世界にひとつだけの本の帯
きのう、フォローさせていただいている元書店員さんのこんゆじまじこさんの記事を読みました。
そこには、本のPOPにまつわる女子高生さんとの心の交流が書かれていました。
心あたたまるエピソードで、こんな本屋を自分でもやってみたいと思うほどでした。
僕には夢があります。
「この年になって」と言われるかもしれませんが、人生で最後の夢です。
定年後、本にまつわる仕事をしてみたいのです。
それは
本屋かもしれないし、ブックカフェ(ライブラリーカフェ、あるいは本喫茶)のようなものかもしれないし、古本屋なのかもしれません。
そのときに、そんな心の交流ができたら、あるいは「一万円選書」の記事で書いたような、気づきやヒントを感じられる場所を提供できたらと常々考えてしまうのです。本当の意味での「読書でヒーリングを」
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僕は書店員さんの手書きのPOPを読むのが好きで、書店に行き、POPがあると必ず本を選ぶときの参考にしています。
POPを読んで購入した本は結構あります。
ふと立ち寄った書店でのこと。
piole明石にある喜久屋書店さんで買った
小説・原田マハさんの「旅屋おかえり」
ちょうど店頭で、この本を書店員さんがおすすめしていたんだと思います。
ただ
普通におすすめしていたのではありません。
書店員さんの手書きPOPならぬ、「手書き帯」であったのです。
ノートをはさみで切った紙に、書店員さんによる手書きのメッセージ。
この「ノートをはさみで切った紙」というのが本当に嬉しい。
その紙の上に
心のこもった手書きの文字
印刷されたものではないので、「世界にひとつだけの帯」なんです。
「1人の書店員さんの想いが、1人の読者の元へ届く」
とても手間のかかる、超アナログなものですが、僕の心には陳列されていた本の数だけ、書店員さんの「想いの矢」が突き刺さりました。
陳列されていた帯を全部見ました。それぞれに書店員さんの熱量が文字に投影されていました。正直「全部ほしい」と思いました。
さすがに「旅屋おかえり」を何冊も買えず、1冊に絞るのに結構な時間がかかりました。
そして
選んだ1冊がこのメッセージの帯です。
とてもシンプルで、とてもあたたかくて、幸せが、深く、深く、ジュワジュワ~っと音をたてて浸透していくのがわかりました。
何気ない日常の「ただいま」と「おかえり」
それは
日常にありふれている、当たり前といえば当たり前なんですけど、振り返ると本当に特別な「ただいま」と「おかえり」なんです。愛情の言葉なんです。
小学生の頃の僕の子どもたちの元気いっぱいの「ただいま~」はもう聞けません。父親(亡くなった)に仕事から帰ったときの「おかえり」はもう言えません。それはその瞬間、確かにあった「幸せ」でした。
もちろん、今は今の「ただいま」「おかえり」があります。その幸せを大切にしたい。
「旅屋おかえり」
書店員さんから、直接、手書きメッセージのパスを受け取った大切な本。
帯の言葉をかみしめ、心が豊かになった上に、読後感も最高の小説でした。
本は著者からのメッセージ
読者は著者からのメッセージを自分なりに解釈し、受け取ります。そこでいろんなことを考え、生きる知恵や力に変えます。
さらに
「読者にパスしたい」「伝えたい」と願う書店員さんのメッセージが加われば、読者にとって、その言葉はかけがえのないものになるのだと思います。
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書店員・こんゆじまじこさんの想いを読んで、僕も読者として、書店員さんのメッセージは「心の奥深くにずっと残っているんだ」というのを思い返しました。
そのとき
こんゆじまじこさんのPOPを読んで、江國香織さんの『東京タワー』をレジに持ってきてくれた女子高生さんの心にも、その瞬間の衝動はずっと残っていることでしょう。
そして、思い出すにちがいありません。
彼女の本棚にある夜の装丁の「東京タワー」を見るたびに。あるいは、赤く輝いた夜の東京タワーを見たときに。