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2017年3月5日 20:05
「エントリー状況はどうだい、野田くん」「いやぁ、まだ始まったばかりですよ、今泉部長」野田はまだ春も来ていないというのに、汗だくになりながら答える。そうか、と言って今泉はどこかにいってしまった。もう五日もたったというのに、エントリーサイトからの申し込みは芳しくなかった。そりゃそうだ、と野田は内心冷めながら結果を見つめる。野田がいる会社は商社といえば聞こえはいいが、三菱、三井と
2017年3月5日 19:17
「ね、言った通りにやれば、楽勝でしょう?」石川が自慢げに語りかける。「はい‥びっくりしました!こんなにスムーズにいくなんて‥」望月はまださっき起こったことが信じられないようだ。「しかも、君がぶっ飛ばした岩渕って男の子の経歴、中々立派だったよ。ほら、私服で参加して、最後しょぼくれて帰った人」手渡されたアンケート用紙を見ると、参加インターンと書かれた欄に望月も知っているような有名ベ
2017年3月1日 23:48
「いやー今年も来ちゃったね、就活解禁。忙しくなるなぁ。ねぇ斉木くん」ブクブクと肥えた体にハイエナのような鋭い目つきで、一枚1000円以上する肉を頬張る。「そうですねー。一斉に企業の採用サイトもオープンしましたし。また今年も野田様のために例年通り優秀な人材をご提供いたしますよ」斉木はペコペコしながら野田と呼んだ目の前の男に酒を注いだ。場所は赤坂。野田はとある企業の採用チームのリーダー
2017年2月26日 22:27
「じゃあ、ちょっとブレストから始めましょうか!思いついたものをじゃんじゃん言ってください」岩渕が当たり前のようにホワイトボートの前に立ち、同じ班の3人に声をかける。グループディスカッションのお題は「日本経済を活性化させるためには?」とよくあるものだった。制限時間は一時間、その後各班で別室に入り、運営者側からフィードバックをもらう。各班の評価を行うため、複数人の社員が各テーブルを回っていた。
2017年2月25日 19:24
「あのー。グループディスカッション対策講座に申し込んだ岩渕なのですが‥」「お待ちしておりました。岩渕様ですね」恐る恐る呼び鈴を鳴らすと、理性的な顔立ちに銀縁メガネ、外資系の金融にいそうな男が礼儀正しく岩渕を迎える。「就活塾」と聞いて怪しげなイメージを持っていた岩渕は、意外とまともな雰囲気の人が出て来て少し安心した。さすがに二回連続のドタキャンは人としてダメだろうと思い、岩渕はニコニコ内
2017年2月23日 00:43
「あなたはインターンに参加しましたか?」急に表示されたポップを、ちょっとした満足感を感じながら「はい」を押す。次々と現れる余計なチェックボックスのチェックを外しながら、岩渕はみんしゅうの登録を無心で進めていった。土日に異常な混雑を見せる渋谷のドトールも、さすがに平日の昼前だからか人は少ない。さすがにいざ掲示板を見ようとした時に「授業を評価しよう」と言われた時は少しキレそうになったが
2017年2月19日 20:20
「で、どうよ就活は?」水タバコ特有の濃い煙を吐きながら、インターンでも仕切り役だった櫻井が切り出す。「あぁ、とりあえずcydreeとかのベンチャー系と外コンは内定したわ」櫻井の隣に腰掛けた帰国子女の柳沢がさらっと返した。「外コン?マジ?おめ!イヤイヤ、おまえもうちょっと喜べよ!」「別に。割とサクッと行ったし。お前は?」「俺?俺はひとまずcydreeの内定は揃えたわ。まぁけど
2017年2月19日 16:40
「どうぞ、お座りください」虎島の口調は丁寧だが、その分、溢れ出る威圧感をひしひしと感じる。「あ、はい!失礼します!」目の前にポツンと置かれた、安っぽい椅子に慌てて座った。部屋の大きさは大学の研究室ぐらいだろうか。虎島側には、重厚感のある机、その机に乱雑に置かれた書類の山、上を見れば「絶対内定」と墨で書かれた額縁が輝いている。まるで、ヤクザ映画の親分の部屋のようだ。ただ、安っぽい
2017年2月18日 18:51
「あの、三時から斉木様とお約束させていただいております、慶應大学の望月です」「はい、望月様ですね。受話器をお戻しになってお待ちください」2月18日は昨日と比べて、まるで冬に戻ったかのような寒さだった。斉木からのメールは、会った当日の深夜に望月のスマホに届いた。「慶應義塾大学 望月様本日はお時間いただきありがとうございました。就活コンサルタントの斉木です。お話しさせていた
2017年2月18日 16:52
「あの〜就活生の方ですか?」望月がさっきまで参加していた企業研究セミナーを出ると、アンケート用紙を持った男性に話しかけられた。男の歳は20代後半だろうか。きっちり整えられた髪型に、上品なスーツ、顔も自分好みの爽やかな塩顔イケメンだ。「あ、はい…」「急に話しかけちゃってすいません‥。実は今就活生の方にアンケートをしていまして、もしお時間あったら少しご協力いただけたらと‥」望月が訝