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「本の本 ―夢眠書店、はじめます―」 夢眠ねむ

「この本は文字通り、小説でもなければ写真集でもない、「本」そのものについての本です。」



「本の本 ―夢眠書店、はじめます―」 夢眠ねむ


本や本屋さん、また、本に関するプロに
直接訪問して話を訊き、取材した「本の本」


大型書店 独立系書店

本の流通センター

小説、漫画、絵本の編集者

出版社の宣伝、校閲担当 等々


著者は、元「でんぱ組.inc」の夢眠ねむさん。


夢眠ねむさんは、小さい頃から本が大好きで、いつか自分自身の本屋さんを開店するのが夢だったそうです。(※その後、夢眠書店が開店しました。夢眠書店とは、本好きのための書店、ではなくこれからの本好きを育てる書店です。とホームページにあります。)


本好きや、本屋さんが好きな方でしたら、ワクワクしっぱなしの1冊になること間違いありません!


夢眠ねむさんが本屋さんをやりたいと考えたのは、今の世の中には本を読まない人がたくさんいること。そのことに衝撃を受けたからなんだそうです。


私は本が好きなので、読書は日常の一部なんですけど、実は「本はちょっと怖い」って思っている人たちがいると知って、少しでも本のことを好きになってほしいって。


僕は今までずっと、その年齢やその時期ごとに悩みをかかえてきました。解決できるかどうかはわからないけど、解決策を探るときには必ず本屋に行って本を探しました。


本屋に居ると、悩みを軽減できそうな本に出逢ったり、出逢わなかったり。


でも


本屋に居たら、悩みなんて忘れてしまっていたことが多々ありましたし、悩んでいた目的以外の本に魅力を感じて、知らぬ間に購入していたこともありました。


そうして本に没頭していると、悩みを通り越して人生で大切なことを教えてもらいました。いつしか僕にとって、本屋は完全に癒しの場所・自分を取り戻せる場所になっていました。


「本の本」は、冒頭から最後まで「本」と「書店」にまつわる話でしたので、ページをめくっていくのが楽しくて仕方ありませんでした。


この本を読んで印象に残った取材がありました。独立系書店やブックコーディネーターのお仕事です。


独立系書店「Title」の辻山良雄さんは、棚に挿っている本によって、棚がピリッと引き締まるということを夢眠さんに語っています。


辻山さんは、そんなピリッと引き締まる本を多く仕入れ、カフェスペースやギャラリーなどを併設して「ここに来ないと味わえないもの」を取り入れました。


それが


カルチャーの発信基地としての、「本来の本屋」の役割を取り戻しているのです。


辻山さんは、夢眠さんにこう語っています。

カフェは、お客さんに本屋でゆっくりした時間を過ごしてほしいと思って作りました。

ギャラリーに関しては、遠くからでも足を運んでいただくための「装置」という側面をもたせています。

本自体はどこでも売っているものなので、もっと便利な場所で買うこともできますよね。でもギャラリーに展示するような作品はここに来ないと見られないものです。

ギャラリーにはもうひとつ、本の世界を広げるという役割もあります。本の中身がこういうスペースで展開されると、よりその本の世界に入り込むことができて、いいんですよね。


ブックコーディネーターは、本を伝えることが仕事です。CDショップ、雑貨屋、洋服屋などに、おすすめの本を伝えるための300冊とかある場所を作り、その場所を素敵な空間にすること。その中から1冊選んで、読み手が自分だけの1冊を見つけられるようにしました。


ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんは、場所を作って「あとは選んでね」というほうが自分には向いていると思って、ずっとそういうやり方をしてきたそうです。


その他にも、1冊の本ができあがってから本屋に並べられ、販売されるまでに、いろんな職種があるということが、この本を読むことでよくわかります。


1冊の本って、すごく緻密に、いろんな人が絡んで、読者の元に届けられるのですね。


すべての本のお仕事の根底にあるものは、「本が好き!」ということでした。


現在は町の本屋も減ってきましたが、それ故に、店主や店のスタッフによるいろんなアイデアで、本屋の魅力が増しています。


本屋に居ると楽しくて、POPに驚いたり、感心したり、「読んでみたい!」、「買ってみたい!」という工夫がたくさんあります。


その裏側には、本を愛するプロたちによって考えに考え抜かれて、読者に感動が届けられているのです。


夢眠ねむさんの本への深い、深い、愛情が、ギュッと濃縮された「本の本」でした。



【出典】

「本の本」 夢眠ねむ 新潮社


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