今読み返すとすごいラインナップの現国
昨日は家族が誰もいなかったので、一人で書棚の本とストッカーの資料や本を整理していました。
大幅削減を目指してひっくり返しましたが、結局、どれも思い出があって捨てるに忍びず、大半は整理したうえで残すことになりました。
これまでの処分のたびに、生き残ってきたものに、高校3年のときの、筑摩書房発行の現国の教科書があります。
おそらく、高校3年のときの教科書なので、受験勉強でそれどころではなく、あまり記憶に残っていないかと思いきや、「そうそう、これ教科書で初めて読んだんだ」と鮮烈に記憶している文章がいくつもあり、その後の人生に大きな影響を与える作品もありました。
全体では
Ⅰ 人間
Ⅱ 生活
Ⅲ 表現
Ⅳ 文化
Ⅴ 歴史
と五章あるのですが、まずはⅠだけ紹介します。
■「架空の地図」別役 実
下記の「電信柱のある宇宙」というエッセイ集の中の一つで、指輪物語の地図が教科書に載っていることに、衝撃を受けました。僕も中学生のときに指輪物語を読んで、架空の地図と世界設定に没頭していた、厨二まっしぐらの時期でしたので、指輪物語の地図のディテールを熱く語る著者に深く共感を覚えました。
この人、僕は教科書のこの作品で袖すりあい、それっきりで、今になって再会したのですが、劇作家として不条理演劇を確立した第一人者?だそうで、かつ、童話作家、評論家、随筆家のマルチタレントだったんですね。
ブラックユーモアが本領みたいなので、教科書に載っているこのへんの文章は、毒が少ないところなのでしょうか。
■「骨とまぼろし」真木悠介
この文章の冒頭で、メキシコシティが湖の上にあって、少しずつ沈みつつあるということが紹介され、このことが「革命的骸骨」という挿絵とともに、僕の記憶に残っていますが、文書自体は、当時の僕には少し難しかったですね。メキシコ社会については、今の僕にもよく理解できていない、漠としたイメージしかないので、読み返しをきっかけに、先住民の中で暮らし、先住民の目からみた世界観を共有するワールドに、いちど入り込んでみたいと思います。
■「蟻なりければ」竹西寛子
加藤楸邨の句集を題材にしたエッセイです。俳諧雑誌に掲載された作品のようですが、今はどこに収録されているのかはわかりませんでした。
実は僕はこの文章、全然印象に残っていないのですが、読み返してみると、おそろしいことが書いてありました。以下引用。
40年近く前の文章ですが、今でも全然通用する、心に突き刺さる一文だと思います。
■「春のために」大岡信
■「サーカス」中原中也
いずれも有名な詩です。前者は歌にもなったように思います。
詩は難しいですね。試験で出てくると、かなり厳しい展開。中原中也は、早世の天才ですが、いまだにこの人の感性には、追いついていない感じです。坂口安吾とかは、作品の凄みの片鱗が、後になってわかってきたのですが。
■「夢十夜」夏目漱石
これは超有名な作品で、特に第6夜の、木に埋まっている仁王像を彫り出す話は、逆転の発想で、鮮烈に記憶に残っています。
たしかに天才の危なげない所業は、完成形をイメージしながら彫り進めるというより、周囲を削ぎ落せば自ずと仁王像が表れるという方が、むしろ凡才にとっては腑に落ちるように思います。そうでないと、自分の技量で見てしまうので、こわくて仕方ないですよね。
現代文の教科書って、後になってすごさがわかりますね。でも、捨てないでおいてよかった。
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