成年後見制度を知る【終活】
高齢者を守る成年後見制度
判断能力が不十分になった高齢者が
訪問販売で必要のないものを
大量に買ってしまったり
生活に必要なお金の管理や買い物
契約などが
出来なくなったりするケースがあります。
また、家族が本人の
預金通帳と印鑑を管理して
年金を使い込んでいたり
不動産の売却や介護施設への入居について
本人の意思に反して
家族が勝手に
契約してしまったりするケースもあります。
このような
ひとりで決めることに
不安のある方々を法的に保護し
ご本人の意思を
尊重した支援(意思決定支援)を行い
共に考え
地域全体で
明るい未来を築いていくこと。
それが成年後見制度です。
成年後見制度を利用すると
このようなことが起こらないように
高齢者の暮らしと権利を
守ることができます。
成年後見制度とは
成年後見制度は
認知症などにより
判断能力が衰えた人や
知的障がいのある人などの
財産を管理し
契約など法的な面から
日常生活を守る制度です。
成年後見人が行う仕事の内容
▢ 身上監護
被後見人の生活や
療養に関すること
▢ 財産管理
被後見人の預貯金や
不動産などについて
その取引も含めて
安全に管理すること
成年後見人の仕事は
自らが被後見人の部屋の片付けや
介護を行うのではなく
そのような支援を
行ってくれる人を捜して
手配することです。
また、たとえ
判断能力が十分でなくても
人には意思があります。
身上監護や財産管理を行うにあたっては
本人の意思を尊重し
守られる立場の人が
何を望んでいるかを見定め
日常の健康や
精神状態に
配慮しなければなりません。
二種類の成年後見制度
成年後見制度には
法定後見制度と
任意後見制度の2種類があります。
▢ 法定後見制度
既に判断能力が不十分な人のための制度
▢ 任意後見制度
まだ判断能力のあるうちに
将来判断能力が衰えたときに備え
自分を守ってもらう契約を
結んでおく制度
「誰に、どのようなことを頼むか」
という内容を前もって決めておいて
実際に判断能力が不十分になったときに
契約がスタートします。
法定後見制度
法定後見制度は
既に判断能力が不十分な状態に
なっている人について
本人または周りの人が
家庭裁判所へこの制度を申請し
その審判によって
利用できる制度です。
家庭裁判所では
申請による成年後見人候補者が
その職務にふさわしい人かどうかを
判断するとともに
場合によっては
成年後見人が
きちんと仕事を行っているかを
チェックする
成年後見監督人も選びます。
さらに
成年後見人は
行った仕事(後見事務)の内容を
全て家庭裁判所に
報告することになっており
家庭裁判所はその内容をチェックします。
判断能力の程度による3つの類型
判断能力が不十分といっても
その程度はさまざまで
すべての人に同じような
支援が必要とは限りません。
そこで
守られる人の判断能力の程度によって
後見・保佐・補助の
3つに分類されています。
成年後見人(等)ができること
法定後見制度では
判断能力が不十分な人を守るために
成年後見人(等)には法律上
代理権・同意権・取消権などの
権限が与えられます。
後見・保佐・補助のいずれに
該当するかによって
成年後見人(等)の権限が
代理なのか同意なのか
また代理や同意によって
出来る範囲が異なります。
後見に該当する状態の人は
判断能力がほとんどないため
財産に関する契約を
成年後見人が代わりに
行うことができます。(代理権)
また
食品など日常生活品の
購入を除き
成年被後見人が行った契約を
取り消すことができます。(取消権)
一方
保佐や補助に該当する人には
判断能力が残っています。
そのため
保佐人や補助人の同意が
必要な行為は
民法で定められた
9項目の重要な行為に
限られています。(同意権)
保佐では
これらの9項目すべてについて
保佐人に同意権が与えられますが
補助では
9項目のうち
家庭裁判所への申立てによって
認められた行為のみに
限られています。
・預金、土地、貸家など
利益を生む資産の
返還を受けたり
それらを利用したりすること
・借金をしたり
保証人になったりすること
・不動産など
重要な財産の売買をすること
・相続の承認や
放棄、遺産分割をすること
これらの内容について
被保佐人や非補助人が
保佐人や補助人の同意を得ないで
行った場合は
それぞれ、保佐人や補助人によって
取り消すことができます。(取消権)
また
補佐・補助では
本人が同意したうえで
家庭裁判所に申し立てて
認められた行為のみ
保佐人や補助人が代理で契約等を
行うことができます。(代理権)
成年後見人(等)になれる人
成年後見人(等)になるために
特別な資格は必要ありません。
成年であれば
原則として誰でも
成年後見人(等)に
なることができます。
また
弁護士事務所や
司法書士事務所
成年後見事務を行っているNPO法人や
社会福祉協議会などが
法人として
成年後見人(等)を
引き受けることも可能です。
成年後見制度ができた
2000(平成12)年から
しばらくは
親族が成年後見人(等)になることが
ほとんどでありました。
徐々に
法律等の専門家が
担当するケースが増え
近年では、親族以外が
成年後見人(等)になるケースが
全体の7割以上を占めています。
超高齢社会を迎えて
今後支援が必要な高齢者が
ますます増えると
法律や福祉の専門家だけでは
成年後見人(等)が
足りなくなると予想されています。
そのため、これからは
支援を必要とする人の
身近にいる一般の市民が
成年後見人(等)になることが
政府の方針として示されています。
法定後見制度を利用するためには
▢ 申し立ての出来る人
法定後見制度の利用を
申請することを
申立てといい
申立てできる人のことを
申立人といいます。
守られる本人のほかに
配偶者、本人の四親等以内の親族が
申立人になることができます。
また
身寄りのない人などについては
市区町村長が
申立人になることもできます。
▢ 成年後見人(等)の候補者
申立人は申立書に
成年後見人(等)になってもらいたい人
(法人の場合は法人名)を
書いて申請します。
ただし
申立書に候補者名を記載しても
守られる人の財産や
家族状況などから
総合的に判断して
その人が成年後見人(等)に
ふさわしくないと
家庭裁判所が
判断することもあります。
そのような場合は
候補者に代わって
家庭裁判所が選任した
法律や福祉の専門家等が
成年後見人(等)になる
ケースもあります。
▢ 利用の手続きと流れ
法定後見制度を利用するには
まず家庭裁判所に
申立書を提出します。
この際
家庭裁判所の様式による
医師の診断書など
多くの書類の添付が必要です。
家庭裁判所はまず
申立人や守られる本人と
面接を行います。
そして
申立内容や診断書、面接状況から
後見・保佐・補助の
どれに該当するか審判を出します。
2週間以内に
なにも異議がなければ確定となり
家庭裁判所は
全国の成年後見の登記を管理している
東京法務局に登記を依頼します。
東京法務局で登記が完了すると
各都道府県の法務局で
後見登記事項証明書が
発行可能となります。
後見登記事項証明書を見れば
本人がどのような内容で
法定後見制度を利用しているか
わかるようになっています。
また、成年後見人(等)となる人にとっては
自分が後見人(等)であることの
証明書となります。
法定後見制度の利用にかかる費用
法定後見制度を利用する場合の費用には
申立に関する費用と
成年後見人(等)への報酬があります。
▢ 申立費用
申立費用は原則として
成年被後見人(等)でなく
申立人が負担します。
申立てや登記の手数料と切手代のほか
・申立書に添付する診断書
・戸籍謄本
・住民票などの
取得費用が掛かります。
また
家庭裁判所が
成年被後見人(等)の身体の状況を
詳しく知るために
医師の鑑定を要求した場合には
鑑定費用が掛かります。
▢ 成年後見人(等)への報酬
成年後見人(等)への報酬は
1年間ごとの後払いです。
成年後見人(等)は
家庭裁判所に
後見等事務報告書を提出するとももに
報酬の支払いの申立てをします。
家庭裁判所はそれを受けて
成年被後見人(等)の財産や
後見の事務量などから
報酬額を決めます。
金額が決まったら
成年後見人(等)は
自分が管理している
成年被後見人(等)の預貯金から
その金額を引き出して
報酬として受け取ります。
任意後見制度
任意後見制度は
自分が将来
認知症や障害の場合などで
判断能力が不十分になった場合に備えて
元気なうちに
任意後見契約を結んでおく制度です。
将来に備えて契約する制度
任意とは
守る人と守られる人が
自由な契約によって
行うという意味です。
契約する人はどちらも
契約のできる意思能力がある
ということが前提です。
守る人のことを任意後見受任者といい
任意後見受任者になれるのは
成人の個人または法人である
任意後見契約で
守られる人が守る人に
将来の代理権を与えます。
なにをしてもらいたいのかを
前もって具体的に決めて
それを契約書に反映しておくことになります。
任意後見契約は
公正証書の形式で契約します。
任意後見では
家庭裁判所ではなく
公証役場から
東京法務局に
任意後見登記の手続きが取られ
守る人は
任意後見受任者として登記されます。
契約内容の効力
任意後見契約の内容が発効するのは
守られる人の判断能力が衰え
親族などが家庭裁判所へ
任意後見監督人選任の申立てをして
任意後見監督人が
選任されたときからです。
そして
家庭裁判所から
東京法務局へ
任意後見監督人の登記依頼がなされます。
任意後見監督人選任の
申立てができるのは
守られる本人やその配偶者
本人の四親等以内の親族
任意後見受任者です。
任意後見受任者(守る人)は
実際に契約が効力を発して初めて
任意後見人となります。
また、家庭裁判所は
任意後見監督人を通して
任意後見が契約書の通りに
仕事をしているかを
間接的にチェックします。
法定後見制度と任意後見制度の違い
法定後見制度は
家庭裁判所の審判によって
利用するのに対し
任意後見制度は
お互いの自由な契約による
という点が異なります。
法定後見制度では
守られる本人が
不本意な契約をしてしまった場合
守る人に取消権が
認められる場合があります。
任意後見制度では
任意後見人に取消権はありません。
法定後見制度では
後見の審判を受けて
成年被後見人として登記されると
東京法務局から自治体に連絡されて
印鑑登録が出来なくなります。
また、既に印鑑登録をしている場合は
印鑑登録が抹消されます。
印鑑証明が必要な契約は
法定代理人である成年後見人が
自分の印鑑証明で行います。
一方
任意後見制度では
任意後見契約が効力を発した後も
印鑑登録が抹消されることはありません。
任意後見人への報酬
任意後見契約は自由な契約なので
守ってもらう人が
任意後見人に支払う報酬は
任意後見契約書で
自由に決めることができます。
一方
任意後見監督人への報酬は
家庭裁判所によって決められます。
成年後見制度の利用にあたって
成年後見人(等)を誰に頼むか
成年後見制度においては
様々な場面で
本人の意思を尊重することが
なによりも大切です。
この制度は
本人の権利を護るために
法的にお手伝いする制度であるため
成年後見人(等)になる人には
権利を護ることへの理解や
認知症高齢者など
護られる人への
適切な接し方が求められます。
さらに
介護保険制度など
高齢者を支える制度の使い方
生命保険・年金・不動産・相続・遺言など
財産管理や相続に関する
幅広い知識も必要となります。
成年後見制度を利用するにあたっては
これらの条件を満たした信頼のおける人を
候補者として選ぶことが大切です。
相談窓口
成年後見制度を利用する場合は
まず家庭裁判所や
自治体の窓口で相談することです。
また
地域包括支援センターや
社会福祉協議会でも相談が可能です。
その他
市民後見を推進しているNPO団体や
成年後見を専門とする
士業の団体でも相談を受けています。
まとめ
成年後見制度とは
さまざまな障害や認知症などによって
判断能力に不安を抱え
ひとりで決めることに不安や心配のある人が
いろいろな契約や手続をする際に
お手伝いすることで
安心して暮らすための制度です。
ひとりで決めることに
不安のある方々を法的に保護し
ご本人の意思を尊重した支援が
求められることから
制度の軸として最重要の課題は
本人の『意思決定支援』であることです。
特に、法定後見制度において
守られる方の意思の汲み取りは
非常に難易度の高いところですが
諦めることをなくし
多角的な視点や姿勢で
望むべき方針を決めていくサポートを
進めていきましょう。
【️終活アドバイザーつよし】
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