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ペンシルベニア大学とハーバード大学で現在起こっていること ※加筆済

このお知らせを毎回もらえる。どういう基準かはわからないけれど、気分はいい。ありがとう。

私は、あえて、最新の話題をメインに取りあげないようにしている。

海外の最新情報(私があつかえるのは英語で話されているもののみ)を書けば、誰かに有益かもしれないのだが。

今今で自分が強い感情(主に憤り)をもつ対象は、あたまやこころに入っていきづらい。そういう人たちが存在するため。

今回は珍しく、最新の話題をメインに書く。


大学内の反ユダヤ主義に関する、公聴会での対応をめぐって。ペンシルバニア大の学長に批判が相次いだ。

学長は辞任した。たった1年半だけの学長、ということになってしまった。

「キャンパス内の反ユダヤ主義を非難しないなら辞任しろ」or と言えど、キャピタルで書かれている「辞めろ」がメイン・メッセージだ。

UPenn や Penn はペンシルベニア大の略称。「反ユダヤ主義を増長しているペンシルベニア大のリズ・マギル学長」


もう少し詳しく書く。

基礎知識として。公聴会はアメリカ合衆国議会では、政府の当局者や民間の関係者を招致して、頻繁に開催されている。

今回の公聴会は、このような内容だった。

10月7日以降に大学構内で起きた抗議行動に関する質疑。3人の大学長が問われた。ユダヤ人への虐殺呼びかけは、いじめやハラスメントに関する大学の行動規範に違反するかと。3人は、文脈が重要だし、言論の自由を考慮に入れなければならないと答弁した。

会は長時間続いた。

左:ハーバード大学長  右:ペンシルベニア大学長

一体、何を答えさせたいのだ。虐殺を呼びかけたら、端的に、それは悪いことに決まっているだろうが。そんなことをわからない人は存在しない。

自分におきかえて考えてみて(私は私の人生にあり得る桁で考えてみる)、私だったら、吹いてしまうと思う。吹いただけで着席してしまうかもしれない。悪態を原因にクビになるかも。

魂を売ることはできない。私のアイデンティティーが死んでしまう。それに比べてしまえば、キャリアなどどうなったってよい。明日から全く別の仕事をして、いくらだって生きてやる。


しかし、私などとは桁が違うのだから大変だ。彼ら彼女らはもっと重い荷物を背負っているし、複雑な事情の中にいる。

それを解説していく。

公聴会の時のものばかりではかわいそうだね。女性なんだし。疲労マックスの時ではなく、バッチリ身支度をして撮ったであろう写真を貼る。

リズ・マギル氏はフランク・マギル氏の娘だ。法曹としてのキャリアがあり、行政法と憲法の研究者でもある。ロー・スクールで15年間教員もしていた。

「私たちは、反ユダヤ主義を私たちの制度的価値観に反するものとして、明確に非難する。また、私たちは、大学として・教育使命の中心として、自由な意見交換を熱心にサポートしている。これには、物議を醸す見解や、組織の価値観と相容れない見解の表現も含まれる」

マギル氏はこのように述べていた。おっしゃる通りだ。これ以外の(以上の)回答などないだろう。


以下のリンクは、生徒たちの言論の自由も尊重していたという彼女が、「自身の考えを変えることを表明」した動画。この場合、これはペンシルベニア大学の方針ということになる。

実際の内容を聞いて、ん?となった。言っていることの主旨は、大して変わっていないのだ。

私は間違っていた・私は考えを変えるという文言だけを、とにかく彼女に言わせたかった人たちが、いたのかもしれない。そんな疑念がわいてくる中身だ。様子がおかしい。


動画内の具体的なワード。反ユダヤ主義をさして、「それは悪だ。単純明快に」

日本人にはわかりづらいかもしれない。Evil と呼称することの重さが。

ハンナ・アーレントの " The problem of evil would be the fundamental problem of postwar intellectual life in Europe. " 「悪の問題は、戦後のヨーロッパにおける知的生活の根本的な問題となる」とは、またワケが違うというか。

私も明確にしておくべきなのか?💦当たり前だ。人種差別はよくない。けど、Evil って……。


共和党のステファニク下院議員が、「一人は片付いた。残るは2人」と表明。

片付いたというのは私の意訳だが。主旨的に、そうとしか読めなかった。「ハーバード大は正しいことをすべき」とも。この議員自身、たしか、ハーバード卒だったと思うのだが。

残りの2人とは、ハーバードの学長とMITの学長のことである。


彼女が、私がこの文章を書いている時のハーバード大の学長、ゲイ氏だ。黒人としては初・女性としては2人目の、同校の学長だ。

今年の夏に就任したばかり。

長さではないにしても。マギル氏もゲイ氏も、これでは任期が短かすぎる。理由があり信任を経て、このようなポジションにいたっているはずであるし、そうであるべきだ。

これで、ゲイ氏まで辞任などということになったら。あなたがたの信念はどこにあって一体何なんだ、と言いたくなってくる。バタバタするなみっともない、と思わざるを得ない。


ハーバード大の理事会は、ゲイ学長の続投を支持すると表明した。

「非常に深刻な各種の社会問題に対処する秀でたリーダー」であるとして、学長を改めて信任した形。

その上で、同大学には、①開かれた対話と学問の自由を奨励する信念  ②暴力の呼びかけや講義妨害を許さないという信念。この2つが、同時にあることを明確にした。

よかった。ぜひ、そのままでいてほしいと願う。

世の中はバランスが大事。今がバランスをとるのに労力がかかる面倒な時代であるなら、仕方がない。そこに労力をかけよう。

動画は公聴会の様子。

ゲイ学長「反ユダヤ主義は無知の症状。無知の治療法は知識である」。彼女は、いかなる人種差別もーーという気持ちで話したはずだ。


※後日追記

結局、ゲイ学長は辞任したようだ。

私がこうなることを予感したのは、1件のSNSへの投稿からで。それが投稿されたのは、この回を書いた数日後だった。

自分ではなく自分の妻が(ここはうろ覚え。申し訳ない)盗作で訴えられた、ある人物が、「では私は、これから、有名な大学の権威たちの盗作を追求していく(キリッ)」という主旨の意思表示をしていた。

それを見た時、私はこう思った。日本語でこれを泥仕合というんだよ。炎が広がっていく予感がした。


主観だが。盗作 plagiarism は、米国で大学生活をおくる人間が(中高生でもいけないことだが)、最も怯えることになる言葉だ。

提出物や課題でこの罪をおかすと。落第してリテイクから一発退学まであり得る。悪質さのレベル・学校やその時の先生の方針・生徒から聞き出した事情などによって、結果は決まる。

私自身は、疑われたことや呼び出しをくらったことはない。けれど、とてもストレスだった。

わざとしたのでなくとも・本当に偶発的なものでも、そう判断されたら終わりなのかという恐怖心。これが常にあったからだ。

プレジャ(私たちはこう略して呼んでいた)にならないためにやらねばならぬことの数々に、いつも疲弊していた。

これは自分の考え出した言葉やアイディアではなく、この人の言葉やアイディアを参照したのだーーこういうことは、とにかく全て明示しながら、文章を書かなければならず。規定の書式が絶対のものとして細かくあり。そのルールを示した専用の本は分厚い。

いわゆる、訴訟大国において。社会に出てから訴えられないようにするための、訓練をしたり・心構えを養ったりという目的があるのは、理解していたが。正直、つらかった。

私の(ライティングという枠の中での)創造性は、あの頃、確実にそがれていた。できるだけ自分を第三者的にみても、実力以下のものしか生み出せていなかった。


前述した下院議員などが、MITのコーンブルース学長も辞めさせるように求めているが。大学側は、同学長を支持する意向を示している。

尚、MITの関係者が学長の辞任を求める動きは、ハーバード大・ペンシルベニア大と比べて、かなり少ないそうだ。後半で補足説明する。


ペンシルベニア大学は、言わずと知れた、アイビーリーグの1つ。総合大学としては全米最古。 ビジネス・スクールのウォートン校は特に有名だ。

今回。どうやら、一部の裕福な寄付者や卒業生が財力で、マギル氏の追放を後押ししたようなのだ。

WSJ紙によると。指導部がこのままなら、援助を数百万ドルほど差しひかえないとならない、と脅した一群がいた。この脅しが効いた。

WSJ紙はその一群の人種にも言及しているのだが、私はそこがメインの問題だとは思わないため、ふれないでおく。

どの人種にも起こり得る問題としてとらえること、みんなで一緒に考えることにこそ、意義がある。


以下は、私の体験談だが。

映画『アミスタッド』(一例として)を黒人の人たちは見ない方がいいか?というディベートをやらされたことがあった。

本音と違っても型としてディベートしてみろではなく、その回はどっちサイドか本心で選んでいいと言われたため、私は「人類みんな観た方がいい」を選んだ。ざっくり言うと。先に銃をもていた方が逆だったら起こっていなかった確証など、どこにもないからだ。

何を言うにしても。けっこう勇気がいるのだ。人種の入りまじったクラス内で、これをやるのは。明日から関係大丈夫かなと。シリアスに。


今私たちが目にしているものは、“支援者” らの権力や財力が大学の在り方を左右する光景に、他ならない。

思うに、これが問題のコアだ。

たとえば、ハーバードへの寄付金の額。これは、120カ国ほどのGDPよりも大きい。


現に、大富豪のロス・スティーブンス氏が寄付を撤回すると表明した数日後に、マギル学長の退任は起こった。

寄付額が、本当に払うのかと疑いたくなるほどの巨額なのだ。

スティーブンス氏は、2012年に Stone Ridge Asset Management LLC を設立し、CEOをつとめている人物だ。2017年には、ニューヨーク・デジタル投資グループ (NYDIG)も設立した。その執行会長もつとめている。

彼は、ペンシルベニア大で金融のBSEを取得した。同大学には、スティーブンス・金融イノベーション・センターなるものがある。もちろん彼がつくり、委員長を担っている。

氏が言うには。出資者になるために受け入れた、差別禁止とハラスメント防止のポリシーに、Penn が違反していると。


スティーブンス氏は、ビットコインの支持者としても知られている。

株主に対して、ビットコインの重要性と、自社とそれとの関係性を語った時。Amazon・Google・Facebookといった企業の初期投資家に、自社の株主をなぞらえた。

当然、会社自体もビットコインを購入している。2020年には1億ドル以上を費やした。

彼は、規制当局がビットコイン・ネットワークを切断することは絶対にできない、と信じているのだ。

「ビットコインが独占禁止の問題で介入されることはない。絶対に。どれだけ巨大に、もしくは、高価値になろうとも。ビットコインはグローバルな形で押収されることはない。インターネットがいくつかの国で検閲されても、それを切断することができないように」

「米国政府紙幣(ドル)は価値低下のスパイラルにおちいっているが、一方で、ビットコインの上昇は決定的である。価格の変動ではなくドルの価値の低下が続いているのが問題だという知見により、ビットコイン建ての生命保険や年金など、ビットコインを利用した金融イノベーションが起きる」

ちなみに。米国のマスミューチュアル生命保険(リンクのミスではない。私がこれを貼りたくて貼っている)は、以前、ストーン・リッジの子会社NYDIGの株式を500万ドルで購入した。


さすが、こんなコメントをしたことのある人だ。

「最もおかしい猫の動画や、自分が欲しいものが何でも当日に配達されるシステムでも、かなわないほど、お金は重要であるということだ。比較できるものは何もない」

金は比類なきもの!!もはや金教だな。

こういう画像嫌い。犬猫に何の関係がある。

マギル学長の頬を札束で叩いたのも、納得だ。


大学総長の一番の仕事が集金。大学がまるで企業のよう。現実的な話、そういう側面はある。

とある米有名大学には、希望者の0.1%は、成績が同等のその他希望者と比べ、5倍の確率で入学することができる。

優遇されるのは、高所得者の息子や娘だけではない。スカウトされたスポーツ選手もだ。

運動能力なら、この理不尽話には関係がない?否。一部をのぞいて、スポーツには基本、お金がかかる。中流以下の家庭の子はフェンシングをしていない。もししていたら、私が謝る。教えてほしい。

(志願者の中で最も貧しい家庭の子どもらもまた、優遇されるけどね。大人の事情でね)


とうふ屋の息子のドラテクがおぼっちゃんの車に勝つ話に、私たちはスカッとする。そして、鼓舞もされる。

『頭文字D』は、主人公の冷静と情熱の間的な闘志など、それでなくともいい作品だが。

これ、いい歌だな。

みんなそれぞれにギャンブルをしている。私もしている。人生には、全てを賭けて飛びこむ時がある。勝算など考えない時が。「賭ける」の本質とは、「信じる」に似て、そういうことではないのか。

うまく算段をつけられる私など、評価してくれなくてけっこう。上には上がいくらでもいるのだから。必死こいてる時の私を愛してくれないのなら、いらない。そんな時の私は、世界にたった1つの輝きなのだから。

完全に余談なポエムをしたためてしまった。笑

いや、関連はあるのだが。

何かしらの抗議をするために、熱意をもって立ち上がる学生たちは(それをサポートする教師たちも)、「待ってれば誰かが未来決めてくれていた。なんて小さい自分なんだろ」と思ったのではないかなと。


コーネル大学の元入試部長で、アイビーリーグ・アドミッションズの創設者の、モルガネリ氏によると。

「親は、うちの子はオーケストラの首席奏者で陸上もやっていたから入学できたのだと言う。実際には何があったのか、決して口にしない」

「私立学校のカウンセラーからの推薦状は、強いカードの1つだ。カウンセラーは、特定の生徒について入試担当者に電話をかける。中低所得家庭の子どものためにかけるのではない。公立学校のカウンセラーのほとんどは、このような電話があることさえ、知らない」


無理やりにではないが、明るい話で〆る。

昨今。アイビーリーグ校も含め、少なくない数の大学が、低所得層の学生を増やしている。彼ら彼女らの授業料を補助するために、努力している様子が見受けられる。

スタンフォード、プリンストン、ハーバード、ブラウンなど。

特に、プリンストン大。学生の1/5が低所得家庭出身で、その内1/4分に学費の全額免除をしている。ここまでくると、一過性のアピールやポーズでできるレベルではない。

先述したが。エリート私立校の中で、裕福な学生をほとんど優遇しないことで際立っているのは、MITだ。MITは、そうするように長年努力してきたと言っている。

何かしら、やり方はあるのだろう。


消えゆく中間層ーーなどと銘打てば。人目をひく。まず、ささる層のボリュームが大きい。そういった情報は、より目立ち・より拡散されるということだ。

こうしたら私たちは幸せになれるのか。その後におとずれるはずだった楽園はーー物語が1つ書けそう。

我々はそろそろ、正気に戻ってもいいはずだ。ここで私が言いたいのは、“どちらも” ということだ。


何事も、自分の見聞きしたい情報だけをかき集めず、バランスよく事実を摂取したいものだ。

私たちには、きっと、もっともっとおもしろいことができるはずだ。みんなでがんばって、いつか必ず、次のステージへ行こう。

ついでだから言っておく。

リベラル・アーツでどんなことを学ぶか、全くもって知らないこの国の人たちが使う、中傷的な呼び方の「リベラル」。特にSNS上。私は、これにとても傷ついて生きてきた。

中身をちゃんと見て、もしまともだったら。あなたに都合が悪いのではないのか。そうであるなら、悪いのは、あなたの中の確証バイアスだ。私や私の勉学ではない。