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ささぶね【ゆったり共同運営マガジン】

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「ほんとうに素敵だなあ」という方たちといっしょに運営しています、ちいさな文芸部あるいは同好会みたいな場所です。 マガジンに入れてアップしたら、お互いにコメントをそっと無理なく送…
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#物語

初恋 #ウミネコ文庫応募

初恋 #ウミネコ文庫応募

 むかしね、青い瞳の男の子と出会ったの。夏の終わりの頃だったかな。うちの近所の駅前でね。気づいたらわたしその瞳のこと、「綺麗だね」って言ってた。そしたらその子、「海の目薬を使ってるんだ」って言ったの。

 わたしは驚いて(わたしが彼に声をかけたことにも、彼がふつうに応えてくれたことにも、海の目薬なんて返答にも)、驚いたんだけど咄嗟に思いついて、「わたし耳がすごく良くって、それは山の綿棒を使ってるか

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おやすみ、シューシュー【童話】

おやすみ、シューシュー【童話】

「ねえ、ママ。お話しして?」布団のなかで、娘が言った。

「えっと、それじゃあ……積み木の国の王子様は旅に出ました。積み木の国に、バスを誘致するため、シエーバス王国に向かったのです」

「ねえ、ゆうち、ってなあに?」

「うーん、来てください、ってことだよ」

「どうして、来てほしいの?」

「積み木の国にはバスが来ないから、遠くまで移動できなくて、とても不便だったんだよ。昔からね」

「むかしっ

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お話の続き【あとがき】

お話の続き【あとがき】

(このnoteは小説『お話の続き』のあとがきです。本編を読んでいただいてからの方が、より楽しんでいただけるかもしれません。その旨ご了承ください。)

○○○○○ ○○○○○ ○○○○○

このお話は、tenさんとそのお店『tender hope town』、小川千紗さんのお名前からイメージをいただいて作ったお話でした。

tenさん…数字の十
tender…やわらかい、やさしい
hope…希望、の

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お話の続き【小説】

お話の続き【小説】

昔々、あるところに
やわらかな川がありました

その川の水には千の希望が
薄く透明な織物になって流れていました

その川の側にあった十の町から
たくさんの希望が溢れてきていたのでした

それぞれの町が川をはさんで
お互いの町を鏡のように映しあっており
それはそれは静やかに
それぞれに輝いてあったのでした

ある日のこと
やわらかな川を一艘の笹舟が
すらすらと音もなく進んでいました

いくつもの透き

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