田舎はまだまだ根強いよ。生き

          029 ああ、そうだ、早く宝くじで一億当たりますように

          冬の淡さは君の優しさに少しだけ似ている

          さよならを、告げよう

          冬の淡さは君の優しさに少しだけ似ている

          寂しくて、仕方がなくて、誰でもいいからそばに居てと望んだ。若い女はきっとそれだけで価値があった。彼氏じゃない人と触れ合って、『なんだこんなに簡単なことか』と思った。「好きな人じゃないとキスなんて出来ない」そう言って頬を赤らめた純情な私はあの日死んだ。

          寂しくて、仕方がなくて、誰でもいいからそばに居てと望んだ。若い女はきっとそれだけで価値があった。彼氏じゃない人と触れ合って、『なんだこんなに簡単なことか』と思った。「好きな人じゃないとキスなんて出来ない」そう言って頬を赤らめた純情な私はあの日死んだ。

          今年出会えた皆様、今年も読んでくださった皆様、ありがとうございました 来年はどうなるだろうね、少しでもしあわせで在りたいね、よいお年をね

          今年出会えた皆様、今年も読んでくださった皆様、ありがとうございました 来年はどうなるだろうね、少しでもしあわせで在りたいね、よいお年をね

          028 あれだけの感傷も絶望も後悔も愛も恋も

          朝目覚めるたび、覚えてもいない夢の中へ何かを置いてきてしまった気になるんだ。皮膚だとかまつ毛みたいに、毎日新たなわたしが作られてはあの日のわたしが剥がれ落ちてゆく気がしている。痛みもない。それは喜ぶべきことなのかどうかも分からない。昔は瘡蓋みたいに剥がせばちゃんと痛くて、ちゃんと血だって流したのにね。ねぇ、ちゃんと、って何だろう。痛くなかったらちゃんとしてないのかな。あれ。何が言いたかったんだっけ。私はもうすでにあの日と同じ熱量であなたのことを思い出せなくなった。きっとあなた

          028 あれだけの感傷も絶望も後悔も愛も恋も

          私の細胞が毎日生まれ変わってそうして何十年も経ってあの頃の私がかけらも残らずこの世からいなくなってしまったら、それでも、あなたは私のことが好きだとそう言い切れますか。

          私の細胞が毎日生まれ変わってそうして何十年も経ってあの頃の私がかけらも残らずこの世からいなくなってしまったら、それでも、あなたは私のことが好きだとそう言い切れますか。

          あなたの寝息を聞いてはじめてそばにいるということを実感する。幸せは当たり前ではないことを、私たちはよく知っている。

          あなたの寝息を聞いてはじめてそばにいるということを実感する。幸せは当たり前ではないことを、私たちはよく知っている。

          027 無責任に、烏滸がましく、あなたの幸せを祈っている

          「わたしのこと、ほんとうにすき?」 画面の中の少女がそう問いかける。好きだよ、と答えてハッピーエンド。めでたしめでたしよかったね。でもそれ、ほんと?ほんとうってほんとなの?ドラマでも漫画でもよく聞くこの台詞を最近自分に問いかけている。私、あの人のこと、ほんとうにすきだったのでしょうか。 結局のところ『ほんとうにすき』ってなんだろう。何を持っていれば、どんな感情を持ち合わせていれば、ほんとうだと言えるのだろう。キスもセックスも好きだよなんて台詞も、私、気持ちがなくてもできるっ

          027 無責任に、烏滸がましく、あなたの幸せを祈っている

          026 死にたいわけじゃないのに死にたい

          ☟ previous ☟ 幼い頃から考えてみても、私は自分のことが好きだったわけではない。しかし決して嫌いで嫌いで自分を許せないほどでもなかった。けれどこの自称鬱状態というものになった日からは、私という人間をとにかく否定したい思考に囚われてしまった。少なからず休職という事実がそれを後押ししていた。働かずに給料をもらう。休んで生活する。とんでもない罪に思えた。(それでも休まずにいられたとも思えない。) それは日に日に増した。初めは自分は弱い人間だと思う程度だったのに、徐々にこ

          026 死にたいわけじゃないのに死にたい